・PCR検査試薬・遺伝子診断薬用原料の開発・生産体制を強化
東洋紡(大阪市北区)は11月28日、敦賀バイオ工場(福井県敦賀市)に約65億円を投資し、遺伝子検査に用いられるPCR※1検査試薬および酵素や抗体などの遺伝子診断薬原料を製造する設備を新設すると発表した。2023年3月に着工し、2024年11月の稼働開始を目指す。
新型コロナウイルスをはじめとする感染症の診断においては、ウイルスの微量なDNAなどを検出可能なPCR検査に代表される遺伝子検査が広く活用されている。さまざまな感染症が拡大した際に、PCR検査試薬や遺伝子診断薬の原料の需給のひっ迫を避けるため、国内での生産・供給体制の強化が求められている。
今回、敦賀バイオ工場に約65億円を投じて新設するのは、研究用試薬棟と遺伝子製造/品質試験棟。高濃度DNAの取り扱いに適したクリーンルームや、研究試薬を効率的に分析・製造できる環境などを備えた施設を新たに建設するとともに、一部老朽化した設備を刷新。これにより、世界的に需要が高まるPCR検査試薬および遺伝子診断薬用原料の生産能力を現在の約3倍に増強する。将来、発生する可能性のある感染症向け検査薬や原料の開発・生産体制の一層の強化を図る。
東洋紡は1972年、酵素法による尿酸測定用検査薬を開発、発売し、バイオ事業に本格的に参入。1978年に敦賀酵素工場に開発・生産体制を集約すると、1982年には遺伝子工学用の制限酵素などの販売を皮切りにライフサイエンス試薬分野へ進出した。1992年に敦賀酵素工場を敦賀バイオ工場と敦賀バイオ研究所に再編し、1995年に現在の主力製品の一つとなるPCR酵素「KOD® DNAポリメラーゼ」を上市した。これまで、ノロウイルスやインフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなど、さまざまな感染症のPCR検査用試薬や酵素を開発、販売してきた。サンプルに夾雑物が含まれていても正確かつ高速で増幅可能なPCR酵素や、標的遺伝子を短時間で検出できる研究・診断用試薬などの開発・生産に強みを持つ。
2022年5月に発表した長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」※2において「感染症診断のソリューションビジネスで世界トップ」を目標に掲げる東洋紡は、今後も、遺伝子検査用の原料酵素から試薬・診断薬、診断機器まで、感染症分野の川上から川下に及ぶ一貫したソリューションを提供し続けられるよう、開発・生産体制の整備に注力し、幅広いニーズに対応していく。
※1: Polymerase Chain Reactionの略。極微量のDNAサンプルから、特定のDNA領域のみを短時間で解析可能な量に増幅する方法。
※2:東洋紡「サステナブル・ビジョン2030、2025中期経営計画(2022~2025年度)」https://ir.toyobo.co.jp/ja/ir/library/plan.html
<新設する製造設備の概要>
所在地:福井県敦賀市東洋町10-24(東洋紡株式会社敦賀事業所第一内)
延床面積/構造/階数 :
・研究用試薬棟 : 8,250㎡/鉄筋/4階建て
・遺伝子製造/品質試験棟: 1,760 ㎡/鉄筋/2階建て
製品分類:体外診断用医薬品
投資金額:約65億円
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