川崎重工業が8月8日に発表した2024年3月期第1四半期(4〜6月)業績によると、連結受注高は前年同期比452億円増加(11.0%増加)の4,573億円、連結売上収益は前年同期比549億円 増収(15.7%増加)の4,053億円、事業利益は前年同期比56億円増益(126.7%増加)の102億円、税引前四半期利益は前年同期比43億円増益(40.6%増加)の149億 円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比36億円増益(66.7%増加)の90億円となった。
世界経済は、金融引き締めによってインフレ率が低下しつつある中で、米国では失業率が低位に留まるなど、顕著な景気減速は見られていない。国内においても、新型コロナウイルス感染症に伴う水際対策が撤廃されインバ ウンド需要が増加したことや、物価高を背景とした賃金上昇にも支えられ、日経平均株価はバブル経済崩壊後の高 値を更新するなど高水準が続いている。
一方で、中国における不動産市況の低迷等による景気の下振れリスクの高まりや、先行き不透明な為替相場の影響など、今後の国内景気や世界経済の動向については注視が必要。このような経営環境の中で、第1四半期における同社グループの連結受注高は、航空宇宙システ ム事業、パワースポーツ&エンジン事業などの増加により増加となった。連結売上収益については、パワース ポーツ&エンジン事業、車両事業、航空宇宙システム事業などが増収となったことにより、全体でも前年同期比で 増収となった。
利益面に関しては、事業利益は、精密機械・ロボット事業での悪化はあったものの、エネルギーソリューション &マリン事業、航空宇宙システム事業での改善などにより、前年同期比で増益となった。親会社の所有者に帰 属する四半期利益は、事業利益の増益により増益となった。
■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、今後の需要増が期待される。民間航空機については、航空旅客需要はほぼコロナ前水準に回復しており、 機体のコロナリバウンド需要が旺盛なことから、機体・エンジンともに需要が増加している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製 造品が増加したことなどにより、前年同期に比べ582億円増加の1,187億円となった。
連結売上収益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、前年同期に比べ167億円増収の802億円となった。
事業損益は、増収などにより、前年同期に比べ42億円改善して46億円の損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの収束により利用者数が回復し、国内外で鉄道車両への投資が再開しつつある。一方で、足元への影響は限定的ではあるものの、電子部品等の供給不足や物流混乱、原 材料価格の高騰については、収束が見えつつも注視が必要。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジ ア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。
このような経営環境の中で、連結受注高は、アジア向けや国内向け案件が増加したことなどにより、前年同期に 比べ47億円増加の164億円となった。
連結売上収益は、国内向け車両が減少したものの、米国向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ171 億円増収の435億円となった。
事業損益は、増収はあったものの、国内の操業が低下したことなどにより、前年同期並みの0億円の損失となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大の影響による停滞から正常化に向かう中、回復基調を維持している。国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネ ルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。また、世界的にカ ーボンニュートラルの実現を目指す動きが強まっており、同社が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューシ ョンに関する問い合わせや協力要請が増加している。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性など 足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費、輸送運賃の高止まり等による受注、売上 収益への影響には注視が必要。
このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け艦艇用機器などの受注はあったものの、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件やLPG/アンモニア運搬船を受注した前年同期に比べ221億円減少の1,023億円となった。
連結売上収益は、エネルギー事業やLPG/アンモニア運搬船の工事量増加などにより、前年同期に比べ72億円増収 の707億円となった。
事業損益は、エネルギー事業の増収や持分法による投資利益の増益などにより、前年同期に比べ58億円改善して 58億円の利益となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国以外の地域における建設機械市場については堅調に推移したが、中国建設機械市場は、不動産不況の長期化等の影響により需要が低迷した。ロボット分野では、メモリを中心とする半導体市場の落ち込みや米中経済摩擦の影響により、半導体製造装置向けロ ボット需要は減速が続いており、回復の時期は見通しにくい状況だが、AI関連やグリーン投資関連等の新たな需要を織り込みつつ、2024年度から回復するものとみられている。また、欧米を中心にインフレに対する金融引き締めの影響等による不透明感が強く、一般産業用ロボットも足元では成長が鈍化する状況になっているが、人件費上昇による自動化需要が潜在的に高まっている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、半導体製造装置向けロボットや一般産業用ロボット、中国建設機械市場向け油圧機器が減少したことなどにより、前年同期に比べ139億円減少の540億円となった。
連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや中国建設機械市場向け油圧機器が減少したことなどにより、前年同期に比べ32億円減収の493億円となった。
事業損益は、減収などにより、前年同期に比べ40億円悪化の25億円の損失となった。
<パワースポーツ&エンジン事業>
パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響が落ち着いたものの、主要市場である米国と欧州では引き続き需要は堅調に推移している。また、東南アジア市場は国ごとの差はありつつも全体として前年度より回復している。
このような経営環境の中で、連結売上収益は、東南アジア向け二輪車の減少はあったものの、欧州向け二輪車及 び北米向け四輪車、汎用エンジンが増加したことに加え、為替レートが円安に推移したことなどにより、前年同期 に比べ179億円増収の1,439億円となった。
事業利益は、販促費や固定費の増加はあったものの、二輪車、四輪車の拡販や為替の影響などにより、前年同期 に比べ14億円増益の143億円となった。
<その他事業>
連結売上収益は、前年同期に比べ7億円減収の175億円となった。 事業利益は、前年同期に比べ7億円減益の6億円となった。
■今後の取り組みと2024年3月期(2023年度)の見通し
2024年3月期の連結業績については、精密機械・ロボット事業において中国建機市場の低迷、半導体市況の回復時期後ずれの影響を反映し、見通しを引き下げたが、エネルギーソリューション&マリン事業における船舶海洋事業の業績改善をはじめとして受注系事業の改善が想定通りに進んでいることから、下記の前回(5月10日)公表値を据え置いた。
2024年3月期(2024年度)の売上収益は前期比1,744億円増(前期比10.1%増)の1兆9,000億円、事業利益は780億円(前期比8.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は470億円(同14.7%減)との見通し。
連結受注高は、前期比1,374億円減少(6.7%減)の1兆9,000億円との見通し。
なお、業績予想における為替レートは、1ドル=130円、1ユーロ=140円を前提としている。
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