日立建機の平野耕太郎社長は5月10日、新年度メディア合同ミーティング(対面・オンライン併催)を開催し、2021年を振り返るととともに、建設機械の世界需要、ロシア及び中国事業の現況などについて概ね次のように語った。以下、順不同で内容を抜粋。
・・・・・2021年度業績を振り返って。
2021年度は、米州の独自展開と資本構成の変化・・・・・、日立建機としては非常に大きな変化があった年度だった。2022年度は、その大きく変化したことをベースにして、さらに飛躍する事業展開を図っていきたい。ただ残念なことに、ロシアのウクライナ侵攻であるとか、中国におけるゼロコロナ政策で、一部地域では部品が届かず滞っているとか課題も多い。そもそも中国の建設機械需要そのものも非常に厳しい状況になっているなど、難しい局面である。とはいえ、日立建機としては、2022年度業績計画をしっかりとまとめ上げられる基盤をつくっていきたい。
2021年度の業績は、材料費の上昇や、コンテナ不足で船積みができないなど、厳しい環境の中、1兆円以上を売り上げ、利益もしっかり出せた。もともと中期計画に打ち出していた形はできた。昨年発表したように、米ディアとの合弁を解消し、米州(北中南米)を独自展開するとことも決めた。
中期計画で目指してきた会社の形ができてきたと思う。売上と利益では若干見劣りする面はあるが、形はできた。今後、建機ビジネス全体は、アメリカを含めた全世界展開を進めることができる。
・・・・・昨今の為替変動についての対応は。
円安の効果は、決算会見で開示している。1ドル130円となってくると、業績にプラスとして効いてくるが、逆に円安によって輸入されてくるエネルギー、例えば石油、鉄鉱石、石炭など材料の価格も上がってくることが想定される訳だ。そこも含めて当社は輸入価格に跳ね返ってくることも想定している。売上と利益見通しについては、1ドル120円で設定しているので、130円では10円分売上・利益には寄与する。しかし、部品・資材など構成品の購入については逆にじわじわと効いてくる。
・・・・・地域別需要動向については。
まず欧州に関しては、足元の注文が多く需要は強い。ただ、ロシアのウクライナ侵攻を受け、資源価格が上昇し、後半、一番近い欧州市場に影響があるのではないかと想定している。もしこれが杞憂に終わって、いまのような非常に強い需要が続けば、しっかりと供給体制をつくっていくことになる。
マイニング(鉱山機械)の油圧ショベルとダンプトラックの需要状況は非常に良い。オセアニア、北米で顕著だ。4月の段階での受注残は、全体で60%ぐらい。油圧ショベルで55%、ダンプでは同65%、受注残は良い。それに加え、米州の受注が多く、2021年度の倍ぐらいになると考えている。米州については、新しく独自展開を始めたこともあり、しっかり製品をつくって出荷し、お客様に届けていく。
当社としては、2022年度の世界需要全体で前年比8%程度マイナスとみている。ロシアや中国を除いても去年と変わらないぐらいと想定している。これをベースにして売上収益見通しを出しているので、もし需要がプラスに転じれば、しっかり対応していきたい。
・・・・・ロシアでの事業については。
ロシアにおける工場の生産は、細々と続けている。3月以降、新規に部品を送っていないため、現地にある在庫部品を使って生産している。本来であれば、もっと作れるが、今の状況は本当に細々と作っている状況だ。今年度に売上計上している数字は、これまでに受注した受注残を消化する分である。
マイニング機械など、シベリアで使う特殊仕様(寒冷地対応)などもあり、納期も長い。今年度はその受注残をこなすことになる。いずれにしても新規の受注はとらないため、見積書を出すこともしない。ただ、現地代理店が修理・サービス契約していることもあり、動いている機械についての修理・サービスはメーカーの責任として対応する。撤退等については、いまのところ全く何も考えられないし、状況を注視すること以外にない。
・・・・・コンパクト製品の設備投資について。
コンパクト製品(ミニ及び小型ショベル)が世界中で大きく動き出している。今までは、バックホーローダー(インドを中心に世界でも多い機種)に代わってミニショベルが使われている。やはり世界的に都市化が進んでいることだろう。住宅、小規模道路などにコンパクト製品の需要が強く、さらに増えてきている。当社としてしっかりと対応していくため、設備投資を行った。ミニショベルは集中して作った方が、効率が良いため、日立建機ティエラ(滋賀県)での設備投資を決めた。また、北中南米では工場の候補地を調べているほか、日本でも生産工場、研究開発拠点の再編を検討している。
・・・・・中国のロックダウンの影響については。
中国の工場は、どちらかといえば順調に稼働している。少し問題が出てきているのは、物流が途絶えていること。部品によっては、手すりとか小物部品が入手できなくなっている。取引先(サプライヤー)が中国で作っていることもあり、ちょっとした物が入ってこない。それによって日本の工場の生産が止まってしまうようなことはないが、工程の段取りをやりくりしている。
中国の市場については、21年度・22年度も需要環境は厳しい。もともと、中国で生産した機械を仕様の合うものはアジアや中東向けなどに供給してきた。今後も生産拠点として活用していくつもりだ。そもそも、そういう考え方でやってきたので、粛々と生産していく。
<以下、参考>
2021年度(2022年3月期)決算関連ページ(日立建機2022年4月27日)
*そのほか、資本構成の変化、電動化については、下記の2021年度における会見記事を参照。
日立建機の平野社長が年末会見、当面は米州市場の独自展開が最優先 2021年12月20日
米ディア社との合弁・業務提携解消、日立建機の平野社長が会見 2021年8月20日
日立建機の平野社長、コロナ禍の需要動向や取り組み状況を語る 2021年5月10日
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