NTN、転がり軸受の高精度な余寿命予測技術を開発

・AIの活用による機械設備の適切なメンテナンスを通じて、生産性の向上に貢献

 NTNは8月21日、複数のAI手法を組み合わせ、軸受の余寿命を高精度に予測する技術を開発したと発表した。軸受の故障の原因となるはく離が発生してから使用限界までの余寿命を高精度に予測することで、機械設備の効率的なメンテナンス計画の立案を可能とし、生産性の向上やコストの削減に貢献する。

 機械設備に組み込まれた軸受は、使用を続けていくと条件によっては軽微なはく離が発生し、進行すると最悪の場合破損につながることがある。しかし、はく離が発生した後も、機器の構造や設置場所などによりメンテナンスが容易ではない場合は、運転に支障がない範囲において軸受が使用され続けるケースがある。軸受の状態は、振動データによる異常検知などにより把握することが可能だが、はく離などの異常が発生した後、どのぐらいの期間、軸受を使用できるのか(余寿命)を精度良く把握する方法はなく、軸受がまだ使用可能な状態でも早めに交換したり、軸受が破損してから交換するケースが一般的。また、現場作業者が長年の経験などに基づいて交換時期などを判断する事例も多く、省人化や自動化が進む中、機械や設備などのダウンタイムの短縮やメンテナンスコストの低減に向けて、より正確な軸受の交換時期が分かる高精度な余寿命予測技術へのニーズが高まっている。

 NTNが開発した余寿命予測技術は、ディープラーニング(深層学習)とベイズ学習を組み合わせることで、軸受のはく離が発生してから破損するまでの余寿命の推定精度を向上させたもの。複数のAI手法の中から、畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる画像処理に特化したディープラーニングを選択し、軸受の振動データを画像データに変換して利用することで、軸受の損傷状態や余寿命の予測を可能にしている。さらに、軸受の損傷の進行度合いにおける個体差や測定データのばらつき(誤差)を考慮して予測値の信頼性を評価する階層ベイズ回帰を組み合わせることで、信頼性の高い予測モデルを確立した。損傷状態も考慮することで、従来の技術と比較して余寿命の予測精度を約30%向上させている。

 同技術は、2017年に国立大学法人大阪大学大学院工学研究科(本部:大阪府吹田市)に設立した「NTN次世代協働研究所(*)」における共同研究によるもので、同社がこれまで100年以上にわたり培ってきた軸受に関する技術やノウハウと、同大学の福井健一准教授(産業科学研究所)をはじめとする最先端のAI研究に関する知見を融合することにより実現したもの。

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