オークマが5月12日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、受注額は2,152億82百万円(前期比73.3%増)、売上高は1,728億9百万円(同40.0%増)、営業利益は144億62百万円(同200.0%増)、経常利益は155億77百 万円(同185.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は115億79百万円(同454.5%増)となった。
■経営成績の概況
2021年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残り、一部の国や地域、産業で弱さが見られたものの、総じて回復基調で推移した。他方、原油を始めとする資源価格の高騰や半導体を中心とする調達問題の長期化は、 景気や企業活動の重石となり、また2022年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻以降、世界経済の見通しは一気に 不透明感が増した。
工作機械の需要はV字回復となり、堅調に推移した。経済活動の再開に伴い抑制されていた需要が発現したほか、高まる自動化・省人化のニーズ、そしてデジタル化や脱炭素の潮流も相まって急速に拡大し、欧米を中心とした 海外景気の回復とあわせ、工作機械の需要は急回復した。加えて地政学的リスクやコロナ禍を契機としたサプラ イチェーンの再編、製造拠点の再配置の動きが工作機械の需要拡大に繋がりました。他方、電子部品を中心とした調達問題は、当期を通じて生産面や販売面に影響を及ぼした。
市場別の動向についてはは、米国市場は、自動車、建設機械、農業機械、産業機械等、多くの産業で設備投資の動きが広がり、需要は堅調に推移した。半導体製造装置関連、民間航空・宇宙関連、資源・エネルギー関連、医 療関連においても設備投資を本格化させる動きが見られた。設備投資は中・小規模事業者にも裾野が広がり、工 作機械の需要の回復は大きく進んだ。
欧州市場では、経済活動の正常化等を背景に、自動車関連、産業機械を中心に工作機械の需要回復が進んだ。南欧諸国においてもEU復興基金等、経済対策の後押しもあり、設備投資の活発化が進んだ。また東欧、トルコ等 の周辺国においては、航空機、農業機械、大型車両等の大手企業からの受託加工で大規模な設備投資が見られ、サプライチェーンの再編を想起させる動きもあった。ロシアのウクライナ侵攻以降では、一部に様子見が見られ たが、総じて堅調さを維持した。
なお、経済産業省は2022年3月に高精度なNC工作機械のロシアおよびベラルーシ向け輸出を禁止したが、ロシア経済の低迷等により両国からの受注は低い水準で推移しており、 業績に与える影響は極めて限定的なものに留まった。
中国市場では、建設機械関連に一服感が見られたものの、自動車関連、自動化関連、産業機械関連からの需要は拡 大基調で推移した。風力発電等の環境関連分野の設備投資は続き、またEV関連では、当期後半以降、大手メーカーで大規模な設備投資に踏み切る動きが見られ、こうした新たな需要に対して、オークマのソリューション提案、高精度・高生産性の機種提案により大型の受注を確保した。更に中・小規模事業者へ需要の裾野は広がりを見せた。
中国以外のアジア市場では、新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が停滞する中、工作機械の需要は一進 一退しながらも、緩やかな回復傾向になった。
国内市場では、半導体製造装置関連からの旺盛な需要が続く等、拡大傾向で推移した。自動車関連では、部材調達問題に伴う完成車メーカーの減産の影響が一部で見られ、またEV向けの設備投資も限定的な動きに留まったが、需要は回復基調で推移した。他方、建設機械、油圧・空圧機器、産業機械等に設備投資の動きが広がる等、 補助金効果もあって国内の需要は堅調に回復した。
■今後の見通し
今後の世界経済については、ウクライナ危機を契機とした資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱によって、グローバル経済の減速が見込まれる。他方、工作機械の需要動向については、労働力不足や本格化する脱炭素社会への移行等の社会課題に対応するため、自動化・無人化システムの導入、再生可能エネルギーの社会インフラ構築、そしてEV化や脱炭素化等の設備投 資は不可避であり、また半導体等の調達リスクや地政学的リスクの回避に向けたサプライチェーンの再編・多極化の 動きは続き、需要の分散・増加が見込まれる。
こうした中、工作機械の需要は国、地域、業種等によってまだらな がらも、底堅く推移するものと思われる。このような社会変化、経営環境の変化が見込まれる中、オークマグループは、これまで培ったスマートマシン、スマ ートマニュファクチャリング技術を土台に、自動化・無人化、工程集約、デジタル革新、ものづくりDX、脱炭素化へ の取り組みを進め、機械、制御、加工技術、システム構築等、エンジニアリングチェーンの全てに亘り、顧客と新 たな価値を創造する「総合ものづくりサービス」を展開する。うち製造面では、自社製工作機械、自動化ソリュ―ション・脱炭素ソリューションを軸に、生産効率の向上、生産革新、 そして脱炭素対応を図っていく。更に本社工場ではDream Site 2の更なる効率化を進め、可児工場ではマシニ ングセンタの生産能力増強を加速し、自己完結一貫生産体制の一層の強化を図っていく。
2023年3月期連結業績予想は、売上高2,100億円(前期比21.5%増)、営業利益240億円(同65.9%増)、経常利益245億円(同57.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益170億円(同46.8%増)。
コメントを投稿するにはログインしてください。