⼤同特殊鋼、渋川工場に特殊溶解設備を増設、航空エンジンや半導体関連等、高級鋼の増産に対応

 大同特殊鋼は6月22日、今後需要が高まることが予想されるニッケル基合金やクリーンステンレス等高付加価値製品である高級鋼の増産に備えて、これらの製造に不可欠な特殊溶解設備の真空アーク再溶解炉(VAR)1基を投資額7.5億円で渋川工場(群馬県渋川市石原500)に増設すると発表した。稼働開始時期は2023年8月を予定している。

 大同特殊鋼は2016年に世界最大級の25トン真空誘導炉(VIM)の渋川工場への設置を皮切りに高級鋼の生産能力拡大を進めており、今回の投資もこの一環となる。

 大同特殊鋼の高付加価値製品の代表であるニッケル基合金やクリーンステンレス鋼は、真空誘導炉で溶解した鋼塊を特殊溶解設備で再溶解して製品内部の清浄度や均質性を高めることで、航空エンジンや半導体製造装置等さまざまな厳しい使用環境に対応できる製品。カーボンニュートラルやデジタル社会の実現に貢献する製品であり、今後ますます需要が高まることが予想される。

 今回の投資は、これらの製品の供給を安定化させるとともに同社製品の高級鋼化へのシフトを加速させることとなり、社会への貢献と同社事業の安定化に寄与するもの。

<用語解説>

※ニッケル基合金:ニッケルを主成分とする合金で、優れた耐熱性、耐食性を有する合金で、石油、化学、航空エンジンや発電用タービンなどの分野で主に使用される。

※クリーンステンレス:SUS316の化学成分規格内でありながら、真空誘導溶解と真空アーク再溶解を施すことで超清浄度化を実現、清浄性が求められる半導体製造装置や医療関連設備などに主に使用される。

※真空アーク再溶解炉(VAR):一次溶解(電気炉・真空誘導炉)で溶解・造塊した鋼塊を消耗電極として通電、高真空下でアーク発熱により溶融、鋼中のガス成分を低減しながら消耗電極内の介在物を浮上促進させ除去。さらに急速冷却により均質な組織を得る溶解設備。

※真空誘導炉(VIM):誘導加熱を利用した電気炉で、ニッケル基合金をはじめとする高純度金属や高級合金の溶製に用いられる溶解設備。上述の25トンは1回の溶解量を指し、設備の大きさの規模を表す。

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