ヤマシンフィルタ、21年度売上は29%増の188億円、22年度予想は5.4%減の178億円

 ヤマシンフィルタが5月13日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、売上高は188億21百万円(前年同期比29.0%増)となり、営業利益は13億44百万円(前年同期は1億45百万円の営業損失)、経常利益は13億17百万円(前年同期は1億35百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は47百万円(前年同期比93.7%減)となった。

 ヤマシンフィルタ2022年3月期データ

■連結会計年度の概況

 2021年度(2021年4月~22年3月)における世界経済は、各国において経済活動の再開による回復が進む一方で、コロナウイルス変異株の感染再拡大懸念や、ロシア、ウクライナ情勢の深刻化による、エネルギー・原材料価格の急騰や物流コストの更なる上昇、急速なインフレ圧力に伴う金融市場の変動など、依然として先行きの見通せない状況が継続している。このような環境の中、主力事業である建機用フィルタ事業においては、各国経済の回復に向けたインフラ投資や資源需要の増加に伴い、中国市場を除く主要地域において、建機の稼働時間と新車需要は高い水準で推移しており、2021年度の売上高は増加した。しかし、利益面では、世界的なコンテナ船の需要急増に伴う海上輸送費の高騰やその代替輸送手段としての航空費用の増加及びアルミや鋼材等の主要原材料価格の高騰により増益幅が減少した。

 また、2021年度において、同社は、引き続きロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を進めており、各建機メーカの新機種への製品供給が開始されている。さらに、主要市場である北米市場においては、世界最大手建機メーカに対する同社の燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規提案・採用が進展し、中国市場においては、排ガス規制の導入を背景に、中国系建機メーカへのリターンフィルタ製品を主軸とした同社フィルタ製品の新規採用実績は増加している。

 このような事業環境下で、本業である建機用フィルタ事業においては、開発技術力を活かした新製品の販売拡大やシェア拡大による事業の安定化と更なる成長が見込まれる。一方、減益要因となっている物流コストや原材料価格の高騰、為替変動に対しては、サプライチェーンの見直しや生産地移管による安定した生産供給体制の構築を図るとともに、決済通貨の見直しによる為替マリーの強化を図り、収益性の改善に努めていく。

 エアフィルタ事業においては、ビル・工場用エアフィルタの交換需要の低迷などにより減収減益となったが、経済活動の回復に伴いビル空調用フィルタ需要は回復傾向にあり、また、新規物件の着工件数の増加により収益の改善が見込まれる。また、新たにロングライフであり低圧損、高捕集率のナノファイバー製エアフィルタ(製品名:NanoWHELP)や溶菌・酵素エアフィルタの、オフィスビルや病院、工場、鉄道車両等への採用に向けた取り組みを加速させるとともに、欧米市場でのエアフィルタ性能の規格(米国規格ASHRAE、欧州規格EN等)を取得し、海外市場の開拓にも取り組んでいく。

 ヘルスケア事業においては、大幅な事業環境の変化に対応するため、抜本的な事業構造改革として、減損損失9億19百万円を特別損失として計上したことにより、通期では大幅な減収減益となったが、第4四半期においては、商流の見直しや不採算製品のリストラを実行し、営業利益の確保を実現した。

■今後の見通し

 2023年3月期の取り巻く、建機用フィルタ事業においては、世界最大の市場である中国においては、市況の低迷により新車の販売台数は前年度を下回る見通しである一方、日本、北米、欧州、アジアといった各市場における建設機械市場の需要見通しは、一部欧州市場においてロシア、ウクライナ情勢の深刻化による影響が懸念されるものの、全体では引き続き堅調に推移する見通し。

 一方、サプライチェーンの混乱による物流コストや資材価格の高騰については依然として終息のめどが立たず、先行き不透明な状況が継続している。

 2023年3月期の建機用フィルタ事業の見通しについては、このような事業環境と同社の取り組みを踏まえ慎重に考慮し、海上輸送費や航空運賃の大幅な高騰や、アルミや鋼材を中心とした主要原材料価格の高騰が、当面の間継続して発生することを前提として保守的な見地から作成しており、今後の業績にマイナスの影響が大きく見込まれることから、減収減益となる見通し。

 しかし、同社はこのような外部環境の変化によるリスクへの対策として、サプライチェーンの見直しや生産地移管による安定した生産供給体制の構築を図るとともに、為替や原材料調達における効果的な取引を実施し、為替や原材料調達の安定化を図ることで、収益性の改善に努めていく。

 エアフィルタ事業においては、既存製品の交換需要の回復に加え、ナノファイバー製エアフィルタをはじめとした高付加価値製品ラインナップの展開により、新規取引として、オフィスビルや工場、鉄道車両等への採用に向けた取り組みが進展している。また、利益面では基幹システムの導入により原価管理体制の強化を図ることで、収益性の改善が見込まれることから増収増益となる見通し。

 ヘルスケア事業においては、今後、市場規模の大幅な縮小が見込まれる家庭用マスク市場において、2021年度(2022年3月期)において、減損処理や商流の見直しをはじめとした事業構造改革の実施により、販売量の減少が見込まれる中でも営業利益の確保が図れる体制を構築した。しかし、連結上の収益に与える影響額は極めて軽微であることから、ヘルスケア事業としての独立したセグメント開示から、建機用フィルタ事業の製品群に含めて開示する。

 2023年3月期(2022年度)連結業績予想については、以上の状況を踏まえ、以下のとおりとした。

 売上高178億円(前年同期比5.4%減)、営業利益7億円(同47.9%減)、経常利益6億50百万円(同50.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4億58百万円(同872.5%増)。

 業績見通しにおける為替レートは、1米ドル122円、1ユーロ137円を前提としている。

 ヤマシンフィルタの2022年3月期決算短信

 決算説明資料