㈱アマダが5月13日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、売上収益312,658百万円(前期比 24.8%増)となった。このうち、国内は126,954百万円(同12.5%増)、海外は185,704百万円(同35.0%増)となった。営業利益は、部品・材料価格高騰の影響は見られたものの増収及び操業度向上、販売価格の改善に伴う売上利益増加に加え、為替の円安推移等により、38,538百万円(同44.3%増)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は27,769百万円(同49.6%増)となった。
2021年度における世界経済は、新型コロナワクチンの普及や政府の財政政策、中央銀行による金融緩和等により、先進国を中心に回復を示し、同様に設備投資についても大きく改善したが、変異株の出現や部品・材料の供給制約の問題などの経済影響が顕在化する中、ロシアのウクライナ侵攻といった地政学的問題も生じるなど、年度末にかけて、経済成長に減速感が見られた。
■事業別・地域別の概況
①金属加工機械事業
売上収益は255,892百万円(前期比26.0%増)、営業利益は31,176百万円(前期比45.4%増)。
<板金部門>
日本:日本経済は、外需の回復等により企業活動の正常化が進む中、製造業の業況も回復基調を示し、機械受注も新型コロナウイルス感染拡大前の水準並に推移している。アマダにおいても補助金の後押しも受 け、半導体製造装置や産業機械などの一般機械関連や5Gの展開を背景としたOA・コンピュータ機器や通信機器、その他医療機器など、様々な業種で受注が拡大した。このような受注環境の中、売上収益については、供給制約による生産の低下に加え、比較的納期の長い政府補助金を利用した受注も多く見られたため、88,994百万円(前期比11.4%増)となった。
北米:米国経済は、年度前半の政府による財政政策や金融緩和、ワクチン接種の進展などにより新型コロナウイルス感染拡大前の水準に拡大しており、鉱工業生産指数や製造業新規受注指数が高水準での推移を続 けるなど、設備投資も概ね堅調に推移した。アマダにおいても企業の設備投資意欲が高まる中、 自動化商品の需要拡大を背景に販売が増加し、売上収益は59,450百万円(前期比33.4%増)となった。
欧州:欧州経済はワクチン接種が進む中、各国のGDPも回復が見られた。ユーロ圏の鉱工業生産指数も 概ね拡大傾向であり、PMI(購買担当者景気指数)についてもオミクロン株の感染急拡大や供給面の制約の見られた年度末にかけて下がったものの、50を優に超える水準で推移した。このような中、 アマダにおいても、水素エネルギー関連やEVの充電ステーション、半導体製造装置、医療機器、農機具等が需要を牽引したことで、イギリス・フランス・イタリア・ドイツ等の各主要市場で大幅増収となっ たことから売上収益は50,704百万円(前期比46.1%増)となった。
アジア他:最も大きい市場である中国では、いち早くコロナ危機から回復し、EV・新電力関連や医療機器などで需要の増加が見られたが、年度後半からのオミクロン株によるロックダウン等の影響を受け、販売 は小幅増となった。一方でインドでは、ロックダウン等の経済制約の緩和以降、EV等の輸送機器 関連や機械カバー等の一般機械関連が好調に推移し、韓国では、世界的な半導体等の需要拡大を背景に 輸出が好調に推移し、半導体製造装置や電子機器関連向けを中心に販売が大幅に増加した。ASE AN域内では、マレーシアにおいて、政府主導の電気電子産業等の外資製造業誘致も多く見られ、電子部品や半導体製造装置関連向けの販売が大きく拡大した。以上より、アジア他地域全体としての売 上収益は30,460百万円(前期比33.8%増)となった。
<微細溶接部門>
全地域で増収だったが、特に韓国や中国などでは主力のリチウムイオン電池関連の好調が寄与した。また 北米や欧州では、医療機器関連向けの販売が好調に推移した。
②金属工作機械事業
売上収益は55,513百万円(前期比20.2%増)、営業利益は6,676百万円(前期比85.0%増)となった。
<切削・研削盤部門>
国内では自動車関連向けの販売は低調に推移したものの、建設機械や工作機械等向けに切削マシンの販売が拡大した。北米で建築関連向けの販売が好調に推移するなど、海外においても販売が大幅に増加した。
<プレス部門>
国内では、主力の自動車関連業界において、半導体等の供給制約を起因とする自動車の減産・生産調整によって、顧客の設備投資意欲にも停滞感が見られたが、環境機器等の家電関連向けの販売が好調に推移するなどにより、増収となった。
■今後の見通し
今後の世界経済は、長引く供給制約や部材、資源価格の高騰、これを起因としたインフレ抑制のための主要国での利上げの対応動向などに加え、ロシアのウクライナ侵攻の長期化の懸念もあり、先行き不透明な状況が続くこと が見込まれる。
このような経営環境の中、次期のアマダグループの業績については、過去最高の受注残高に加え、需要環境も好調を維持しているが、部材不足に伴う供給制約が続くことや部材、輸送コストの高騰の影響、マクロ環境の先行き不透明感による設備投資マインド低下のリスクを見込み、現時点では次のとおり見込んでいる。
2023年3月期の連結業績見通しは、売上収益3,400億円(前期比8.7%増)、営業利益460億円(同19.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益320億円(同15.2%増)。
為替レートは、1米ドル=120円、1ユーロ=130円を前提としている。
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