日立建機とファースト・クォンタム社、ゼロ・エミッション・パートナーシップに関する基本合意書を締結

・2023年度末までにカンサンシ銅・金鉱山(ザンビア)でエンジンレス・フル電動ダンプトラックの実証試験を開始

 日立建機First Quantum Minerals Ltd.(本社:カナダ・オンタリオ州、以下、ファースト・クォンタム社)は3月1日、同社のザンビア共和国にある主力鉱山におけるゼロ・エミッション・パートナーシップに関する基本合意書(LOI)を締結したと発表した。

 日立建機は、2025年の操業開始を予定しているS3拡張プロジェクト含むファースト・クォンタム社のカンサンシ銅・金鉱山(ザンビア)における実証試験のため、ABB社のバッテリーシステムおよび関連装置を搭載した、エンジンレス・フル電動リジッドダンプトラックの試験機を、2023年度末までに供給する予定。

 今回の提携は、両社にとって重要なマイルストーンとなる。日立建機は、技術ロードマップの一環として、ゼロエミッション製品の検証を加速し、ファースト・クォンタム社は、同社最大級の鉱山でこのバッテリー技術を適用することで、操業中の温室効果ガス排出量の削減と、長期的で持続可能な目標に向けて前進する。

 日立建機とファースト・クォンタム社は、長年にわたる協力関係にあり、今回の基本合意書や実証試験を通じて、その関係はさらに強化される。カンサンシ鉱山は、既存のトロリーアシストシステムがあり、フル電動ダンプトラックの開発と合致しているため、実証試験に最適な環境。ファースト・クォンタム社は現在、カンサンシ銅・金鉱山で日立建機の現在のトロリー受電式ダンプトラック41台(39台のEH3500ACII 、2台のEH3500AC-3)を運行しており、フル電動ダンプトラックに必要な多くの設備がすでに整備されている。

 日立建機がABB社と共同開発しているフル電動ダンプトラックは、車載の蓄電装置とトロリーシステムで走行する。稼働に必要な電力をパンタグラフで架線から取り込むと同時に、バッテリーへも充電する。また、下り坂を走行中はブレーキの回生エネルギーでバッテリーに充電する。

 ABB社トラクション事業部eMobility担当のFabiana Cavalcante(ファビアナ・カヴァルカンテ)氏は、「ABB社は、エネルギー効率の高い蓄電装置およびDC/DCコンバータなどの車載パッケージの供給を通じて、日立建機との協力関係を継続できることを喜ばしく思っています。私たちは、鉱山の電動化を可能にするソリューションを開発し、ファースト・クォンタム社のような鉱山会社の持続可能な目標の実現をサポートするために、連携を深めていくことを楽しみにしています」とコメントしている。

 日立建機は、現在のトロリー受電式ダンプトラックで実績のある技術をフル電動ダンプトラックに適用することで、開発スピードを加速し、鉱山現場の実証試験を実現する見込み。また、後付け可能なシステム設計であるため、現在のディーゼル式ダンプトラックを将来的にフル電動ダンプトラックに変更することができる。拡張性のある車両能力により、鉱山運営への影響を最小限に抑え、段階的にフル電動化を実現できることが特長。

 ファースト・クォンタム社は、さらに、ダンプトラックEH4000AC-3を40台、電動式超大型油圧ショベルEX5600-7Eを6台新たに発注し、カンサンシのS3拡張プロジェクトのために、2023年から導入する予定。同社の事業全体で温室効果ガス排出量を削減する長期的な取り組みを実証していく。

 追加で発注されるダンプトラックEH4000AC-3は、日立建機の連結子会社Bradken PTY Ltd(以下、ブラッドケン社)が設計・製造した荷台を搭載する。また、電動式超大型油圧ショベルEX5600-7Eはブラッドケン社製のバケットを装備し、バケットの爪の脱落を検知する技術も組み込んでおり、日立建機グループのシナジーを最大に生かす。

 日立建機とファースト・クォンタム社は、このフル電動ダンプトラックの実証試験を通して継続的に協力し、エネルギー転換と温室効果ガス排出量の低減に寄与する鉱山機械を普及させるため、技術、インフラ、安全面の検証を行い、鉱山現場での展開やプロセスの最適化に貢献してく。

