・マクドノフ・アトキンソン発電所のGTCC発電設備で成功
・三菱重工の先進ガスタービンを用いて水素燃料で稼働、M501G形でドライ式低NOx燃焼器により実施
・既存火力発電インフラの活用により、ジョージア・パワーにおける脱炭素化のさらなる推進に貢献
・水素混焼20%でも天然ガスと同水準の温度・排ガス・保守影響での安定燃焼を検証、CO2排出を約7%削減
三菱重工業は6月16日、グループの米国現地法人である三菱パワーアメリカ(Mitsubishi Power Americas, Inc.)が、米国の電力会社であるジョージア・パワー(Georgia Power)および電力研究所(The Electric Power Research Institute:EPRI)とともに、ジョージア州スミュルナ(Smyrna)市にあるマクドノフ・アトキンソン(McDonough-Atkinson)発電所で、M501G形天然ガス焚きガスタービンを使い、部分負荷および全負荷の両条件下において、水素と天然ガスの混合燃料による燃焼実証試験に成功したと発表した。この一連の実証試験は、高効率・大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備で初めて行われた20%(注)の水素混合燃料による燃焼実証であり、この種の試験としては史上最大規模のものとなる。20%の水素混合燃料を使うことで、天然ガス燃焼時に比べてCO2排出量は約7%削減される。
ジョージア・パワーは、サザン・カンパニー(Southern Company)グループ最大の電力子会社で、2007年と比較して既に60%以上のCO2排出削減を実現している。今回の画期的な実証試験には、未来のエネルギーグリッドを構築して運営発電施設全体のCO2排出削減を強化する取り組みの一環として、三菱重工との協力により臨んだもの。
マクドノフ・アトキンソン発電所は、州都アトランタの中心街から約15kmの距離に位置し、過去80年あまりにわたり電力を供給してきた。2012年には天然ガス焚きに全面転換され、170万世帯に電力供給できるように拡張されている。現在、1系列あたりM501G形ガスタービン2台と蒸気タービン1台から構成されるGTCCユニット3系列が稼働中。
三菱重工は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業を通じた成果を活用して、26万5,000kW のM501G形ガスタービンの水素混焼実証試験を完了した。ドライ式低NOx (Dry Low NOx:DLN、NOx:窒素酸化物)燃焼器による水素混焼では、天然ガスと同等のタービン入口温度を維持し、エミッションも規定範囲内、かつメンテナンス間隔への影響を及ぼさずに水素20%の混焼に成功したもの。また、水素20%混焼により、エミッション規定を遵守しつつ運転できる最低負荷を下げる効果も確認した。
三菱重工では、このプロジェクトにおいてエンジニアリング、計画立案、水素混合燃焼装置・機器の提供、運転制御、試運転、ならびにリスク管理を担った。同プロジェクトは、三菱重工がこれまで培ってきた水素燃焼の経験に加え、高砂製作所(兵庫県高砂市)にてDLN燃焼器による100%水素専焼に向けた技術開発をたゆまず推進している成果の結集で成り立っている。高砂製作所では、ガスタービンの開発、設計、製造および実証が行われ、三菱重工はこのほど、世界初の水素関連技術の実証設備である「高砂水素パーク」を整備することを発表した。この総合力を活かし、信頼性の高いカーボンフリー発電技術・製品の実用化に取り組んでいる。
ジョージア・パワーで上席副社長兼シニア・プロダクション・オフィサーであるアレン・リーブス(Allen Reeves)氏は次のように述べている。「今回のマクドノフ・アトキンソン発電所での大規模水素実証プロジェクトは、当社およびサザン・カンパニーが、どのように未来のエネルギーを構築していくのかを示すものです。この実証は、既存のインフラをクリーンに長く利用していく上で有意義なもので、当社が投資を行うことで、クリーンで安全かつ信頼性の高い、手頃な価格のエネルギーをお客様に提供し続けることができます。エネルギー業界全体の脱炭素化推進にもつながる取り組みにおいて、パートナーである三菱パワーアメリカとともに重要な役割を果たすことができたことを誇りに思います」。
三菱パワーアメリカの副社長兼最高執行責任者であるマーク・ビソネット(Mark Bissonnette)氏は次のように述べている。「当社は、発電および蓄電技術に関するソリューションをお客様に提供し、気候変動への対応や人類の繁栄に貢献することを使命としています。マクドノフ・アトキンソン発電所での水素混焼実証プロジェクトは、業界全体でネットゼロの目標達成へと近づくものです。お客様やパートナーとともに、Change in Power(電力の変革)を生み出しています」。
このプロジェクトの技術コンサルタントは、業界で主導的地位にあるサザン・カンパニーの研究開発組織が務めた。同チームは、低炭素水素発電、生産、輸送、インフラ、エネルギー貯蔵に焦点を当てた研究に国内外で取り組んでいる。サザン・カンパニーは、米国エネルギー省と協力して水素経済のバリューチェーン全体をカバーする実証を主導しており、水素技術が持続可能なエネルギーの未来を実現するための絶好機を到来させるとの確信を抱いている。
今回のプロジェクトを支援したEPRIは、世界有数の独立した非営利エネルギー研究開発組織で、このようなプロジェクトや低炭素資源イニシアティブのようなプログラムを通じて、思想的リーダーシップと技術的専門知識を提供している。EPRIの研究者らはこの試験に参加しており、同組織はこの夏、試験およびその結果に関する詳細なレポートを公開する予定。
EPRIでエネルギー供給・低炭素資源担当副所長を務めるネヴァ・エスピノザ(Neva Espinoza)氏は次のように述べている。「今世紀半ばまでにネットゼロ目標を達成するためには、低炭素技術開発の加速が不可欠です。今回の水素実証試験の成功は、これらの低炭素技術が経済全体の脱炭素化を実現するために担う上で、画期的かつ重要な役割を強めていきます。ジョージア・パワーおよび三菱パワーアメリカとの協業は、ネットゼロの目標達成を後押しするものです」。
三菱重工グループは、カーボンニュートラル社会の実現に向け、エナジートランジション戦略を推進しており、その一環で水素の製造から利用までのバリューチェーン構築を視野に水素関連技術の深耕に力を注いでいる。今回のプロジェクトも弾みとして、グローバル展開をさらに加速していく。
水素混合比率は体積比で表示しています。
■三菱重工グループについて
三菱重工グループは、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして、 1884年の創立以来、 社会課題に真摯に向き合い、人々の暮らしを支えてきました。
長い歴史の中で培われた高い技術力に最先端の知見を取り入れ、カーボンニュートラル社会の実現 に向けたエナジートランジション、 社会インフラのスマート化、サイバー・セキュリティ分野 の発展に取り組み、 人々の豊かな暮らしを実現します。
ニュースリリース
*リリース内容から一部「ですます調」で表記しています。