日本製紙は2月6日、欧州で急速に市場拡大する電気自動車(EV)の車載用リチウムイオンバッテリー(以下LiB)の、負極材料の一つとして用いられるCMC(カルボキシメチルセルロース:商品名SUNROSE MAC®)の供給体制を強化するため、ハンガリーに製造販売子会社を設立したと発表した。
CMCは、天然セルロースを高純度に精製したパルプを原料として得られるアニオン系水溶性高分子で、環境に優しい素材。その優れた増粘性・吸収性・保水性から、食品・歯磨きペーストなどの日用品、製紙などの工業用途で以前から広範囲に使用されてきたが、近年ではLiB用途も大きく伸長していル。日本製紙の開発品であるLiB用CMC(SUNROSE MAC®)は、LiB負極材料(グラファイト)塗工液の高機能性添加剤として使用され、均一な塗工膜の形成が可能になり安全性に優れる点から、スマートフォン・PCなどの民生用、再生可能エネルギー蓄電用に加え、EV車載用途でも国内外のLiBメーカーから高く評価されている。
EV車載用のLiB市場は、脱炭素社会を目指したCO2 の排出規制が進む欧州で急速に拡大している。また欧州の自動車産業は域内でのサプライチェーン構築を掲げ、中国、韓国などの自動車部品・LiBメーカーも欧州域内での工場建設計画を相次いで発表している。こうした状況に対応し、日本製紙は2021年に江津工場のLiB用CMCの生産体制を強化したが、今回新たにハンガリーでの生産体制の構築(新工場の建設)を行う。新工場の稼働は2024年12月を予定し、売上高約50百万€、約60名の雇用創出を計画している。
日本製紙はグローバルに展開するLiBメーカー・自動車メーカーに対し、日本の江津工場とハンガリーの2拠点から高性能なLiB用CMCを供給する体制を構築し、脱炭素社会の実現に向けて貢献していく。
<設立会社の概要>
会社名:Nippon Paper Chemicals Europe Zrt.
所在地:ハンガリーブダペスト市
設立:2022年9月
資本金:10百万€
資本構成:日本製紙株式会社100%
事業内容:LiB用CMC(SUNROSE MAC®)の製造および販売