MHIET、5.75MW発電用ガスエンジンの単筒試験機で水素混焼率50%までの安定燃焼を実現

・発電および蒸気利用における水素混焼時のCO2排出係数:0.27kg-CO2/kWhレベルの実現見通しを確立

・幅広い産業界でコージェネレーションシステムとして使用されるKUガスエンジン(3.65~5.75MW)の水素混焼化により、分散型電源の低炭素化に貢献

・水素混焼に対応した発電用KUガスエンジンの2025年度中の商品化を目指す

 三菱重工グループの三菱重工エンジン&ターボチャージャ(MHIET、相模原市中央区)は11月1日、5.75MW発電用ガスエンジンの単筒試験機での水素混焼試験を実施し、定格相当出力において水素混焼率50%(体積比)までの安定燃焼を確認したと発表した。今後、プラント補機や制御仕様なども含めた生産化に向けた仕様を決定し、2025年度中の商品化を目指す。

 MHIETは、三菱重工グループの2040年のCO2排出量ネットゼロ達成を掲げた「MISSION NET ZERO」を実現する製品開発の1つとして、カーボンニュートラル実現に向けたロードマップで掲げる、水素エンジンの開発と商用化に向けた取り組みを強化している。実証試験は、幅広い産業界でコージェネレーションシステムとして使用されるKUガスエンジンの低炭素化を実現するために実施したもの。

 水素混焼により燃焼が早くなることで、ノッキングやプレイグニッションが発生する課題に対して、空気過剰率などの調整による安定燃焼の実現に実証試験では取り組んだ。その結果、コージェネレーションシステムとして発電と蒸気を合わせ効率を高めた総合効率仕様において、定格相当出力で水素混焼率50%までの安定した燃焼を実証した。

 また実証試験を通じて、KUガスエンジンにおける、発電および蒸気利用における水素混焼時のCO2排出係数:0.27kg-CO2/kWhレベルの実現見通しを確立した。同レベルは、持続可能な経済活動を分類する「EUタクソノミー」規則における天然ガスに係る技術的基準において、移行期の活動に分類されている基準。なお、KUガスエンジンは、既に実用化している全蒸気仕様(ガスエンジンの排ガスから生成される蒸気だけでなく、エンジンの冷却水を熱源として発生させた蒸気も活用する仕様)においても、CO2排出係数:0.27kg-CO2/kWhレベルを達成しており、水素混焼を適用することでCO2排出係数のさらなる低減が見込まれるため、全蒸気仕様の水素混焼化についても取り組んでいく。

 KUガスエンジンは、国内外のお客様に長年使用いただいている実績に基づいたエンジンであり、近年は着火方式の変更などを施すGSI化改造工事による高効率化の実現により、CO2の削減と既設設備の持続的な有効利用に貢献している。また中長期的なカーボンニュートラル社会への対応として、水素利用へのニーズが高まっていることから、MHIETはKUガスエンジンにおいても水素混焼・専焼の製品投入を加速することで、低・脱炭素社会実現に向けた選択肢の拡充を目指す。

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