中国のロボット産業、急成長で主要な技術を突破することが第一の目標に

 CHPSA (中国油圧空気圧シール工業協会):2022年8月25日(出所:中国工業報)

 「近年、我が国のロボット産業は力強い発展の勢いを示しており、産業の規模は急速に成長し、技術レベルは大幅に向上し、応用の深さと幅の開拓は加速している。」 8月18 日から21日、北京人民政府、工業和信息化部(産業情報技術省)、中国科学技術協会が共催する2022年度世界機械人大会(世界ロボット会議、以下:会議)が北京で開催され、会議で、 工業和信息化部党組織書記の金杜龍が祝辞を述べた。 (1元は約20円)

 関連データによれば、2021 年、我が国のロボット産業の売上高は1,300億元で、産業用ロボットの生産台数は 36.6万台に達し、2015 年と比べ 10 倍の増加で、世界最大の産業用ロボット市場にランクされている。

 ロボット市場の主体から見ると、我が国のロボット市場の主要な部分は、常に最適化・ 拡大されて、様々なタイプの企業が中国市場で良好な発展を遂げており、イノベーション型企業が次々と出現している。2021 年末現在、ロボット分野の専門的で洗練された新しい「リトル巨人」企業数は 101 社に達しており、完成機、主要部品・コンポーネント、システム統 合( system integration)など、様々なタイプの企業が包括されている。

市場の潜在力は絶え間なく解き放たれている

 現在、デジタル経済の発展スピード、放射範囲の広さ、及びその影響力の深さは前例の ないものであり、世界経済の発展に新たな勢いを与え、新たな活力を注入している。デジタル経済時代の最も象徴的なツールとして、ロボットは技術イノベーションの促進、産業のグレードアップの促進、国の安全保障、人々の健康を見守る上でますます重要な役割を果たすようになっており、国のイノベーション能力と産業の競争力を評価する重要な尺度となっている。

 我が国は、ロボット技術と産業の発展を非常に重視しており、ロボット市場の規模は急 速に拡大し続けている。ロボット企業は徐々の発展し、成長し、すでに初歩的に整ったロボット産業チェーンが形成されている、同時に、「ロボット+」アプリケーションは絶えず拡大しており、産業全体が活気に満ちた繁栄ぶりを見せており、良好な発展態勢にある。

 集中的な国内政策及びますます成熟する市場などの複数要因に後押しされて、我が国 の産業用ロボットは急速に成長しており、需要の最も旺盛な自動車と3C エレクトロニク スの2大業界に加え、化学工業、石油などの応用市場の規模は徐々に開かれている。

 国際ロボット連盟(IFR)の統計によると、過去5年間、中国の産業用ロボットの市場規模は終始成長傾向を維持しており、2022年の市場規模は 87 億 米ドル(約595億6,600万元)に達する見込みである。2024年には、中国の産業用ロボッ トの市場規模はさらに拡大し、110 億米ドル(約753億1,400万元)を超える見込みであ る。

 市場規模の急速な発展に加えて、我が国のロボット産業の特色ある発展経路も徐々に 明らかになって来ている。自動車や3C 製造等の主流の応用分野では、国際的な大手ロボット企業が市場シェアの大部分を占めている現状に直面して、我が国では、強力な技術力を持つ多くのロボット企業が出現しており、実際の業界ニーズに密接して、多くの成熟したアプ リケーションプログラムを発表している。その中で、戦略的新興産業は、ロボットアプリケーションの新しい拠点となっている。

 統計資料によると、2021年、我が国の新エネルギー車の生産台数は 367.7万台で、前年比 152.5%の増加である。全国のリチウムイオン電池の生産量は 324GWhで、前年同期比 106%の増加である。太陽光発電グリッド接続の設備容量は 3 億 kW の大台を超え、7 年連続世界第 1 位にラックされている。

