コマツ、「新春向けコマツ社長インタビュー合同取材会」を開催、鉱山機械は23年も堅調に推移

 コマツは12月5日、年末恒例の「新春向けコマツ社長インタビュー合同取材会(Teams取材会)」を開催し、小川啓之社長が、2022年の現状と2023年以降の見通し、また取り組み・考え方などを語った。以下、順不同で内容を抜粋紹介する。

・・・・・2023年の展望について。

 2023年のビジネスプランを策定中なので、具体的な話はできないが、一般的に言って、来期は、北米や各地域における金利上げ、インフレの影響が大きく、GDPの成長率も鈍化するなど、必ずしも2022年と同じ状況ではない。ただ、コンストラクション(建設機械)とマイニング(鉱山機械)は分けて考えてみるべきだと思っている。

 鉱山機械については、資源価格がかなり高いレベルを維持されているので、いまの価格が維持される限りは、問題なく堅調に推移する。特に、インドネシア、フィリピンでは、石炭関連や建設業での設備投資マインドは高く、また大手資源会社も2024年ぐらいまでは堅調な設備投資を行うとしており、マインドは強く、総合的にみて鉱山機械は来期も堅調に推移する見通しだ。

 建設機械については、北米は金利上げの影響で確実に住宅市場が影響を受けており、住宅着工件数140万戸まで落ちてきている。一方、エネルギーや道路を中心とするインフラ関連は増えてきており堅調だ。この分野が住宅関連の落ち込みをカバーすれば、リーマンショック時のような大きな落ち込みにはならないだろう。

 ロシアのウクライナ侵攻もあって、一時的に、各国が「脱炭素」から、ある程度「エネルギーの安定供給」に舵をきっているが、長期的に見れば、再生可能エネルギー、脱炭素の流れは止められないだろう。

 コマツの鉱山機械ビジネスとしては、やはり、石炭の比率が下がることに対し、ハードロックビジネスを成長させていく。それからEV(電気自動車)がこれから伸びていくなかで、銅やニッケル市場にも注力していく。実際、直近ピークである2018年の鉱山機械売上高から見ると、石炭は10ポイントぐらい下がっており、銅やニッケルが10ポイント増えている。

 建設機械の北米は、需要としては厳しい。欧州は、経済指標を見ても何ひとつ良いところはなく、ロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー価格が高騰し、サプライチェーンもかなり混乱している。足元の受注残は積みあがっているが、受注は若干の減速気味だ。したがって2023年の需要は厳しい。

 一方、東南アジアを中心とする戦略地域については、コロナからの回復ということもあるが、国により濃淡はあるにしても比較的堅調だ。全体に見て、2023年に向けて心配なのは、欧州と米州。戦略地域については、マイニングは堅調である。

 円安の影響もあり、2022年度の売上高は3兆4,600億円(前期比23.5%増)の見通しだが、為替動向を注視する一方、来期は引き続き値上げを行っていく。

・中国のクロスソーシング拠点化については。

 中国工場では、生産能力を年間1万7,000台から1万台まで落とす構造改革を進めている。1万台といっても、コマツにとって生産能力はまだ余剰ということになる。

 中国の油圧ショベル需要は、2020年はコロナ禍をいちはやく抑えたということで、約30万台。過去のピークである2010年は、リーマンショック後の4兆元公共投資による効果などで約20万台。コマツは、20万台程度が典型的な年間需要だとみている。いま、不動産の問題やゼロコロナ政策により市場は悪いが、約20万台が巡航速度だとみている。

 現状、中国メーカーのシェア85%、外資系が15%、つまり外資系で約3万台。うちコマツが15%シェアをとったとすれば約4,500台。生産能力を1万台にした場合、半分は中国国内向けとなる。つまり、残り約5,000台をクロスソーシング機械に回していこうという考えだ。2022年は、中国からインドネシア、中南米にも輸出を開始し、2022年度は3,500台の輸出計画を立てている。