 また、両社が支援するエンジン修理設備を計画している。このパートナーシップは、地元の雇用創出と人財育成の機会を増やし、ザンビアに社会的・経済的利益をもたらすことが期待されている。

■日立建機 執行役専務 マイニングビジネスユニット長 石井 壮之介氏のコメント:

 日立建機とファースト・クォンタム社は、2004年に初めて機械を導入して以来、緊密でお互いに尊敬し合える協力関係にあり、今回の基本合意により、継続的な協力と支援を通じて、この関係をさらに強固なものにできることを光栄に思っています。フル電動ダンプトラックは、日立建機グループだけでなく、鉱業界全体の未来を象徴するものであり、稼働中の鉱山でこの実証試験を行い、ファースト・クォンタム社と協力して、このゼロ・エミッション・ソリューションを推進できることを嬉しく思っています。日立建機は、二酸化炭素排出量の削減や気候変動に関する重要な課題を解決し、安全で持続可能な社会の実現に貢献するために、多くのソリューションを開発していきます。

■ファースト・クォンタム社 マイニング部門ディレクター ジョン・グレゴリー氏のコメント:

 鉱業におけるイノベーションは、ファースト・クォンタム社の哲学に不可欠であり、日立建機とのパートナーシップに大きな期待を寄せています。私たちは、鉱山現場の電動化に注力しており、世界のエネルギー転換に不可欠な銅を供給するために、採掘活動では、生産性、安全性、収益性の高い脱炭素化をめざしています。ファースト・クォンタム社は、日立建機と共に10年以上かけてトロリーアシスト技術をカンサンシ鉱山に導入し、この分野で業界を牽引しています。これらのトロリーアシスト技術を活用した実証試験は、トロリー式バッテリーソリューションの将来の実用化に向けて、技術の進展につながると考えています。

 ファースト・クォンタム社は、坑内破砕・搬送や電気ドリルの導入により、ザンビアの事業全体で年間CO2排出量を約10万トン削減し、生産性の向上、コストの低減、安全性の向上に寄与している。日立建機とフル電動ダンプトラックで協業することで、2030年までに温室効果ガスを50%削減するという目標に沿って、さらなる削減をめざしていく。

<ファースト・クォンタム社が保有するザンビア・カンサンシ鉱山の概要>

 カンサンシは2005年から操業するザンビア・ノースウェスタン州ソルウェジ近郊にある銅・金鉱山で、銅、負極材、正極材を生産している。2つの露天掘り鉱山と、カンサンシ鉱山と同じくノースウェスタン州にあるセンチネル鉱山からの精鉱を処理する銅製錬所を所有している。操業の85%以上をザンビアの国営電力網から供給される再生可能エネルギーでまかなっている。2022年5月にS3拡張プロジェクトを承認し、2025年にかけてプロジェクトを立ち上げ、銅の生産量は年間約20万~25万トンに増加する見込み。ザンビアでは1万人以上を直接雇用しており、その95%以上がザンビア人。

■日立建機について
 日立建機は、油圧ショベル、ホイールローダ、道路機械、鉱山機械などの開発・製造・販売・サービスの事業をグローバルで展開している建設機械メーカー。新車販売以外の事業である部品・サービス、レンタル、中古車、部品再生などの「バリューチェーン事業」の強化に注力し、デジタル技術を活用することで、顧客とのあらゆる接点において提供するソリューションを深化させている。世界に約25,000人の従業員を擁し、2021年度(2022年3月期)の連結売上収益は1兆250億円、海外売上収益比率は約79%。

■ファースト・クォンタム社について
 ファースト・クォンタム・ミネラルズ(TSX: FM)は、銅、ニッケル、金、銀の生産と、探査・開発を含む関連事業に従事している。同社はザンビア、パナマ、トルコ、スペイン、オーストラリア、モーリタニアで鉱山を操業している。アルゼンチンのタカタカ銅・金・モリブデンプロジェクトを進行し、ペルーのハキラ銅鉱床を探鉱中。2022年の銅生産量は77万6000トン、従業員、請負事業者、コンサルタントは全世界で2万6,000人以上。

 ニュースリリース