●年頭所感(2023年) 一般社団法人 日本産業車両協会 会長 水野陽二郎

 明けましておめでとうございます。令和5年の年頭に当たりご挨拶を申し上げます。

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、令和2年4月以降、断続的に実施されてきた政府の全国的な制限措置も昨年3月にはすべて解除され、新型コ ロナウイルス対策も新たな段階に移行しました。現在、いわゆる“第8波” を迎えているといわれるものの、社会・経済活動は徐々に活発化しております。

 一方で、昨年2月に勃発したロシアによるウクライナへの侵攻は、依然解決への糸口が見い出されないまま続いており、世界の分断に対する懸念も高まっている状況の中で、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇が生じ、 家計の負担も増加し、企業においても景気に与える影響が強く懸念されているところです。

 こうした厳しい内外の情勢ではあるものの、産業車両の国内生産額については、1~10月の累計で約10%の増加となっており、主力機種のフォー クリフトでも、国内販売台数が3年連続で増加すると見込まれています。特に電気車の比率は約65%にまで達する状況です。

 協会もウィズコロナの下、活動が制約される状況ではございますが、「物流の効率化」、「安全の向上」、「環境負荷の低減」への貢献による業界の健全な発展と世界トップの業界であり続けるために、この3つのミッション を果たすため様々な取り組みを実施してまいりました。

 まず「物流の効率化」に関しましては、政府の総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)に基づき、物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化等による持続可能な物流の実現を図る取り組みが進んでおり、いわゆる物流の2024年問題を前に、パレットの標準化の具体的な方向性も打ち出されました。昨年12月に開催された政府の検討会では、 2024年にトラックドライバーの労働時間の上限が規制されることで、輸送能力において約14%の不足が生じること、そして現在ドライバーが運転業務と共に担っている荷役作業の時間を削減していくことでこの不足分は解消されるとの試算が報告されました。

 こうした動きに呼応して、手荷役から機械荷役への転換による作業の効率化を実現するため、フォークリフト等の産業車両のさらなる活用と物流の自動化の加速が求められており、協会としても建設的な意見具申や提案を行っているところです。

 昨年9月に開催されました「国際物流総合展」では、未来を見通した多くの製品やソリューションが出展、アピールされ、経済産業省、国土交通省のご担当官にもご覧いただき、ご理解、ご認識を深めていただくことができました。

 次に「安全の向上」に関しましては、一昨年に続き第2回となる「フォー クリフト安全の日」を7月4日に開催し、前回の2倍以上の来場者をお迎えすることができました。新たに、フォークリフトを実際にご利用いただいているお客様における安全への取り組みの紹介や、フォークリフトの安全に資する機器やサービス等の紹介コーナーも設けて、大変参考になったとの評価をいただくことができました。

 また、フォークリフト等を用いた荷役作業の安全対策に関する、官・民の検討会にも参加し、厚生労働省に規格の拡充や法令の見直しを提言させていただきました。今年も7月初旬に第3回「フォークリフト安全の日」を開催できるよう準備を進めておりますので、こうした取り組みの成果の一端も発表できるようにしたいと考えております。

 また会員各位のご支援ご協力を得て、私どもが国際整合させた改正原案作 成を行った無人搬送車システムのJIS安全規格が昨年2月に発行されました。「国際物流総合展」でも、多くの無人搬送車システムが出展されておりましたが、会期中AGVSセミナーを開催し、この最新JIS規格の紹介・ 解説を行いました。先ほど申し上げた物流の自動化のさらなる普及拡大に、この新たな安全規格が貢献できますことを願っております。

 最後に「環境負荷の低減」に関しましては、2050年カーボンニュートラルの実現という日本の目標達成に貢献すべく、産業車両業界では、かねてより電気車、さらには水素を用いる燃料電池車の開発と普及促進によるCO 2排出削減に取り組んでまいりました。またカーボンニュートラル行動計画の着実な推進を進めており、2021年度の工場からのCO2排出量を、基準年度である2005年度実績から約4割削減することができました。

 さらに2030年の削減目標の上積み、さらには2050年に向けたビジ ョンの策定を進めており、まもなく皆様にもご披露できる見通しですが、加えて、引き続き製品・ソリューションのご提供により、お客様の事業所での脱炭素化の目標達成にも貢献してまいりたいと考えております。

 このように事業の進捗が図られた一方で、長年に亘り継続実施している日欧米中の業界による「アライアンス業界首脳会議」の日本での開催は、新型コロナの感染状況を考慮して、今回も3年連続で中止・延期せざるを得ませんでした。世界的なカーボンニュートラルに向けた取り組みや、新たな国際貿易秩序の下での自由で公正な貿易の実現、さらには物流のデジタル化・自動化の方向性といった課題について、世界各国・地域の業界トップが率直な 意見・情報の交換を行って、業界全体のバージョンアップを図っていく貴重 な機会を実現できなかったのは大変残念でありますが、今年の秋こそ、日本 がホストを務めて開催したいと願っております。

 以上、私ども協会の今年度の活動の一端をご紹介させていただきました。

 今年の9月には国際物流総合展イノベーションエキスポを東京で開催する予定です。テーマは「知恵と技術を集結し、2024年問題を解決する」と しており、新たな製品、サービス、ソリューションを広く紹介してまいりますので、ぜひご期待下さい。

 物流の世界でも、AIやIoT、ロボット、そしてDX等の新技術が加速 的に導入・活用され、大きな変化の時代を迎えております。産業車両業界としましても、製品の単なる提供にとどまらず、ソリューションの提案による課題解決へという業界のミッションの再定義化も図りながら、物流の発展に貢献してまいりたいと考えておりますので、会員の皆様のご協力ご支援を引き続きよろしくお願い申し上げます。

 そして経済産業省、国土交通省、厚生労働省、環境省をはじめとする関係御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、より一層のご指導ご支 援を賜わりますようお願い申し上げます。

 本年こそは、皆様が安心して事業活動に邁進いただける1年となりますよう心より祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

 日本産業車両協会HP