東芝エネルギーシステムズ、タービン発電機向け検査ロボットを実用化

・発電機の形状に合わせ、2種類のロボットによる保守サービスを提供

 東芝エネルギーシステムズは10月12日、発電所用タービン発電機向け検査ロボットのサービス提供を本格的に開始すると発表した。

 東芝エネルギーシステムズは2018年に同ロボットの開発を行い、実用化に向けた準備を進めてきたが、改良を加え、このほど中・大型発電機に加え、小型発電機にも対応可能な「薄型検査ロボット」とバッフル(注1)乗り越えを可能とする「高機能型検査ロボット」の2種類のラインナップを用意し、国内外発電所向けの検査サービスを幅広く展開する。「薄型検査ロボット」は、一部の海外原子力発電所で検査サービスを開始しており、本格的にサービス開始する。一方「高機能型検査ロボット」は2023年度から国内外向け検査サービスを提供する。

 従来は、専門検査員が4年毎に回転子を固定子から引き抜き、タービン発電機の精密検査を実施していた。発電所の稼働率向上のためには、発電機の検査期間の短縮と検査周期の延長が課題であり、短期間で高精度な検査の実施が求められている。

 近年、ロボットによる発電機機内検査技術が開発されているが、固定子にバッフルが取り付けられている発電機では、バッフルがロボット検査の障壁となっていた。東芝エネルギーシステムズが開発した「高機能型検査ロボット」は、固定子側に3本のアームを突っ張らせ、ロボットを回転子に押し付け走行することで、これまでロボットでは検査が難しかったバッフル付き発電機でのロボット検査を実現した。

 また、液体接触媒質を使用しない非破壊検査技術の開発により、回転子を固定子から引き抜くことなく、回転子の亀裂検査を実施することが可能となった。

 さらに、これまで検査が困難だった小型発電機の検査を可能にする薄型タイプの検査ロボットを開発した。「薄型検査ロボット」は、固定子鉄心表面に磁力で吸着して走行し、バッフルが取り付けられていない発電機への適用が可能。

 「薄型検査ロボット」は、業界最薄クラスの厚さ10mm(突起を含まないフレーム厚さ)であるため、従来、「高機能型検査ロボット」の厚さ33mmでは適用できない狭い構造をもつ発電機に対しても、ロボット検査が可能となる。機能面では、「高機能型検査ロボット」に搭載されているバッフル回避機能と回転子非破壊検査機能を除く品質検査項目一式の検査が可能となっている。

 同ロボットを使うことで、回転子を引き抜くことなく、従来の精密検査期間の約半分の12日(注2)程度(発電機分解組立期間含む)で発電機内の回転子と固定子の詳細検査が可能となる。なお、同ロボットは、東芝エネルギーシステムズ製タービン発電機のみならず、他社機設備への適用も可能。

 東芝エネルギーシステムズは、同ロボットを活用し、火力や原子力発電所向けの保守メンテナンスサービス事業を展開していく。国内のみならず、欧州、北米、東南アジアなどグローバルに既設発電所向け保守メンテナンスサービス事業を強化し、顧客利益の最大化に貢献していく。

注1 機内通風整流化の為に固定子に設置された壁

注2 発電機によって各種検査ポイント数が異なるため、所要日数は変わる場合あり。

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