・営業利益は30.8%増の16億3,500万円
東京計器が5月13日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、売上高は、415億1,000万円(前期比1.4%減)、営業利益は16億3,500万円(同30.8%増)となった。船舶港湾機器事業、油空圧機器事業、流体機器事業、その他の事業が増収だったものの、防衛・通信機器事業において、防衛事業が2021年度まで案件の谷間であったことから大きく減少となり、全体として減収となった。一方で、主要事業において原価率が改善したことを主因に、営業利益は前期比で大きく増加し、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は14億9,300万円(同58.1%増)となった。
■経営成績の概況
2021年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の普及による行動制限の緩和に伴う経済活動の進展や、各国の金融・財政政策の実施により、景気の回復がみられた。一方で、長期化する半導体をはじめとする部品供給不足や原油・原材料価格高騰などサプライチェーンの混乱に加え、ウクライナ情勢の悪化や、各国のインフレ高進と政策金利引き上げ、中国での「ゼロコロナ政策」の長期化が、さらに不確実性を招き、先行きは不透明な状況となった。我が国経済においては、新型コロナウイルス感染者数が減少し、景気の持ち直しがみられたものの、新たな変異株による感染拡大や、長期化するサプライチェーンの混乱、円安の進行など、依然として不透明な状況となった。
このような経営環境の下、東京計器グループは、2021年6月に開示した「東京計器ビジョン2030」における中期事業計画の基本方針である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」に取り組んできた。
「事業領域の拡大」については、防衛・通信機器事業において、東京計器のコア技術の一つであるマイクロ波応用技術により開発した、国産小型SAR衛星に搭載するマイクロ波増幅器の量産を進めた。
「グローバル化の推進」については、防衛・通信機器事業において、沿岸監視用高分解能半導体レーダーSeaKuを海外向けとして欧州に初めて納入・設置した。更に、この納入に続き欧州向け河川監視用のリバーレーダーでも採用が決まるなど、海外への販売を推進した。
「既存事業の継続的強化」については、船舶港湾機器事業において、在来船市場での売上増・シェアアップのための戦略製品となる新型電子海図情報表示装置(ECDIS)の開発を進め、2022年度期初からの販売を開始している。
■セグメント別の業績
〔船舶港湾機器事業〕
<売上高の状況> 国内商船市場及び東アジアを主とした海外市場で、新造船向け機器販売と保守サービスが堅調に推移した結果、売上高は前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 原価率の改善及び為替が円安に推移したことより、営業利益は前期比で増益となった。
<新製品の状況> 商船市場向けに、センサー部に定期交換の必要な可動部分が無い、光ファイバージャイロコンパスTF-900を、市場投入した。
〔油空圧機器事業〕
<売上高の状況> 自動車関連設備需要が回復したプラスチック加工機械市場が好調に推移したほか、国内外、特に中国で需要が回復した工作機械市場、国内需要が回復基調の建設機械市場と海外市場が堅調に推移した結果、売上高は前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 原材料価格高騰の影響を受けましたが、生産増に伴い原価率が改善し、損失額が前期比で大幅に縮小した。
<新製品の状況> 油圧装置向けに国産初となる高精度円ギア容積流量計 GMシリーズや、バルブ制御の調整が容易かつ再現性が高い特長を持つ比例弁コントローラVAシリーズを、市場投入した。
〔流体機器事業〕
<売上高の状況> 官需市場は、主力の超音波流量計の販売が好調に推移した。消火設備市場は、立体駐車場向けに加え、「ガス系消火設備の容器弁の安全性に係る点検」に基づく部品販売及び交換工事も好調に推移した結果、売上高は前期比で増収となり、過去最高となった。
<営業利益の状況> 売上高の増加により営業利益は前期比で増益となり、過去最高となった。
<新製品の状況> 主に官需市場向けの戦略製品として、高精度かつメンテナンスが容易な高精度超音波流量計UFR-300のシリーズ品を拡大し、市場投入した。
〔防衛・通信機器事業〕
<売上高の状況> 半導体製造装置向け機器の納入が増加するとともに、海上交通機器の海上保安庁向けVTSシステムの納入があったものの、防衛事業が案件の谷間で戦闘機用レーダー警戒装置や哨戒ヘリコプター用逆探装置の納入が減少した結果、売上高は前期比で減収となった。
<営業利益の状況> 売上高の減少により、営業利益は前期比で減益となった。
<新製品の状況> 海外向け戦略製品として、沿岸監視用高分解能半導体レーダーを欧州市場向けにシリーズ品を拡大し、市場投入した。
〔その他の事業〕
<売上高の状況> 鉄道機器事業で主力の超音波レール探傷車の納入が減少したものの、検査機器事業の更新需要が当期に回復基調となった結果、売上高は前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 鉄道機器事業の機器納入の減少による原価率の悪化により、営業利益は前期比で減益となった。
<新製品の状況> 鉄道保線市場向けに従来機より小型軽量化した分岐器検査装置SPG-7を、検査機器市場向けにフィルム素材の傷などを判別する能力を向上させた素材検査装置M-CAP V2を市場投入した。
■今後の見通し
次期(2023年3月期)については、新型コロナウイルス感染症再拡大の懸念が残る中で、ウクライナ情勢の悪化、サプライチェーンの混乱やエネルギー価格高騰、インフレ高進、円安の進行、中国での「ゼロコロナ政策」の長期化など不確実性が継続している。
このような経営環境の中、次期の見通しについては、船舶港湾機器事業において、新造船向け機器の需要が堅調になったことや、油空圧機器事業が引き続き各市場で需要の回復が見込まれること、流体機器事業が引き続き好調な需要が見込まれること、防衛・通信機器事業で防衛事業の戦闘機用レーダー警戒装置や哨戒ヘリコプター用逆探装置の納入による売上増が見込まれること、その他の事業の鉄道機器事業で主力の超音波レール探傷車の納入による売上増が見込まれることから下記の通り増収・増益を予想している。
売上高454億円(前期比9.4%増)、営業利益18億5,000万円(同13.2%増)、経常利益21億円(同9.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益21億円(同3.8%増)。
なお、足元で生じている部材入手難や原材料価格の高騰等が業績に与える影響については、現時点で想定されるものを一定程度織り込んでいるが、引き続き部品の早期調達や価格転嫁等、必要な対策を講じることで、業績への影響を最小限に留めるべく対応していく。今後、開示すべき事項が生じた場合には速やかに開示する。
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