・自社品の高速上市を支える生産基盤を強化
・宇都宮工場内に、計500億円を超える2件の新規設備投資を決定
・第I相、第II相臨床試験用を含む中期段階以降の治験薬製造、および初期商用のバイオ原薬製造を担う設備の新設により、臨床開発から初期商用生産まで自社一貫でバイオ原薬を生産する基盤を強化
・新規注射剤棟の建設により、難度が高い自社抗体プロジェクトの製剤化に対応するとともに、ロボティクスを活用し多品種容器への対応、生産性向上を追求
中外製薬(本社:東京)は5月30日、グループ会社である中外製薬工業の宇都宮工場(栃木県宇都宮市)内に、バイオ原薬製造棟、および注射剤棟を新規建設することを決定したと発表した。
新設するバイオ原薬製造棟(UT3)は第I相、第II相臨床試験用を含む中期段階以降の治験薬製造、および初期商用のバイオ原薬製造を担います。同投資により、浮間事業所内に建設中の初期開発用治験薬製造を担うバイオ原薬製造棟(UK4)や既存の製造棟とあわせ、臨床開発から初期生産までの一貫した自社供給基盤が更に強化され、自社創製品の高速上市に貢献する。また、UT3では従来のバッチ式の生産方式に加えて、灌流培養*の導入など連続生産機能も実装し、次世代のバイオ医薬品工場の実現に向けた取り組みを推進する。一方、新規注射剤棟(UTA)は初期商用の無菌注射剤製造を担う。新たな製剤技術を導入し、同社独自の抗体エンジニアリング技術を適用した、複雑な構造を持つ抗体の製剤化に対応する。さらに、ロボティクス活用により、患者さんの利便性につながる多様な剤型に対応した多品種少量生産を可能にするとともに、高度な自動運転・デジタル技術の活用により生産性を大幅に向上したスマートファクトリーの実現を目指す。
*抗体産生細胞を高密度で生育させた培養槽へ連続的に栄養分を供給しながら抗体を回収する培養法。培養が終了するまで抗体を回収しない従来の培養法よりも、生産効率の向上が期待される。
代表取締役社長CEOの奥田 修氏は、「中外製薬が強みを持つバイオ医薬品は、独自の抗体エンジニアリング技術の適用により分子の構造が複雑化しており、製造難度が上がっています。こうした難度の高いプロジェクトに対応し、臨床開発段階から初期商用生産に至るまで生産を内製できる技術・キャパシティの確保は、自社創製品の開発においてスピードとフレキシビリティをもたらし、大きな競争優位性の獲得に繋がります」と述べたうえで、「新たに建設する各設備では環境への配慮などサステナビリティを追求するほか、デジタル・ロボティクスの活用により生産性を飛躍的に向上させ、ヘルスケア産業のトップイノベーターに相応しい世界水準の製薬・生産機能の実現を目指します。研究所から生み出された革新的な創薬アイデアを確実に医薬品として実現し、世界中の患者さんに貢献できるよう邁進してまいります」と語っている。
新たに建設するUT3とUTAは、ノンフロン設計や省エネルギー設計など環境負荷低減を推進し、中外製薬グループが掲げる中期環境目標2030の達成に寄与する製造設備とする。また、両棟ともに浮間工場で構築・稼働した生産機能のオペレーションを支えるデジタル基盤(プロジェクト名:SPIRITS)を展開するほか、ロボティクスを活用しコスト競争力の高いスマートファクトリーの実現に向け、取り組みを加速させる。
<宇都宮工場の概要>
所在地:栃木県宇都宮市清原工業団地16-3
敷地面積:121,573 m2
業務内容:バイオ医薬品の原薬および製剤製造、検査、包装
<バイオ原薬製造棟(UT3)新設工事の概要>
総投資額:374億円
着工:2024年1月
竣工:2026年5月
稼動:2026年10月
建築面積:3,206m2(免震4階建)
延床面積:9,791m2
設備概要:2,000Lシングルユース培養槽4基+精製1ライン
<注射剤棟(UTA)新設工事の概要>
総投資額:190億円
着工:2024年1月
竣工:2025年11月
稼動:2026年3月
建築面積:2,589m2(免震3階建)
延床面積:7,682m2
設備概要:ロボット充填機
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