コマツが4月28日に発表した2023年3月期(2022年度)連結業績によると、連結売上高は3兆5,435億円(前期比26.4%増加)となった。建設機械・車両部門では、北米、アジアを中心に鉱山機械の需要が好調に推移した。クロスソーシングの活用及びマルチソーシングの強化など、外部環境の変動に強いサプライチェーンの構築に取り組み、新車需要を着実に取り込んだ。部品・サービス売上げの増加や、各地域での販売価格の改善や円安の影響もあり、売上高は前期を上回った。産業機械他部門では、自動車産業向けの鍛圧機械、板金機械、工作機械 については、主に大型プレスの売上げが減少したものの、半導体産業向けエキシマレーザー関連事 業は、世界的な半導体需要の増加により売上げが好調に推移したことにより、売上高は前期を上回った。利益については、資材価格や物流コスト上昇の影響はあるものの、販売価格の改善や円安の影響により、営業利益は4,907億円(前期比54.8%増加)となった。売上高営業利益率は前期を2.5 ポイント上回る13.8%、税引前当期純利益は4,764億円(前期比46.8%増加)、株主に帰属する当期純利益は3,264億円(前期比45.1%増加)となった。
コマツは、次の100年に向けて新たな価値創造を目指し、昨年4月より2025年3月期をゴールとす る3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value – Together, to “The Next” for sustainable growth」をスタートした。1イノベーションによる成長の加速、2稼ぐ力の最大化、3レジリ エントな企業体質の構築を成長戦略の3本柱として掲げ、収益向上とESG課題解決の好循環による持続的成長を目指すサステナビリティ経営を引き続き重視し、需要変動に左右されにくい事業構造の構築に向け、活動を進めている。
■部門別の概況
[建設機械・車両]
建設機械・車両部門の売上高は3兆2,966億円(前期比28.6%増加)、セグメント利益は4,436億 円(前期比60.9%増加)となった。 中期経営計画の成長戦略「イノベーションによる成長の加速」においては、鉱山向け無人ダンプ トラック運行システム(AHS)の導入を着実に進め、2023年3月末時点の総稼働台数は累計643台となった。また、建設機械の遠隔操作化に取り組み、中型油圧ショベル向けの遠隔操作システムを 開発し、2023年3月より顧客への提供を開始した。カーボンニュートラルの実現に向けて、 建機の電動化においては、パートナーとの共同開発を推進し、電動マイクロショベル「PC05E-1」を はじめ、各機種の開発及び早期市場導入に向けて取り組んだ。2023年3月には国際的な建設機械見本市「CONEXPO-CON/AGG 2023」において、電源がない環境での充電が可能な蓄電機能付き充電器を初出展した。また、燃料電池や水素エンジンなどの新動力源の研究開発に取り組むと同時に、新技術が実現するまでの「ブリッジテクノロジー」の一環として、欧州地域の工場で出荷時に 充填される燃料をディーゼル燃料から、CO2排出量を大幅に削減可能な水素化植物油(HVO燃料)へ 切り替える準備を進めた。 「稼ぐ力の最大化」では、都市土木作業に特化して仕様を最適化した油圧ショベルCEシリーズ 「PC200-10M0」を活用した2ラインモデル戦略において、アジア地域での拡販を進めるとともに、 中南米への導入を開始した。また、ライフサイクルサポートビジネスによる差別化の推進を目指し、キーコンポーネントを自社開発・生産している強みを活かしたメンテナンス契約付き延長保 証プログラムの拡大を着実に進めた。 「レジリエントな企業体質の構築」では、昨年に完全子会社化した中国生産法人の合併など合理化を進め、グローバルクロスソーシング拠点としての競争力強化に取り組んだ。また、湘南工場内に新たに竣工した開発棟に、自動化・自律化・遠隔操作化などの研究・開発機能を集約し、開 発の効率化を図った。
■地域別の概況
<日本> 日本では、公共工事及び民間工事向けの新車需要は減少したものの、新車販売の増加や販売価格の改善などにより、売上高は前期を上回った。
<米州> 北米では、一般建機の需要は金利上昇の影響で住宅建設向けが減少したものの、、イン フラ向けが好調に推移し、エネルギー関連向けも引き続き増加した。加えて、鉱山機械の需要が好調に推移したことや、販売価格の改善及び円安の影響もあり、売上高は前期を大幅に上回った。中南米では、一般建機の需要は第3四半期以降減速しているものの、鉱山機械の需要は堅調に推移した。鉱山機械の部品・サービスの売上げ増加や、販売価格の改善及び円安の影響により、 売上高は前期を大幅に上回った。
<欧州・CIS> 欧州では、エネルギー価格高騰などの影響はあるものの、サプライチェーンの混乱が改善し、主要市場であるドイツ、英国、フランスを中心に一般建機の販売が増加した。販売価格の改善などにより、売上高は前期を大幅に上回った。 CISでは、ウクライナ情勢に起因したサプライチェーン及び金融・経済の制約の影響から、売上高は前期を大幅に下回った。
<中国> 中国では、ゼロコロナ政策などによる経済活動の停滞により需要が低迷したことから、売上高は前期を下回った。
<アジア・オセアニア> アジアでは、インドネシアにおける石炭、ニッケル鉱山向け機械の需要が好調であったことに加え、フィリピン、ベトナム、マレーシアを中心に一般建機の需要が堅調であったことから、売上高は前期を大幅に上回った。 オセアニアでは、鉱山機械及び一般建機の需要が堅調に推移した。部品・サービス売上げが 増加したことや円安の影響もあり、売上高は前期を上回った。
<中近東・アフリカ> 中近東では、サウジアラビアやUAEなどの産油国でのプロジェクトなどにより、一般建機の需要が好調に推移したことから、売上高は前期を大幅に上回った。 アフリカでは、主に南部アフリカ地域における鉱山機械の需要が好調に推移したことから、売上 高は前期を大幅に上回った。
■次期の見通し
建設機械・車両部門では、アジアや北米を中心に鉱山機械の需要が好調に推移する一方、金利上 昇の影響もあり一般建機の需要は減速することが見込まれる。為替を円高に想定していることも あり、減収となる見通し。また、利益については、円高や販売量の減少及び固定費の上昇の影響を、販売価格の改善により吸収し、増益となる見通し。
リテールファイナンス部門では、主に円高の影響や、22年度に計上した貸倒引当金の戻入益及びリース終了後の中古車の再販益が見込めなくなることなどから、減収減益となる見通し。
産業機械他部門では、半導体産業向けエキシマレーザー関連事業の売上げは引き続き堅調に推移 し、自動車産業向けの鍛圧機械、板金機械、工作機械についても大型プレス機などを中心に売上げ が増加することから、増収増益となる見通し。
これにより、2024年3月期の連結業績の見通しは、下記のとおり売上高は減収となる見込み。営業利益は販売価格の改善などにより当期並み、株主に帰属する当期純利益は金利上昇による支払利息の増加などにより減益となる見通し。
売上高3兆3,820億円(前期比4.6%減)、営業利益4,910億円(同0.1%増)、税引前当期純利益4,420億円(同7.2%減)、株主に帰属する当期純利益2,990億円(同8.4%減)。
業績見通しにおける為替レートは、1米ドル=125.0円、1ユーロ=133.0円、1豪ドル=83.0 円を前提としている。
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