●年頭所感(2023年) 一般社団法人日本フルードパワー工業会 会長 梶本一典

 新年あけましておめでとうございます。

 さて、12月14日、日銀より景況判断が発表されました。大企業・製造業の景況感がプラス7ポイントということで、前回9月の調査から1ポイントの悪化となりました。緩やかではありますが、4四半期連続の低下ということでありまして、これはアメリカの急速な金融引き締めが発端ではないかと考えております。それによりまして、アメリカの市況や半導体市場の減速感が出てきたため、欧米経済を中心に景気後退の懸念が高まり、さらには中国の不動産市況悪化、そしてゼロコロナ政策見直しの混乱などが、経済を下押ししている影響によるものと思っております。

 振り返りますと、数年前までは、世界経済は一層グローバル化が進むだろうと言われ、我々企業は、その環境下のもとで物流を考え最適地生産をどう模索していくのかという視点で活動してきました。しかしながら、約4年前から関税引き上げから始まり顕在化してきた米中貿易摩擦は、関税引き上げから、半導体や5G等の通信分野に代表されるハイテク分野での輸出規制に発展し、更に価値観を共有する国々を巻き込んだ展開となっております。「経済安全保障」という考え方が生まれ、我々も、このあたりを十分認識して事業を行っていくことが肝要になってきたと思います。

 また、2年前に勃発したロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギーや各種部材の品薄、価格高騰に悩まされ、受注があっても物を作れないといったかつて経験したことがないような企業経営に大きな影響が出ております。

 このように、エネルギーや各種部材の品薄、価格高騰に加え、世界的な貿易管理の考え方が変わっていく中、CO2削減に向けたカーボンニュートラルの実現への社会的要求は強まり、企業活動に様々な制約が出てきております。

 そんな中においても、当業界を見ますと、昨年の油圧機器の売上高は対前年比1%増の4,000億円、空気圧機器は対前年比9%増の6,000億円、全体で5%増の約1兆円となったもようです。

 今年は、内外の様々な動きが激しくなり、一層難しい舵取りが求められる年になりそうです。われわれは、否が応でもこれら課題に対処していかなければなりません。

 工業会としては、これら課題に取り組んでいくため、1昨年、IoT推進部会を発足させて、勉強していく体制をつくりました。特に、カーボンニュートラル実現に向けた対応としては、フルードパワーシステム学会の協力を得て、関連技術開発のサポートをお願いする体制づくりをし、さらにISO規格のJIS化の動向や、温室効果ガス等の規制・規格の動向を今後進めていきたいと考えております。

 話は変わりますが、今年は兎年。兎は跳ねる特長があることから、兎年は景気が上向いたり、回復したりすると言われております。昨年は国内外で、数多くの出来事がございました。しかし、最後にはサッカーのワールドカップで日本がこれまで勝てなかったドイツやスペインに勝利し、決勝トーナメントに進出することができました。これら明るい話題ではなかったでしょうか。

 このような、明るさを今年も引き継ぎまして、業績も飛び跳ねていければいいなと思う次第であります。

 最後になりましたが、ご来賓の皆様をはじめ、フルードパワー産業と関連業界、そして我が国産業の更なる発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

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