 コマツはこれまで、中国で生産した機械を海外に輸出していなかった。2021年、中国の経済状況が悪いということ、鋼材価格が世界一安いといったコスト競争力があることから、この競争力を活用した。従来、タイおよびインド工場をクロスソーシング拠点として活用していたが、これに中国を加えて、需要に供給をキャッチアップする体制となった。中国については、2023年以降もクロスソーシング拠点として活用していく。

・建設機械の電動化や電動化による差別化が可能か。

 電動化そのものについては、おそらく差別化できないだろう。コマツでは、2022年4月からの新中期経営計画において、「(モノ):プロダクツ」と「(コト):ソリューション」の両面で、顧客に向き合わないと差別化につながらないとの考え方を打ち出している。縦軸と横軸という点でみれば、電動化や遠隔操作・自動化などの軸があり、別の軸には顧客の施工の最適化など。それぞれソリューション、プロダクツのレベルを分けて対応していく。

 また、仮に電動化の製品開発面で多少先行したとしても時間が経過すれば追いつかれる。中国のショベルについても、10年前とは違ってきている。電動化に付加価値を付けて、ICTのような自動化や遠隔操作を付加していくことが必要だし、顧客の施工を最適化するようなソリューションを加えていくことが重要だ。つまりプロダクツとソリューションの両方で顧客の課題を解決していく。

・国内の顧客の反応や電動化ついての課題は。

 現状、世界中に電動建機のマーケットはないが、小型建機に市場ができる。欧州はミニ建機市場が大きく、気候変動に対する意識が高い。一部の国ではインセンティブも出ており、インフラそのものも少しずつ整備されているため、欧州に市場ができるとの仮説の上に立っている。

 日本国内については、電動建機で顧客の声を聞くため、3トンとマイクロショベルをレンタル導入した。採算は度外視しているが、残念ながらコストの面で、バッテリー、インバーター合わせて機械の半分以上となる。産廃や解体業などからは排ガスがでないこと、低騒音であるなど、ある程度ポジティブな反響があった。ただマーケットができるには、最終的にはコストの問題がある。したがって何らかのインセンティブのようなものがでてこないと、日本国内で電動建機というものの市場が形成されるということは、いまのところ非常に考えにくい。電動化については、日本は自動車が先行しているが、コマツでは建機工(日本建設機械工業会)を通して政府に要望している。

・ロシアの事業については。

 ロシアの状況については、4月末の決算発表時と考え方は変わっていない。ロシアには約1,000人の従業員、代理店に約3,000人がおり、機械も15,000台程度管理している。雇用と安全を守るというのが基本的な考え方だ。顧客のもとにある機械が部品・サービスがないことで、顧客の安全が担保できなくなることは避けたい。2022年4月の時点に完成車の出荷は止めたが、最低限のサービスは行うことを決めている。

 ただし、6月に日米欧で輸出規制が厳しくなり、輸出できる部品なども限られている。そういった中で、それに対応した形をとっている。現時点で撤退は考えていないが、ロシア事業そのものが縮小しているので、ある程度見直していくことになるかもしれない。

・設備投資計画については。

 設備計画については、従来から全工場を対象に安全・環境を中心に取り組んでいる。例えば、粟津工場は自動化など物流の合理化や改善に取り組んでいる。金沢工場については、200トンクラスの油圧ショベルの生産を開始するための設備を入れる。200トンクラスは、東南アジアで需要が堅調なので、生産ラインを設ける。また、全体としてカーボンニュートラルに対する関連投資も取り組んでいる。

 また今回、約30億円を投じ、小山工場に水素供給インフラを整備し、水素混燃発電機および水素エンジンと大容量(1,000KW)の燃料電池(FC)のテストベンチを設置する。発電した電力を工場電源系統へ連携・利用するとともに、水素混燃システム実証を進める。

・M&A戦略の変更等については。

 M&A戦略については、従来から変わりはなく、当然、いい案件があれば対応していく。一つは、デジタル、ソリューション、従来からのアタッチメント、アフターマーケット・・・・・。ターゲットとしている案件があれば取り組む。相乗効果が見込めるようであれば、マクロ経済の状況に関係なく取り組む。

 (2022年12月5日会見より抜粋:質疑応答は順不同)