エア・ウォーター、インド国営鉄鋼公社SAIL社のドゥルガプル製鉄所向けオンサイトガス供給を受注

 エア・ウォーターは9月22日、100%子会社であるAir Water India Private Limited(以下、エア・ウォーター・インディア)が、インド国営製鉄会社であるSAIL(Steel Authority of India Limited)社からインド東部のドゥルガプル製鉄所向けオンサイトガス供給を受注したと発表した。今後、日本・アメリカ・インドのエンジニアリング部門が中心となり、最新鋭の深冷大型空気分離プラントの設計・製作を進め、2025年10月にガス供給を開始する計画。

■プロジェクトの意義・概要
 エア・ウォーターは、海外における産業ガス事業を全社成長の牽引役と位置付けており、中でもインドを重要戦略エリアと捉えている。同国においては、鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給事業を基軸に、インド全域における事業展開を見据え、製造・輸送・販売インフラのネットワーク構築を進めている。こうした中、エア・ウォーター・インディアは、鉄鋼生産の拡大を背景に拡張投資が続く鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給案件の新規受注を目指し、提案活動を進めてきた。

 また、エア・ウォーターは、ガス供給に不可欠な深冷空気分離プラントの開発・設計・製作・運転・メンテナンス機能を一貫して保有すると同時に、酸素製鋼法の黎明期から半世紀にわたり日本国内の大手鉄鋼メーカーと緊密に連携し、製鉄所の操業に対応した高効率なガス生産と安定供給にかかわる実績とノウハウを蓄積してきた。加えて、近年はアメリカ・インドのエンジニアリング部門の強化に取組むことで、グローバル市場におけるプラントエンジニアリング体制の構築を進めてきた。同プロジェクトにおいては、大型プラントの製作実績が豊富な日本・アメリカで重要機器の設計・製作を行い、汎用機器の調達や据付等の現地工事を行うインド現地との連携によるグローバルエンジニアリング体制のもと、コスト競争力のあるガス供給を実現する。

 今回の受注は、インド国営製鉄会社であるSAIL社から、長年に渡る鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給の実績とインドにおける産業ガスメーカーとしての存在感を高く評価されたもの。また、エア・ウォーターにおいては、インドで初となる大型深冷空気分離プラントの受注であると同時に、タタスチール向け(東部ジャムシェドプル工場)、JSWスチール向け(南部ベッラーリ工場)に続く、同国3カ所目の鉄鋼向けオンサイトガス供給拠点となり、飛躍的な成長に向けた着実な一歩を踏み出した。

<新プラントの概要>
工場名:エア・ウォーター・インディア ドゥルガプルオンサイト工場
所在地:西ベンガル州ドゥルガプル(SAIL社ドゥルガプル製鉄所隣接地)
製造品目:酸素、窒素、アルゴン
酸素生産能力:1,250トン/日(約36,500N㎥/h)
投資額:約135億円
建設開始:2023年9月
稼働開始:2025年10月(予定)
※製造したガスは、製鉄所向けにパイピング供給するほか、一部は液化してタンクローリー等で周辺地域の顧客へ販売する。

■インド鉄鋼市場と事業戦略について
 インドは世界一の人口(約14億2,860万人)による旺盛な内需を背景に、今後も高い経済成長率が見込まれている。また、インド政府は、道路・建設等のインフラ投資や自動車をはじめとした製造業振興を進める中で、2030年度までに年間粗鋼生産能力を現在の倍以上となる3億トンにまで拡大する目標を掲げている。鉄鋼資源である鉄鉱石や石炭の産出国であることを強みとし、インドの鉄鋼生産量は2017年に1億トンを超え、2018年には日本を抜き中国に次ぐ世界第2位の生産量を誇る。また、製造業のサプライチェーン見直しの動きが世界的に加速する中、新たな製造拠点としても注目されていることに加え、高機能鋼の生産により輸出も増加する見通しであり、鉄鋼市場は今後も大きな成長が期待され、産業ガスの旺盛な需要が見込まれている。

 こうした中、エア・ウォーター・インディアは、「鉄鋼メーカー向けオンサイトガス供給の新規獲得」と「拠点拡充によるガスサプライチェーンネットワークの構築」を基本戦略に据え、市場成長を捉えながら継続的な事業拡大を図っていく。2023年度末には、これまで未進出であった北部エリアに充填工場が稼働、さらに2024年10月には南部の主要都市チェンナイに使用電力の約4割を太陽光などの再生エネルギーで賄う液化ガス製造プラントの稼働を予定している。今後も需要に見合った設備投資を実行し、事業エリアをインド全域に広げ、産業ガスメーカーとして確固たるポジションを獲得していく。さらに、将来的には、産業ガス供給における事業基盤をもとに、エア・ウォーターグループが保有する医療、環境・エネルギー、食品等の多様な事業や技術力を展開することで、2030年度に現在の約5倍となる売上収益1,000億円を目標に事業拡大を進めていく。

■日印関係強化への貢献
 日本政府は、2023年のG20議長国であり「グローバル・サウス」の代表格として存在感を高めるインドと、政治・社会・安全保障などの領域で多面的に結びつきを強めており、なかでも経済面での連携強化は両国の大きな注力事項となっている。今回、日系企業であるエア・ウォーターが、インド国営企業であるSAIL社との間で本件大型事業に取組むことは、日印経済連携の中でも重要な意義を持つものと受け止めている。

 エア・ウォーターは今後も、インドの経済成長と共に発展していくビジネスパートナーとして、事業活動を通じて同国の経済成長に寄与し、新たな雇用機会の創出、CO2排出削減、衛生環境の改善といった社会問題の解決に取組むことで、日印関係の一層の発展に貢献していく。

<エア・ウォーター・インディア社の概要>
会社名:Air Water India Private Limited
本社所在地:西ベンガル州コルカタ
事業内容:産業ガス、医療用ガスと関連機器装置の製造・販売
売上高:約180億円(2023年3月期)
従業員数:400人

 ニュースリリース