・TOMONI®によるエネルギーバランス最適化サービスを提供開始
・ENEOS・堺製油所の脱硫段階における水素量調整および副生水素活用の最適化をサポート
・水素エネルギー循環の上流であるエネルギー供給側のエナジートランジションを推進
三菱重工業は3月30日、石油精製プロセスにおける水素の効率的な活用を実現するエネルギーバランス最適化サービスを、ENEOSへ提供開始したと発表した。サービス提供に先立ちENEOSの堺製油所(大阪府堺市)で行われた実証試験では、独自のAI & IoT技術(注1)による予測・最適化分析エンジンであるENERGY CLOUD®(注2)を搭載したインテリジェントソリューションTOMONI®(注3)のクラウドプラットフォームを導入、原油精製の脱硫段階で使う水素の製造・消費量調整と、その後の製油プロセスから得られる副生水素の効率的な利用について良好な結果が得られたことにより、2023年2月からサービスの提供に至ったもの。
原油から灯油やガソリンなどを精製するプロセスでは、原油に含まれる硫黄成分を除去するため水素を使った脱硫処理が行われる。原油性状は産油地によって異なることから脱硫に必要な水素量にも差があり、処理設備性能も変化することから、製油所では未利用原料ガス(オフガス)を使った水素の製造量調整など高度な精製オペレーションが必要となる。熟練したスタッフによる判断が必要とされるこのオペレーションに、これまでの実績データを学習させたTOMONIを適用することで、コスト低減と高度なオペレーション技術の伝承を同時に追求する。また、この製油プロセスから得られる副生水素の活用にも三菱重工のAI技術を適用し、脱硫処理後に水素製造装置へ再循環する量をAIが判断する。
今回の取り組みは、三菱重工グループが保有する化学プラントと発電設備のノウハウをAI & IoT技術で統合することにより、バリューチェーン上流の燃料供給プロセスにアプローチし、設備全体の運⽤最適化とCO2の排出量低減を目指すもの。これまでガスタービンなどの発電設備を数多く手掛けてきた三菱重工グループは、このサービスを提供するに当たってサブスクリプション型契約を採用。これにより、インフラの整備や新しい技術開発が必要となるエナジートランジション提案において幅広くかつ迅速なソリューションサービスを提供する。
ENEOSの堺製油所は、経済産業省のスーパー認定事業者(注4)に認定されており、AI & IoTによる高度なプラントオペレーション活動を推進している。同製油所から、TOMONIの強みである設備運用の最適化支援が可能である点、ワンストップのソリューションサービスであるという点が高い評価を得ている。
三菱重工は、グループの成長エンジンであるエナジートランジションを一層加速するためデジタル化やAIの活用拡大といった技術開発を進め、「既存インフラの脱炭素化」「水素エコシステムの実現」「CO2エコシステムの実現」の3つの取り組みを軸に、カーボンニュートラル社会の実現に向けたソリューションを開発、提供していく。
注 1 AI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用した技術を指す。
注 2 ENERGY CLOUD®は、三菱重工業株式会社の日本およびその他の国・地域における登録商標。
注 3 TOMONI®は、三菱重工業株式会社の日本およびその他の国・地域における登録商標。
注 4 多様化する災害、プラントの高経年化、熟練従業員の減少などに対応するため、IoT、ビッグデータの活用、高度なリスクアセスメント、第三者による保安力の評価の活用などといった高度な保安の取り組みを行っているとして経済産業省から認定を受けている事業者(プラント)のこと。
コメントを投稿するにはログインしてください。