東洋機械金属が4月27日に発表した2023年3月期(2022年度)連結業績によると、受注高は31,211百万円(前年同期比13.6%減)、売上高は35,298百万円(同6.1%増)となり、過去最高の売上高を更新した。このうち、国内売上高は9,471百万円(同8.3%増)、海外売上高は25,827百万円(同5.3%増)となり、海外比率は73.2%となった。利益については、調達部材価格や燃料エネルギー価格の高騰によるコストの増加分を製品価格への転嫁や生産の効率化等で改善を図ったが、全てを吸収するまでには至らず、営業利益は1,319百万円(同25.0%減)、経常利益は1,538百万円(同21.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は987百万円(同22.6%減)となった。
■経営成績の概況
2022年度(2022年4月~23年3月)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種等の対策が進み、行動の制約や入国規制が撤廃されたことにより、経済活動が正常化に向かった一方で、中国のゼロコロナ政策やロシアのウクライナ侵攻等の地政学的リスクにより、先行きは不透明な状況で推移した。国内経済においても、新型コロナウイルス感染症の懸念が後退し、行動制限が緩和され、景気は回復傾向となったものの、地政学的リスクによるサプライチェーンの混乱や燃料エネルギー不足による原材料価格の高騰、また、世界的な金利上昇に伴う円安が急激に進行したことにより、予断を許さない状況が続いた。
同社グループの関連する業界は、国内・海外とも設備投資意欲は回復基調であるものの、需要は期中から期末にかけてやや陰りが見られるようになった。それに加えて、半導体をはじめとする電子制御部品の不安定な供給による納期の長期化、行き過ぎた円安進行による鉄鋼を中心とした海外からの調達部材価格の上昇が続いており、また、不均衡なコンテナ供給による物流の混乱やロシアのウクライナ侵攻の影響による燃料エネルギー価格の高騰等の影響もあり、非常に厳しい状況で推移した。
このような市場環境のもと、同社グループは2024年3月期を最終年度とする第3期中期経営計画に基づいた事業活動を推進し、中長期的な視点から持続的な成長と安定した収益確保に取り組んだ。また、22年度は、10月に3年に一度ドイツ・デュッセルドルフで開催される世界最大のプラスチック展示会「K2022」に出展した。「K2022」のテーマである循環型経済(サーキュラーエコノミー)、気候変動対応及びデジタル化を体現するべく、リサイクル樹脂による成形やオンライン上での成形状態モニタリングの実演、脱炭素へ向けての低消費電力機をアピールした。また、ダイカストマシンでは、11月に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により4年ぶりの開催となった「j-dec2022 日本ダイカスト会議・展示会」(横浜)に出展し、環境性能の充実とコンパクト化を実現した電動サーボダイカストマシンの展示に加え、会場に大型モニタを設置し、遠隔操作システム「T-RemoteWEB」を用いて展示会場と本社の鋳造現場を繋ぎ、リモート操作よる鋳造の実演を行い、デジタルを活用した顧客のモノづくり課題解決のための新技術・ソリューションを展開した。
<射出成形機>
射出成形機については、国内は、自動車関連、工業部品関連の売上が増加した。海外においては、 中国でのIT機器関連や医療機器関連の売上が減少したが、アジアでの生活用品・IT電子機器関連や米州や 欧州における生活用品・自動車関連の売上が増加した。この結果、受注高は24,438百万円(前年同期比8.3% 減)、売上高は27,419百万円(同5.6%増)となった。このうち、海外売上高は20,004百万円(同3.7%増)となり、海外比率は73.0%となった。
<ダイカストマシン>
ダイカストマシンについては、国内は自動車関連が減少した。海外においては、中国、東アジアの 自動車関連の売上が増加した。この結果、受注高は6,772百万円(前年同期比28.6%減)、売上高は7,879百万 円(同7.8%増)となった。このうち、海外売上高は5,823百万円(同11.3%増)となり、海外比率は73.9%と なった。
■今後の見通し
今後の経済見通しについては、新型コロナウイルス感染症の経済活動への影響は限定的となり、正常化へ向かうものと予測する。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の終息が見えないことから、資源エネルギー価格は高止まりし、半導体をはじめとする電子制御部品の不安定な供給や調達部材価格の高騰は続き、不均衡なコンテナ供給による国際貨物輸送の混乱等もあり、依然として先行き不透明な状況は続くものと判断している。
一方、同社の事業に関連する市場では、米国の銀行が破綻したことによる金融不安が表面化し、新規設備投資が手控えられたことにより、やや減速傾向にあるが、世界的な脱炭素の流れを受け、電気自動車関連の需要に好転の兆しがあり、また、コロナ禍がもたらした消費者のライフスタイルの変化による生活用品関連の需要の増加も見込まれることから、受注環境は堅調に推移するものと予想される。
このような市場環境のもと、同社グループは中期経営計画“TOYO GO CHALLENGE 2023”の最終年度を迎える。これまでの成果を踏まえながら、さらなる事業拡大を図るべく中期経営計画で掲げた、基本方針、各種戦略に基づき、以下の施策に取り組んでいく。
①販売予測に基づく新営業スタイルの確立と営業力の継続強化
②脱炭素社会に貢献する、環境にも配慮した新製品の市場投入と顧客最優先の品質保証体制の拡充
③生産効率の抜本的改善、事業規模を拡大する積極的な大型新営投資、及び工場利益の出る生産体制の早期構築
④安定的な調達部材の確保と「品質、価格、納期」を重視した戦略的調達
⑤基幹システムの効果的運用とDXを活用した全社的な業務改善の推進
⑥サステナビリティの根幹となる人的資本への投資と将来を担う人づくり
⑦社会的責任を認識し、法令や社会的規範を遵守するコンプライアンスを最優先とした企業活動
これらの取組みにより、「新しい付加価値」を生み出し、顧客の「価値向上」に貢献することにより、売上計画の達成と収益構造の改革による利益率向上に努めていく。引き続き、為替の急激な変動や調達部材の長納期化、及び、原材料の価格高騰や輸送費等の諸経費の上昇等が経営に悪影響をもたらす可能性があるが、リスクを最小限に抑え、利益を確保するための必要な対策をあらゆる方法・手段により講じていく。また、きめ細かな製品のカスタム対応や迅速なサービス対応にも注力し、顧客満足度の向上に努めていく。
■2024年3月期の見通し
なお、2024年3月期の通期連結業績の見通しについては、上記の取組みにより収益の確保を図っていくが、為替の動向は依然として不透明であり、また、地政学的リスクによる燃料エネルギー価格及び調達部材価格の更なる高騰が予測されることから、売上高は33,000百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益400百万円(同69.6%減)、経常利益600百万円(同61.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は370百万円(同62.5%減)を見込んでいる。
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