・異なるシステム間でも横断的にデータを活用できる共通プラットフォームで、水道事業の広域化・DXを実現
㈱日立製作所(以下、日立)は7月19日、日立と㈱水みらい広島*1から構成される共同企業体が、広島県より、水道広域運転監視システムの構築業務(以下、本業務)を受注したと発表した。
本業務は、広島県内の県営浄水場9カ所(瀬野川浄水場、白ヶ瀬浄水場、三ツ石浄水場、本郷・埜田浄水場、宮浦浄水場、坊士浄水場、戸坂取水場、温品浄水場、田口浄水場)を対象に、ベンダーや仕様が異なるシステム間でも横断的にデータを活用できるクラウド上の共通プラットフォームと、日立のLumada*2を活用したアプリケーションなどを通じて一元的に全ての施設の運転状況の監視や操作を行うシステムの設計・構築を行うもの。これにより、国や自治体が進める水道事業の広域化を実現するとともに、職員の経験やノウハウに依存していた運転監視・維持管理の大幅な効率向上・省力化などのDX(デジタルトランスフォーメーション)が可能となる。契約金額は約10億円、受託期間は2022年6月から2025年3月までの予定。
*1水みらい広島: 広島県、呉市、水ing株式会社の共同出資による日本初の民間主体の官民連携水道事業会社。
*2Lumada: 顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。
■背景
国内の上下水道事業は、主に市町村が事業運営を担っており、老朽化が進むインフラ設備の更新費用の増加が見込まれるとともに、同事業に携わる職員は減少傾向にある。こうした課題に対し、市町村の枠を超えた連携や一体的な事業運営を行う「広域化」を推進することで、上下水道事業の経営基盤を強化する機運が高まっているが、一般的に運転監視・制御システムは施設ごとにベンダー独自仕様となっており、データの互換性がないことから、施設間のデータ利活用は限定的な状況。
また、多くの浄水場の運転監視や維持管理の業務は、水道事業に携わる職員の経験やノウハウに依存してきたが、事業を安定して継続するためには、先進のデジタル技術を活用し、より一層の業務の効率化・省力化や技能・技術の継承が必要となっている。
■業務の内容
これらの課題を解決するために、水総合プロバイダーとして長年培ってきたプロダクト、OT*3、ITの実績とLumadaソリューションを提供する日立と、広島県内の浄水場の施設管理や保守・メンテナンスで豊富な実績を持つ水みらい広島の技術・ノウハウを組み合わせ、広島県が進める水道事業DXに歩調を合わせて先進的なデジタル技術を導入していくことが有効と考え、以下の3点を基軸とする提案を行い、受注に至りった。主に(1)(2)を日立が、(3)を水みらい広島が担当する。
(1)国が策定した水道情報活用システム標準仕様*4(以下、標準仕様)に準拠した水道標準プラットフォームの開発および堅牢なセキュリティを有するクラウドサービスの提供。
(2)日立の上下水道事業向けLumadaソリューションである「O&M (Operation & Maintenance)支援デジタルソリューション*5」を活用し、県営浄水場9カ所を対象とした施設の運転監視・制御アプリケーションを水道標準プラットフォーム上へ構築
(3)ベンダーや仕様がそれぞれ異なる県営浄水場9ヶ所の既設運転監視・制御システムを本システムに連接するための機能増設
これらにより、広域の浄水場の運転状況の監視や操作の一元化を可能とすることで、運転監視業務のさらなる効率化をめざす。また、システムの構築にあたっては、標準仕様を活用することにより、システム導入・維持コストの削減、広域連携におけるシステム間連携のしやすさなどの発展性が期待できる。さらに、今回構築するシステムには、既設システムの改造や更新において、汎用的なハードウェアやソフトウェアの導入が可能になる仕組みを持たせており、維持管理コストの縮減にも貢献していく。
*3 OT: Operational Technology(制御・運用技術)
*4 水道情報活用システム標準仕様:これからの水道事業におけるデータ流通の共通ルールなどを定めたもので、厚生労働省と経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の連携により2019年4月に作成された仕様。
*5 O&M支援デジタルソリューション:日立の上下水道事業における運用・保全業務の可視化・省力化・効率化やノウハウの継承などを支援するクラウドサービス。
■今後の取り組み
日立では、将来的に、本業務の成果を、Lumadaの上下水道事業向け総合デジタルソリューションに取り込み、水総合サービスプロバイダーとして、上下水道事業を担う顧客が抱える課題解決と、レジリエントな社会インフラの実現に貢献していく。
<受注概要>
業務名:広島県水道広域運転監視システム構築業務
発注元:広島県
受託期間:2022年6月から2025年3月
契約額:1,023,000,000円(税込)
業務内容:県営9浄水場既設中央監視設備の水道標準プラットフォームへの接続および各浄水場の運転監視を行う水道広域運転監視システムの構築
■日立製作所について
日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。金融・官公庁・自治体・通信向けITサービスやお客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、産業流通、水インフラ、ヘルスケア、家電・空調システム、計測分析システム、ビルシステムなどの幅広い領域でプロダクトをデジタルでつなぐ「コネクティブインダストリーズ」と、自動車・二輪車の分野で先進技術を提供する「オートモティブシステム」の事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。グリーン、デジタル、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2021年度(2022年3月期)の連結売上収益は10兆2,646億円、2022年3月末時点で連結子会社は853社、全世界で約37万人の従業員を擁しています。
ニュースリリース
*リリース内容から一部「ですます調」で表記しています。