●年頭所感(2023年)一般社団法人 日本経済団体連合会 会長 十倉雅和

・サステイナブルな資本主義の実践を目指し、社会課題の解決と持続的な経済成長を実現する

 昨年2月に勃発したロシアのウクライナ侵略は今なお収束の兆しが見えず、国際秩序の根幹を大きく揺るがしている。これに起因する世界的な資源・食料価格の高騰により、わが国のエネルギー・食料安全保障が大きな課題として浮き彫りになっている。

 しかしながら、こうした厳しい情勢だからこそ、事業方針に掲げた「サステイナブルな資本主義の実践」が非常に重要であり、本年も社会課題の解決と持続的な経済成長の実現に一層取り組んでいく決意である。

 持続的な経済成長には、「投資」と「消費」の拡大が欠かせない。経済界は、国内投資の活性化、賃金引き上げのモメンタムの維持・強化に最大限努力していく。

 国内投資の柱は、言うまでもなく、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)である。とりわけ、GXは、気候変動問題という社会課題の解決とともに、活発な国内投資を生む成長戦略の切り札であり、エネルギー安全保障上も重要である。また、核融合を含む核エネルギー、量子、AI、バイオ、マテリアル等、科学技術・イノベーション投資も欠かせない。さらに、スタートアップ振興や、新たな成長を牽引することが期待されるクリエイティブ産業、バイオ産業、モビリティ産業の振興にも引き続き注力しなければならない。ダイナミックな産業構造の転換を通じて、わが国の産業競争力を強化してまいりたい。

 同時に、経団連では「分厚い中間層の形成」も重要視している。その実現には、構造的な賃金の引き上げはもちろん、人への投資や労働移動の円滑化、国民の安心確保に向けた税と社会保障の見直しが必須である。分厚い中間層の形成は、格差の解消に資するとともに消費の拡大による経済成長を実現するものである。

 この他にも、コロナ感染症への取り組みは今なお継続中であり、不確実な国際情勢下にあって、自由で開かれた国際経済秩序の構築も極めて重要な課題である。山積する課題を前に一刻の猶予もない。経団連は、岸田内閣と力を合わせて、社会課題の解決と持続的な経済成長の実現に全力で取り組んでいく。皆様の一層のご支援、ご協力をお願い申しあげる。

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