島津製作所、セラミックス製造向けの過熱蒸気脱脂炉「DSFシリーズ」を国内外で発売

・セラミックス製造工程を従来比約50%まで省エネ化
・過熱蒸気脱脂炉「DSFシリーズ」を発売

 ㈱島津製作所は5月24日、セラミックス製造向けの過熱蒸気脱脂炉「DSFシリーズ」を国内外で発売すると発表した。

 セラミックス製造では「脱脂」工程に多くの時間とエネルギーを必要としている。同製品は「脱脂」工程において、処理時間と消費電力を従来比で約50%に削減する。島津製作所は製品の市場投入によって、カーボンニュートラルに向けた製造業の生産改革に貢献していく。

 セラミックスの製造工程は原料の混合、乾燥、成形、脱脂、焼結からなります。「脱脂」とは、成形に用いるバインダーと呼ばれる接着剤を加熱して取り除く工程。「脱脂」工程は、「成形した材料を高温・長時間で加熱する必要があり生産性が悪く、排ガス処理も含めたエネルギー消費量が大きい」「製造工程の多くが勘や経験に基づくことから属人的で、最適化が難しい」といった課題があった。

 同製品は過熱蒸気を利用した脱脂炉で、過熱蒸気発生器、脱脂炉本体、排ガス処理用燃焼器から構成される。過熱蒸気とは、飽和蒸気(100℃)をさらに高温にした無色透明のH2Oからなる低酸素状態の気体で、熱容量が大きく非常に高い熱伝導性を持つ。食品業界などでは加工・焼成・乾燥手法として200℃〜300℃の過熱蒸気が活用されているが、セラミックス製造工程ではより高温の過熱蒸気が必要なことから応用が進んでいなかった。島津製作所はより高温・大流量の過熱蒸気を炉内へ導入する技術を開発し、セラミックス脱脂への応用を可能とした。この技術によりバインダー除去に要する処理時間を従来比約50%に削減する。加えて独自開発の排ガス処理用燃焼器により排ガス処理の消費電力を大幅削減し、脱脂工程の消費電力を約50%低減できる。また、炉内の脱脂状況を可視化する業界初のガスモニターでガス発生量を監視し、急過熱によるセラミックスの損傷を防ぎつつ高速脱脂が可能。さらに、製造条件と装置の運転情報を関連付けて管理することで、マテリアルズ・インフォマティクス(情報科学を用いた効率的な材料の探索・研究開発)やプロセス・インフォマティクス(情報科学を用いた製造法の探索・最適化)に活用することもできる。

 セラミックスは自動車・半導体などで広く使用されており、今後も市場拡大が見込まれている。島津製作所は、従来から手掛ける焼成炉に加え、過熱蒸気脱脂炉「DSFシリーズ」の投入により、セラミックス製造工程での生産性向上と省エネに貢献している。

 併せて島津製作所では、セラミックス製造企業の生産性向上支援を目的に、製品を使用したサンプルテストやセラミックス製造に関する技術相談を受け付けている。

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