・坑内掘りハードロックの坑道掘削新工法を促進
コマツは7月8日、子会社であるコマツカミンズチリ(以下KCC)を通じて、チリ国営の鉱山大手コデルコと、坑内掘りハードロック鉱山において「マイニングTBM(Tunnel Boring Machine:トンネル掘削機)」を活用した坑道掘削新工法を実現するためのトライアルを2024年より開始することに合意したと発表した。
両社はコマツが新たに開発した「マイニングTBM」をコデルコが所有するチリ・チュキカマタ鉱山でトライアルを実施し、革新的な当該技術の早期導入を目指す。
鉱山業界では、世界的な資源需要の増加や採掘の深度化を背景に、坑内掘り鉱山機械の需要は増加が見込まれている。コマツは、1963年に日本で初めてとなる土木分野における岩盤用トンネル掘削機を開発して以来、累計2,300台を超えるトンネル掘削機(アイアンモールを含む)を市場導入してきた。今回の「マイニングTBM」は、コマツがこれまで培ったトンネル掘削機の技術をベースに、ハードロックの坑道掘削において「急曲線対応」「後退」「交差点掘削」を可能とする技術を新たに開発し搭載している。一般的なトンネル掘削機は、直線坑道の掘削に使用が限定されてきたが、当該新技術により「マイニングTBM」のフレキシビリティを改善し、鉱山毎の形状・設計に合わせた坑道掘削を可能としている。
「マイニングTBM」は、機械先端のカッターヘッドに装着したディスクカッタで岩盤を掘削し、破砕された岩をベルトコンベヤで後方へ排土すると同時に、掘削した坑壁を補強する支保作業といった一連の坑道掘削工程を連続的に行う。ディスクカッタによる掘削は、従来工法における発破を用いた掘削と比較すると、掘削岩盤を傷める領域が少なく、坑壁の凹凸が少ない円形断面の坑道となるため、坑道の強度的な安定性が向上する。また、「マイニングTBM」は、高圧電気ケーブルを延伸し供給される電気を動力とし、一連の坑道掘削工程を1台の機械で行うことにより、坑内で使用する車両数を削減することができることに加え、発破が不要であることから、温室効果ガス(GHG)と粒子状物質(PM)の排出量を大幅に削減する。これにより、坑内掘り鉱山において重要である坑内換気量の削減や坑内環境の改善に繋がる。同時に、従来工法と比較して、掘削作業の生産性を大幅に向上させることも可能となる。
気候変動への意識の高まりや環境問題の深刻化に対応するため、コマツは坑内掘りハードロック向け鉱山機械の開発については、「No Blasting(発破の必要がない掘削), No Batch(バッチ処理をおこなわない連続掘削), No Diesel(ディーゼル不使用)」というスローガンを掲げて注力してきた。今回の「マイニングTBM」は、このスローガンを具現化する商品であり、「マイニングTBM」工法により顧客の現場の安全性、環境性および生産性(坑道構築の工期短縮・工費削減)の向上に貢献し、坑内掘り鉱山オペレーションの変革実現の一助となることを目指すもの。
コマツは2022年4月よりスタートした新中期経営計画「DANTOTSU Value – Together, to “The Next” for sustainable growth」 の成長戦略の一つとして、坑内掘りハードロック向け鉱山機械事業の拡大を目指している。今回の「マイニングTBM」の早期導入を実現することにより、坑内掘りハードロック向け鉱山事業のステップチェンジを起こし、未来の現場に向けた次のステージに踏み出し、サステナブルな未来を次の世代へつないでいくため、新たな価値創造を目指す。
【コデルコの概要】
コデルコ(CODELCO Corporacion Nacional del Cobre de Chile)は、世界最大の銅生産国であるチリの国営企業で、世界最大級の銅生産企業である。本社は、チリ・サンティアゴ。
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