・建設機械用油圧機器含むHC事業は27.2%増の1,416億円
KYBが5月13日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、主要需要先である自動車及び建設機械市場が前年度に比べて需要が回復したことから、売上高は、3,884億円(前年度比18.4%増)となった。需要の回復による売上増や、免震・制振用オイルダンパーの製品保証引当金について取崩を行った影響等により、営業利益は300億1百万円(同63.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、225億49百万円(同31.6%増)となった。
2021年度における世界経済は、新型コロナウイルス・ワクチン接種の進展や各国の経済活動再開政策により、全般的には回復基調で推移したが、原材料価格の高騰、半導体の供給不足、コンテナ不足による物流混乱、ウクライナ情勢悪化等の下振れリスクも顕在化した。また、わが国経済においても世界経済に遅れて景気回復の兆しが見られたものの、資源高や大幅な円安が重しとなり、将来予測は困難な状況。
■セグメント別の業績
<AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業セグメント>
同セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されている。
i) 四輪車用油圧緩衝器:四輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞からの回復により、売上高は 1,692億円と前連結会計年度に比べ5%の増収となった。
ii) 二輪車用油圧緩衝器:二輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞からの回復により、売上高は349億円と前連結会計年度に比べ7%の増収となった。
iii) 四輪車用油圧機器:パワーステアリング製品を主とする四輪車用油圧機器は、電動パワーステアリングの販売減少により、売上 高は239億円と前連結会計年度に比べ3.5%の減収となった。
iv) その他製品:ATV(全地形対応車)用機器を中心とするその他製品の売上高は49億円となった。
以上の結果、同セグメントの売上高は2,328億円となり、営業利益は165億27百万円(営業利益率7.1%)となった。
<HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業セグメント>
同セグメントは、産業用油圧機器、システム製品、その他製品から構成されている。従来、「システム製品」については報告セグメントとしていたが、KYBグループ再編に伴いセグメント管理区分の見直しを行った結果、2021年度より「HC事業」に含めて開示している。
i) 産業用油圧機器:建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞からの回復 により、売上高は1,287億円と前連結会計年度に比べ8%の増収となった。
ii) システム製品:舞台機構、艦艇機器、免制振装置を主とするシステム製品の売上高は46億円と前連結会計年度に比べ7%の減収となった。
iii) その他製品:鉄道用アクティブサスペンションシステム及び緩衝器を主とするその他製品の売上高は82億円と前連結会計 年度に比べ11.5%の増収となった。
以上の結果、同セグメントの売上高は1,416億円となり、営業利益は166億53百万円(営業利益11.8%)となった。
<航空機器事業>
同セグメントは、航空機器用離着陸装置、同操舵装置等から構成されている。航空機器事業は、売上高は37億円と前年度に比べ5.2%の減収となり、営業損失は40億61百万円となった。
<特装車両事業、電子機器等>
同セグメントは、特装車両及び電子機器等から構成されている。
i) 特装車両:コンクリートミキサ車を主とする特装車両の売上高は92億円と前連結会計年度に比べ5%の増収となった。
ii) 電子機器等:電子機器等の売上高は11億円と前連結会計年度に比べ3%の増収となった。
以上の結果、同セグメントの売上高は103億円となり、営業利益は8億99百万円(営業利益率8.7%)となった。
■今後の見通し
今後の世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学的リスクの高まり、原材料や物流費高騰によるコスト増等、厳しい経営環境が続くものと予想される。KYBグループを取り巻く環境では、グローバルでの需要回復を見込んでいる一方、減産リスクや原材料および輸送費の高騰などが懸念されており、予断を許さない状況が続くものと見込まれる。
四輪車用油圧緩衝器を中心としたAC事業は、新型コロナウイルス感染症や世界的な半導体不足による減産影響を見込んでいるが、今後も緩やかな回復が続くと想定されることから、2022年3月期比で増収を予想している。
また、建設機械用油圧機器を中心としたHC事業においては、北米・アジア・日本といった地域では2021年度の勢いを維持するものの、市況の低迷が続く中国や、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けるロシア・CISで大幅に減少し、欧州にも影響があると見込んでいることから、2022年3月期(2021年度)比で減収を予想している。
2023年3月期(2021年度)の連結業績見通しは、売上高4,100億円(前期比5.6%増)、営業利益265億円(同11.7%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益180億円(同20.2%減)。
業績予想における為替レートについては、1USドル120円、1ユーロ130円を前提としている。
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