オークマが5月11日に発表した2023年3月期(2022年度)連結業績によると、受注額は2,474億69百万円(前期比15.0%増)、連結売上高は2,276億36百万円(同31.7%増)となり、共に過去最高となった。また営業利益は248億04百万円(同71.5%増)と前期比で大きく増加し、経常利益は264億46百万円(同69.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は191億95百万円(同65.8%増)となった。
■経営成績の概況
2022年度におけるオークマグループを取り巻く経営環境は、製造業の構造的な変化を背景とした生産性向上・自動化のための需要が底堅く推移した。他方で、事業運営面では、半導体等の部品・ユニット類や鋳物・鋼材の調達難とコ スト高の影響を大きく受ける展開が続いた。
工作機械の一般需要は、世界的にインフレ圧力が高まる中、2022年半ば以降、国内、海外共、緩やかに減少傾向 で推移したが、労働人口の減少、脱炭素社会への移行等の社会変化を背景とした需要は広がりを見せ、またコロナ禍や地政学リスクを契機としたサプライチェーンの再編、半導体を始めとするハイテク製品を中心とした製造の国内回帰、そしてマス・プロダクションからマス・カスタマイゼーションへ移行等、製造業の構造的な変化を背景とした需要は底堅く推移した。
米国市場では、自動車、航空宇宙、建設機械、農業機械等、幅広い産業分野で設備投資の動きが続き、年度後半 からはEV関連の設備投資も緩やかに拡大した。また半導体製造装置関連では、製造の国内回帰の動きが見られた。
欧州市場では、ドイツ、イタリア等の主要国を中心に、自動車・EV、農業機械を始めとする幅広い産業分野の一 次、二次サプライヤから多くの需要を得た。他方、中小事業者を中心に景気の先行きを懸念し、夏場以降は停滞感が見られた。
中国市場では、EVメーカ及び部品サプライヤからの旺盛な設備投資が続き、それに伴い大手・中堅企業を中心に、 金型や射出成型機、プレス機、油圧部品等、関連産業からの需要の拡大が続いた。ハイテク産業関連の需要は堅調に推移し、年度後半からは風力発電関連からの需要が拡大した。また停滞していた建設機械関連において も設備投資に動きが戻り始めた。中国以外のアジア市場では、コロナ禍の落ち着きに伴い、工作機械の需要は回復基調となった。
日本市場では、半導体製造装置関連からの需要は落ち着きを見せ、年度後半からは次の投資時期を様子見する姿 勢が広がり始めた。他方、建設機械、減速機関連、産業機械は底堅く推移し、自動車関連も緩やかながらも回復基調となった。
このように産業や顧客により需要に強弱はある中、活況産業、有望顧客の需要を取り込み、更に2022年9月に米国シカゴにて開催された米国国際製造技術展(IMTS 2022)、同年11月に東京で開催された日本国際工作機械見本 市(JIMTOF 2022)を始め、リアル展示会に積極的に出展し、自動化ソリューション等、ものづくりの社会課題の解決に寄与する製品、ソリューションを出品し、需要の喚起を図った。
また、脱炭素社会に向けて、高生産性・高精度加工とエネルギー消費量の削減の両立を自律的に行う同社の知的工作機械を「Green-Smart Machine」と定義して全面展開することをアピールし、あわせて2022年10月より国内3工場(本社、可児、江南)をカーボンニュートラル工場とした。
半導体を中心とする電子部品の調達の制約に対しては、NC装置を内製化する強みを活かして柔軟な生産対応を行 い、品質と顧客納期の確保を最優先に出荷、売上を進めてきた。また円安による部材のコスト高や電力料金等の高騰は、生産性向上によるコスト吸収に努めたうえで、販売価格への転嫁を図った。
更に、門形マシニングセンタをはじめとした精密大型工作機械に対する足元の旺盛な需要に応じる生産能力強化と共に、中期的に目指す成長戦略の一環として群馬工場を開設し、2023年1月より稼働を開始した。
■今後の見通し
オークマグループを取り巻く今後の経営環境については、半導体を中心とした調達品の制約は継続し、鋳物等、素材の価格は緩やかになるものの調達コスト全般では上昇が続くと見ている。またその他の諸経費においても インフレ等の影響を受け、コストの上昇圧力の高まりが予想される。
工作機械の需要については、ペントアップ需要の後退、インフレ局面に伴う金融引き締めや資源価格の高止まり、 先端半導体需要の一巡等により、少なくとも年度前半は調整局面が続くものと見ている。
他方、自動化・省人化、環境対応、先端技術対応、サプライチェーンの強靭化や再配置等、社会の構造的な変化 に伴う需要は底堅さを維持するものと見込まれる。このような分野では、工作機械は顧客ごとのカスタマイゼーションが求められ、また多品種少量・変種変量生産に素早くかつ柔軟に対応でき、同時に高精度での安定加工が必要とされる。また生産過程における省エネルギー、脱炭素への対応も不可欠。これらはオークマグループの技術、製品が強みを発揮する分野であり、このような社会の構造的変化、ものづくりの構造的変化は同社グループ にとって新たな成長の機会と見ている。
このような中、2023年度は、機械とNC装置の両方を自社開発するオークマグループならではの省エネルギー機能を 搭載した製品を「Green-Smart Machine」のコンセプトでグローバルに展開していく。更に、簡単な操作で高度な高精度加工を可能とし、また高速、高精度なシミュレーションで加工準備作業、自動化準備作業を最短化する 等、生産性の大幅向上を実現する新NC装置「OSP-P500」をリリースし、適用機種を拡大していく。顧客へ 新たな付加価値をもたらす「Green-Smart Machine」と「OSP-P500」の展開により、収益性の更なる向上を図っていく。
オークマグループは、グローバルでの顧客獲得、生産・業務効率向上による収益確保と体質強化を図ると共に、スマートマシン、スマートファクトリーソリューションの強化を図り、自動化ソリューション、脱炭素ソリューショ ン等、ものづくりDXソリューションの提供を基本戦略として展開し、成長産業からの需要を確実に取り込み、グロ ーバル市場で成長を図っていく。
スマートマシン、スマートファクトリーソリューションを土台に、個々の顧客におけるものづくりのライフサ イクル全体において、課題を解決し価値創造を提供する「総合ものづくりサービス」を展開していく。そし て、「ものづくりサービス」の力を発揮することで、脱炭素社会の実現、労働人口減少等、社会課題の解決に貢献 すると共に、オークマグループの成長を図り、「世界の製造業における社会課題を解決する企業」として成長していく。
以上により、次期の連結決算の業績予想については、下表のとおり。
2024年3月期連結業績予想は、売上高2,300億円(前期比1.0%増)、営業利益255億円(2.8%増)、経常利益265億円(同0.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益195億円(同1.6%増)。
業績予想の前提となる為替レートは、1ドル=131円、1ユーロ=142円を前提としている。
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