芝浦機械が5月15日に発表した2023年3月期(2022年度)連結累計期間の受注高は、中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の大幅な増加に より、1,916億5千3百万円(前年度比16.7%増)、売上高は中国におけるリチウムイオン電池向けセパレー タフィルム製造装置、国内における産業機械向けおよび北米におけるエネルギー関連向け工作機械の増加により、 1,231億9千7百万円(同14.3%増)となった。
損益については、部材価格高騰等のコスト上昇影響を受けたものの、規模増加および円安による増益効果により、営業利益は57億6千5百万円(同36.1%増)、経常利益は52億7千9百万円(同16.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は固定資 産売却益などの計上により64億4千1百万円(同72.9%増)となった。
2022年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響に よる部材需給逼迫などに加え、部材・エネルギー価格高騰が継続するなか、年度前半は先進国を中心 に回復基調で推移したが、後半にかけ米国をはじめ世界各国におけるインフレや金融引き締めなどの影響に より景気の減速感が強まった。わが国経済はサプライチェーンの混乱、部材・エネルギー価格高騰や急激な 為替変動などの影響を受けたなかで、輸出、生産、設備投資の回復の動きに足踏みが見られた。
同社グループを取り巻く経済環境は、前年度より引き続き設備投資需要が回復基調で推移し、インド 市場の堅調さは継続したものの、中国におけるロックダウンやゼロコロナ政策解除後の感染拡大および渡航制限、 中国、米国などの景気減速の影響を受けた。一方、世界的に脱炭素化などの社会課題解決に向けた動きが加 速していることを背景として、EV、再生可能エネルギー、労働生産性向上などに関連した需要の拡大が継続した。
このような経済環境のもとで、同社グループは中期経営計画である「経営改革プラン」に基づき、高収益企業 への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組むとともに、社会課題を解決する高付加価値商品の創出と高効率な生産の実現に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。成長分野に対応した投資においては、市場規模が拡大している超精密加工機、脱炭素化を背景としたEV需要の高まりにより受注が急拡大しているリチウムイ オン電池向けセパレータフィルム製造装置の増産体制構築を進めた。また、成長市場であるインドにおいて 同社インド工場の射出成形機生産能力増強のため新工場増設を進めている。
■セグメント別の概況
<成形機事業>[射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機など]
射出成形機においては、販売は中国でロックダウン、経済活動停滞の影響により減少したものの、北米で脱炭 素化の動きを背景に中大型電動機が増加した。また、経済活動が活発化しているインドで油圧機が増加した。受注はインドで油圧機が増加したものの、北米、中国において景気減速による市況悪化の影響により減少した。
ダイカストマシンにおいては、販売は微減、受注は東南アジア、北米、韓国で自動車向けが増加した。
押出成形機においては、販売と受注はEV関連の設備投資需要の拡大に伴い、中国におけるリチウムイオン電池 向けセパレータフィルム製造装置が大幅に増加した。
この結果、成形機事業全体の受注高は1,549億7千9百万円(前年度比25.2%増)、売上高は859億5千7百 万円(同13.8%増)、営業利益は46億1千2百万円(同25.2%増)となった。
<工作機械事業>[工作機械(大型機、門形機、横中ぐり盤、立旋盤など)、超精密加工機など]
工作機械においては、販売は国内における産業機械向けおよび北米におけるエネルギー関連向けが増加した。受注は中国における風力発電向けおよび北米におけるエネルギー関連向けが増加した。
超精密加工機においては、販売は微減、受注は光学系金型向けが中国で減少した。
この結果、工作機械事業全体の受注高は261億9千6百万円(前年度比8.7%減)、売上高は273億2千4百万 円(同15.9%増)、営業利益は5億3千5百万円(同69.0倍)となった。
<制御機械事業>[産業用ロボット、電子制御装置など]
制御機械においては、販売は国内における電子制御装置およびシステムエンジニアリングが増加した。受 注は国内における電子制御装置、中国における産業用ロボットが減少した。
この結果、制御機械事業全体の受注高は91億8千万円(前年度比14.1%減)、売上高は86億6千5百万円 (同13.0%増)、営業利益は4億8千6百万円(前 同14.1%増)となりました。
<その他の事業>
その他の事業全体の受注高は12億9千5百万円(前年度比21.5%増)、売上高は12億5千万円(同27.4%増)、営業利益は1億4千1百万円(同79.2%増)となった。
■次期の見通し
今後の経済環境は、足元で景気の減速感が強まるなか、中国では経済活動再開による景気回復が期待されるものの、ウクライナ情勢の長期化やサプライチェーンの混乱、部材・エネルギー価格高騰などにより、先行き不透明な状況が続くものと考えられる。
このような状況のもと、世界市場の需要動向を見極めたうえで、脱炭素社会、循環型社会の実現へ向けた自動車のEV化、風力発電などの再生可能エネルギー関連へ対応した商品の提供と開発、多くの受注残高を抱えている リチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置をはじめとした生産性改善、商品力・生産性の向上を目指 したDX戦略の推進など、各施策を実行していく。
2024年3月期の見通しについては、売上高1,800億円(前期比46.1%増)、営業利益150億円(同160.2%増)、経常利益145億円(同174.7%増)、親会社株主に帰属 する当期純利益180億円(同179.4%増)を予想している。
なお、通期見通しにあたっての為替レートは、1米ドル=126円を前提としている。
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