●年頭所感(2023年) NTN株式会社 社長兼CEO 鵜飼英一

 明けましておめでとうございます。

 昨年、グローバルにおける経済活動は、コロナ禍を経て少しずつ回復基調に向かう一方、原材料や燃料の高騰、半導体不足に加え、国際紛争や為替の変動など、企業を取り巻く環境は不安定かつ厳しい状況が続いた年となりました。

 このような状況下、当社は、以下の施策を着実に実行するとともに、事業構造の変革を加速させてまいります。

 アフターマーケット事業では、堅調な需要回復に対応できる供給体制を整え、販売拡大につなげてまいります。かねてより進めていた海外協力会社へのボールベアリング標準品の生産移管を開始したほか、和歌山新工場も本格的に稼働を開始しました。汎用品の在庫補充システム「FIRST」も最大限活用し、需要を確実に取り込んでまいります。

 産業機械事業では、変減速機や鉄道車両などの需要増加を見込んでおり、着実な事業拡大につなげてまいります。今後成長が見込まれる風力発電分野においては、メンテナンス事業を開始し、高性能な軸受や高精度な状態監視サービス(CMS)、適切なメンテナンスから補修用軸受まで一貫して提供するサプライヤーとして風力発電装置の安定稼働と市場の進展に貢献してまいります。

 自動車事業では、回復基調にある需要にしっかりと生産対応してまいります。鋼材や燃料の価格上昇は落ち着きつつある状況ですが、引き続き適正な価格に向けた交渉を進め、着実に収益を確保しながら販売拡大につなげてまいります。商品開発においては、昨秋に量産を開始した世界最高水準の伝達効率を誇る高効率固定式等速ジョイント「CFJ」をはじめ、EV・電動化のニーズに合わせた基盤商品の開発・提案を進めるとともに、コア技術を活用したモジュール商品の開発にも積極的に取り組んでまいります。

 既存事業のほか、今後成長が期待される新分野への取り組みも進めています。製造現場の自動化・省人化が進む中、設備の稼働率向上に貢献するIoT技術を活用した商品の開発や提案を進めています。昨年には、軸受の異常検知が可能なセンサを内蔵した「しゃべる軸受®」を開発いたしました。風力発電向けのCMSや軸受診断アプリ、持ち運び可能な「NTNポータブル異常検知装置」など、これまでの軸受に関するあらゆる当社のノウハウを活用した商品と、データ分析などのサービスを組み合わせたビジネスモデルの構築を加速させてまいります。

 NTNグループでは、中長期の持続的成長に向けたESG経営を推進しています。昨年カーボンニュートラルの目標達成年度をScope1・2は2035年度、Scope3は2050年度と決定しました。社内プロジェクトも立ち上げ、脱炭素化に向けて全社で取り組んでまいります。また、人的資本経営の考え方に基づき、事業活動を支える人材への投資も積極的に行っています。従業員向けエンゲージメントサーベイの実施やESG活動を奨励する新会社表彰制度の制定など、従業員の「働きやすさ」「働きがい」の実現に向けた取り組みを今後も進めてまいります。経営体制においては、昨年、取締役会議長に女性の社外取締役が就任しました。多様性を確保しながら監督の実効性を高め、ガバナンスの強化に一層取り組んでまいります。

 本年は、中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2の最終年度となります。施策の着実な実行を通じて、経営環境の変化に対応できる企業体質を構築するとともに、必ずNTNの再生を果たしてまいります。

 最後になりましたが、皆さまとご家族のご健勝を祈念して、私の年頭の挨拶といたします。

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