 我が国のロボット企業は、新エネルギー車、リチュウム電池、太陽光発電の製品生産及びメンテナンスのニーズを中心に、革新的なソリューションを打ち出し、戦略的な新興産業 におけるロボットの設置が急速に成長している。

■主要なコア技術のブレークスルー

 現在、中国の産業用ロボットの研究開発は、主要なコア技術のブレークスルーを最も重要な目標とし、ロボットの主要部品・コンポーネントの応用と普及を加速して、産業チェー ンとサプライチェーンの強靭性を強化することであり、これはロボット産業の質の高い発展を助けるのに有利である。

 ロボットの主要な部品・コンポーネントには、コントローラー、減速機、サーボシステ ム、センサー及びエンドエフェクター(中:末端執行器)等が含まれており、これらは、ロボットの機能、性能と信頼性のレベルに直接影響し、決定つけている。

 今回の会議には、30を超えるロボットの主要な部品・コンポーネント企業が展示参加 し、ロボットのあらゆるタイプの主要部品・コンポーネントをカバーしており、我が国のロボットの川上である部品・コンポーネント産業チェーンの完全性を示している。

 減速機は、産業用ロボットの総コストの 35%を占める一種の伝動装置であり、様々な サービスロボットや特殊ロボットには不可欠な主要な部品・コンポーネントでもある。減速機はロボットの関節部位にあり、サーボシステムの高速運転エネルギーを高出力トルクに 変換し、ロボットに高出力能力を与えることが出来る。

 会議の智同科技(北京智同精密伝動科技有限責任公司)の展示小間では、高精密減速機駆動のハイポイドマニピュレータ(中:準双曲面機械臂)が自由自在に動きまわっていた。智同科技は 2015 年に設立されている。現在、同社の精密減速機の研究開発業務は、精密減速機の原理研究、主要部品・コンポーネントの製造プロセス開発、材料及び熱処理技術の研究の 3つの目標をカバーしており、最終的に「理論研究+製品開発+市場試験検証+普及」 の科学技術イノベーションシステムの布石を実現している。

 智同科技の戦略発展部総経理の劉澤鵬は、「現在、会社の製品耐用年数は国際的な同類製品の 2.5倍であり、価格は国際的同類製品よりも大幅に低い。市場需要の急速な成長と 製品競争力の向上に伴い、今年の会社の受注はすでに7万台に達しており、来年は15万台に達する見込みである」と紹介している。

 SRTソフトロボット(中:SRT軟体機械人公司)は、フレキシブルなエンドエフェク ターを展示している。中国工業報は展示現場で、同社のフレキシブルクリパー(中:柔性挟 爪)が不規則な物体を自由につかみ、その動作は柔軟な人の手のようで、フリーズ(中:卡 頓)は見られなかった。

 同社の責任者は、「私達は、手作業に代わる低コストの技術ソリューションを開発し、 工業自動化生産の課題である“最後の 1 センチメートル”を解決した。フレキシブルエンド エフェクターは一種の新型エンドエフェクターであり、優しく傷つけず加工部品をつかみ 取ることが出来る、非常に高い適応性を持っている」と紹介している。

 我が国のロボット開発は目覚ましい成果をあげているが、産業基盤は相対的に薄弱で、 ハイエンドツールの不足などの問題が依然として存在しており、ロボット産業は、まだ中国 経済及び社会的発展の質の高いニーズを十分に満たすことが出来ていない。

 工業和信息部装備工業一司副司長の汪宏は、次のステップとして、工業和信息部はロボット産業チェーンとサプライチェーンの安定性を維持するために、産業基盤能力を包括的 に改善し、「ロボット+」、アプリケーションアクションなどの 3つの目標からの着手を加速し、各業界のデジタル化構造転換とインテリジェント化へのグレードアップを支援して いくと述べている。

 ニュースソース

 中国ロボット産業報告書(2022年)関連ニュース(上のグラフは同報告書より)