日立造船、グリーンメタノール対応二元燃料テストエンジンを受注

・国際海運の温室効果ガス削減に貢献する舶用エンジンの燃料転換技術

 日立造船は7月18日、MAN Energy Solutions SE(ドイツ、以下、MAN)より、グ リーンメタノールに対応した二元燃料テストエンジン(4S90ME-C10.5-LGIM)1台を受注したと発表した。なお、テストエンジンの製造は、連結子会社である日立造船マリンエンジン(熊本県玉名郡長洲町、以下、HZME)が行う。

 MAN は、複数の大手海運会社が所有する船舶に搭載された重油焚きエンジンの S90ME-C 型シ リーズを、グリーンメタノール対応の二元燃料エンジンに改造する契約を結んでいる。改造実施 にはテストエンジンでの陸上試験による技術検証が必要で、テストエンジンは、MAN にとって も初となる S90ME-C 型でのグリーンメタノール対応二元燃料エンジンの陸上試験機となる。テストエンジンの完成は、2024 年 9 月を予定しており、その後、MAN と HZME が共同で陸上試 験を 2024 年末まで行う。

 S90ME-C 型エンジンは、主に大型コンテナ船の推進用主機関として用いられるエンジンで、 S90ME-C 型を搭載した船舶が現在も 300 隻以上就航している。「Well to Wake※ 」ベースで、 グリーンメタノールは重油に比べ、CO2 排出量を 90%以上削減できる燃料で、推進用主機関を二 元燃料エンジンへ転換し、グリーンメタノールを燃料とすることで、海上輸送のカーボンニュート ラル化や環境負荷低減に大きく貢献できる。

 今回のテストエンジン受注は、半世紀以上にわたる日立造船と MAN との良好な関係と、MAN のライ センシーとして約 3,000 台を製造してきた日立造船および HZME の実績が高く評価されたもの。

 IMO(国際海事機関)は、国際海運分野からの GHG 排出量を 2050 年に半減させ、今世紀中早期にゼロにすることを目指す「GHG 削減戦略」を 2018 年に採択していたが、2023 年 7 月には目標を大幅に引き上げ、2050 年頃に実質ゼロを目指すことを新たに採択した。

 船舶の主機関である舶用エンジンは、GHG の削減に重要な役割を担っており、従来の重油から LPG、LNG、メタノールへの転換が始まっているほか、アンモニアを燃料とする技術など、さらに GHG 排出量が少ない新燃料でのエンジン開発が急務となっている。

 競争力の高い次世代船舶を海運業界に提供し、環境技術で世界をリードするため、日立造船および HZME は舶用エンジンの燃料転換に向けた技術開発に積極的に挑戦し、国際海運・造船業界に貢献していく。

※海運業界における排出量を評価する際に用いられる考え方であり、Well(油井等)から Wake(航 跡)まで、すなわち燃料の製造から船上での使用までの全過程と、そこで発生するすべての排出 物の総和を指す。

<受注概要>
発注者:MAN Energy Solutions SE(ドイツ)
受注者:日立造船株式会社
製造:日立造船マリンエンジン株式会社
エンジン型式:4S90ME-C10.5-LGIM×1台
完成予定:2024 年 9 月

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