ヤマシンフィルタが5月15日に発表した2023年3月期(2022年度)連結業績によると、売上高は186億5百万円(前年同期比1.1%減)となり、営業利益は12億35百万円(同8.1%減)、経常利益は9億15百万円(同30.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6億45百 万円(同1,270.5%増)となった。
■経営成績の概況
2022年度における世界経済は、欧州での地政学リスクの長期化を背 景としたエネルギーコスト・資材価格の高騰、物価高が継続するなか、歴史的なインフレ策として、利上げを軸とした欧米諸国の金融政策による企業経済への悪影響や急激な為替変動が生じており、依然として先行き不透明な状 況が継続している。
このような環境の中、同社グループの主力事業である建機用フィルタ事業においては、主要地域である北米、日 本、欧州、アジア市場においては、建機の稼働時間と新車需要は堅調に推移した。一方、中国市場においては経済活動の停滞により需要は大きく減少し、22年度における同社の売上高は減収となった。
また、利益面では、価格転嫁の実施により収益性は回復傾向にありますが、アルミや鋼材等の主要原材料価格や 海上輸送費の高止まりの継続や、円安の影響等により減益となった。
同社グループは、引き続き、環境負荷低減に貢献するロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去する エアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載した高付加価値フィルタ製品の主 要得意先への提案を進めており、各建機メーカの新機種への製品供給が順次開始されている。
また、主要市場である北米市場においては、世界最大手建機メーカに対する同社の燃料用、トランスミッション 用フィルタ等の新規提案・採用が進展している。一方、減益要因となっている原材料価格や物流コストの高騰、 為替変動への対策としては、更なる価格転嫁を実行するとともに、原価改善の取り組みとして、プロジェクトPAC23 の推進に加え、設計開発段階での機能や材料の見直し、生産プロセスの簡素化、部品の共通化、品質管理の更なる 強化等を行うことにより製品ライフサイクル全体でのコストの削減に取組み利益の改善に努めていく。更に は、サプライチェーンの見直しや生産地移管によるグローバル生産供給体制の構築により、原材料調達の安定化と 物流コストの低減を実現することで、外部環境変化やリスクへの適応力の強化を図り、資本効率の更なる改善と収 益性の拡大に努めていく。
エアフィルタ事業においては、主力製品であるビル空調用フィルタの交換需要の回復により、売上高は増加したた。利益面では、原材料価格の高騰に対する価格転嫁の実施、及び生産効率の改善並びに経費削減等の効果 により、増益となった。また、新たにロングライフ、低圧損、高捕集率のナノファイバー製エアフィルタ(製品名:NanoWHELP)の、オフィスビルや商業施設、ホテル、病院、工場等への採用が進展している。また、昨今 のカーボンニュートラルという大きな流れの中で企業に求められる温室効果ガスの削減のための有用な手段の一つ として、同社製品であるNanoWHELPはその素材の特性により他社製エアフィルタに比し、年間で約30%近いCO2の削減効果と同時に光熱費も大きく低減できる製品であることから、ビル用空調システム市場を中心に今後大きく成長 することが見込まれる。更に、同社グループは国内では唯一、エアフィルタ性能規格として最も権威のあるアメ リカ暖房冷凍空調機学会(ASHRAE)の定めるエアフィルタの性能等級であるMERV(16の等級に区分され最高性能等 級は16)では同社のNanoWHELPはMERV14・15・16の3つの等級を取得しているフィルタメーカであり、この高い競争 力と信頼性を活かし、今後、欧米市場をはじめとした、海外市場の開拓にも積極的に取り組んでいく。
■今後の見通し
今後の見通し 2024年3月期の同社を取り巻く、建機用フィルタ事業においては、世界最大の市場である中国においては、引き続き市況の低迷により新車の販売台数は前年度を下回る見通しである一方、日本、北米、欧州、アジアといっ た各市場における建設機械市場の需要は、一部欧州市場において景気減速の影響が懸念され、全体では前年を若 干下回る水準で推移する見通し。
また、サプライチェーンの混乱による資材価格やエネルギーコストの高騰、世界的なインフレ進行については 依然として終息のめどが立たず、先行き不透明な状況が継続している。
2024年3月期の建機用フィルタ事業の見通しについては、このような事業環境と同社の取り組みを踏まえ慎重に考慮し、保守的な見地から通期の業績見通しを作成している。前年度より継続して実施している価格転嫁 や、市況の改善による海上輸送費や航空運賃の発生額の減少に伴う一定の収益改善効果が見込まれる一方で、ア ルミや鋼材を中心とした主要原材料価格の高騰については、当面の間継続して発生することが見込まれる。ま た、昨今の世界的な物価上昇や為替の影響を受け、実質賃金の減少への対応と、優秀な人材確保の観点から、人的資本への投資の一環として給与水準の引き上げ(ベースアップ)を実施しており、固定費の増加が見込まれる。
以上の前提を踏まえ、現時点においては、主要原材料の高騰やベースアップ等による固定費の増加が価格転嫁 等による収益改善効果を上回ることから減収減益となる見通し。
しかしながら、同社グループはこのような外部環境の変化によるリスクへの対策として、更なる価格転嫁を実 行するとともに、設計開発段階での原価低減、原材料コストの削減、製造プロセスの改善、品質管理の更なる強 化等を進めることにより製品ライフサイクル全体でのコスト削減を図り利益の改善に努めていく。更には、 サプライチェーンの見直しや生産地移管によるグローバル生産供給体制の構築により、原材料調達の安定化と物 流コストの低減を図ることで、外部環境変化やリスクへの適応力の強化を図り、資本効率の更なる改善と収益性 の拡大に努めていく。
エアフィルタ事業においては、既存製品の交換需要の回復に加え、ナノファイバー製エアフィルタをはじめと した高付加価値製品ラインナップの展開により、新規取引として、オフィスビルや商業施設、ホテル、病院、工 場等への採用に向けた取り組みが進展している。また、利益面では継続した価格転嫁に加え、生産効率の改 善を軸とした原価低減活動により原価管理体制の強化と収益性の改善が見込まれることから増収増益となる見通 し。
2024年3月期連結業績予想については、以上の状況を踏まえ、以下のとおりとした。
売上高17,620百万円(前期比5.3%減)、営業利益600百万円(同51.4%減)、経常利益650百万円(同29.0%減)、親会社株主に帰属す る当期純利益450百万円(同30.3%減)。
業績見通しにおける為替レートは、1米ドル130円、1ユーロ140円を前提としている。
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