IHIエアロスペース、大手宇宙衛星推進系メーカー独OHB グループ傘下から 民間衛星向け小型推進器 「1Nスラスタ」 を受注

IHIのグループ会社である㈱IHIエアロスペース(東京都江東区,以下「IA」)は8月22日、ヨーロッパの大手宇宙衛星推進系メーカーである独OHB グループの傘下OHB Sweden社から、衛星の姿勢制御や軌道制御に使われる小型推進器「1Nスラスタ(型式:MT-9)」を受注したと発表した。

 本スラスタは、小型(推力:1N)の推進器で民間衛星に複数台搭載され、軌道上での所定の高度や軌道を維持する機動性(マヌーバ)を確保するために活用される。

 IAが2012年に宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)と共同開発した1Nスラスタ(MT-9)は,2017年に打ち上げられた超低高度衛星技術試験機(SLATS: Super Low Altitude Test Satellite:※1)に搭載され、その機能が実証された。MT-9は1Nスラスタの第2世代にあたり、以前の1Nスラスタと比べて,より国際的な競争力を有する長寿命(※2)スラスタとなっている。また、このスラスタは,燃焼部分(ジェットモータ)とそこに推薬を供給するバルブとの間の断熱性能が優れており、この特性により、噴射モードにおいて、次の噴射までの開始時間に制約が無いことや、ジェットモータに取り付けられているヒータの消費電力が小さいことが特徴。

 今回の契約はIAにとってOHB Swedenからの2回目の受注になる。OHB Swedenに納入した初回契約分スラスタについて、製品性能および契約から納入までのサポートにおいて高い満足度を得られたとの評価を受けており、今後も顧客の満足度の維持に務めていく。

 OHB Swedenは30年以上にわたりスペースミッション、衛星、宇宙機等の製品を提供しているヨーロッパの宇宙産業を牽引する企業。今後さらに宇宙市場において発展が期待される。

 IAは、世界に宇宙関連の推進系システムを提供するメーカー。1953年に宇宙業界に参入し、衛星や打ち上げロケットの推進系システム・コンポーネントの開発・製造を行っている。IAの製品は日本のみでなく米国・ヨーロッパ,アジア圏に輸出されており、これまで1,000台以上の1液推進スラスタ(※3)が、軌道上での運用に成功している。

 IAは、今後も宇宙業界において国内外の顧客に向けて優れた製品とサポートを提供し続けるため顧客のニーズに向き合い、より高い価値が提供できる会社であり続ける。

<衛星用1Nスラスタ>
人工衛星に複数台搭載され、衛星の姿勢制御や軌道制御に使われる小型の推進器。推薬を触媒で分解して高温ガスを発生することで推力を出す装置。推薬を供給する推薬弁、ガス発生部、熱制御機器(ヒーター、温度センサ類)から構成される。

※1 超低高度衛星技術試験機(SLATS: Super Low Altitude Test Satellite)
JAXAから2017年12月に打ち上げられ2019年9月まで運用された、小さなセンサを用いて高分解能の衛星画像を取得可能な衛星。

※2 トータルスループット(スラスタに供給される推薬の総量)と,パルス数(スラスタの噴射回数)の双方を大きくすることで,長寿命化を実現。

※3 1液式スラスタ(ヒトラジン推進システム)
IAが1964年に開発した推進システムで,燃料のヒドラジンが触媒反応により分解・発熱して高温ガスが生成され、ノズルから噴出されることで推力を得る。推力範囲は1Nから50N。

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