㈱タダノが4月28日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、この結果、売上高は2,056億6千1百万円(前期比110.5%)となった。うち日本向け売上高は、需要の増加に加え、収益認識に関する会計基準を適用した結果、建設用クレーンが増加したものの、車両搭載型クレーン・高所作業車は調達環境の悪化による出荷遅れもあり減少し、929億8千3百万円(前期比 99.7%)。海外向け売上高は、中南米を除く全ての地域で増加したものの、欧州において部品調達の遅 滞に伴う生産の遅れ等の影響もあり、1,126億7千8百万円(前期比121.5%)となった。海外売上高比率は54.8%となった。
売上の増加に加え、欧州事業再生手続きの効果による固定費の圧縮に伴う売上原価率の改善と販売費及び一般管理 費の圧縮等により、営業利益は52億5千1百万円(前期41億9千6百万円の損失)、経常利益は54億5千4百万円 (前期46億8千3百万円の損失)となった。親会社株主に帰属する2021年度純利益は、欧州事業再生関連収益等を計 上した結果、130億9千6百万円(129億8千7百万円の損失)となった。
2021年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、景気は厳しい状況が続いたが、10月には緊急事態宣言が解除され経済活動の正常化が進んだことにより、持ち直しの動きが見られた。海外においても、新型コロナウイルスの世界的感染拡大が進んだものの、先進国を中心としたワクチン普及により、経済活動が再開され、景気は回復基調が続いている。一方、世界的な半導体不足による調達環境の悪化、原材料価格の高騰に加え、ロシアによるウクライナ侵攻や中国におけるロックダウンなど、足許では先行き不透明な状況が深まっている。
タダノの関連業界は、日本では、大型公共工事を中心に比較的順調な稼働を背景として、需要も増加傾向にあるものの、全体として本格的な需要回復には至らなかった。海外需要は、ワクチン接種の広がりや経済対策が追い風となり、欧州を除いて増加した。しかし、調達環境の悪化による生産遅れなどが、需要拡大の重石となった。
このような経営環境の中、タダノグループは、調達環境悪化の影響を最小限に抑えるよう努めるとともに、販売価格の見直しや諸経費圧縮、棚卸資産の適正化に取り組む一方、環境にも配慮した製品を国内外で投入した。
一方、2018年1月19日に公表した米国排ガス規制の緩和措置に関する自己申告について、2021年1月、米国当 局(環境保護庁・司法省)から当社グループによる違反とそれに伴う民事制裁金(Civil Penalty)4,050万USドルおよびその他の合意条件について提案を受け、2021年3月期に4,050万USドルを引当計上した。当局との協議を継続する中、追加費用が発生する見込みが高くなったため、第3四半期に1,176万USドルを追加で引当計上した。なお、当局との協議は継続中であり、最終的に確定した段階において、改めて発表する。
■セグメント別状況(セグメント別とは、当社及び連結対象子会社の所在地別の売上高・ 営業利益であり、仕向地別売上高とは異なる)
1)日本(4月~3月):調達環境悪化の影響が比較的少なかった建設用クレーンは、需要の増加に加え、収益認識に関する会計基準を適用した結果、売上が増加した。一方、車両搭載型クレーン・高所作業車は調達環境の悪化とトラック登録 台数の減少による出荷遅れもあり減少したものの、売上高は1,367億5千1百万円(前期比109.3%)、営業利益 は122億4千1百万円(前期比148.0%)となった。
2)欧州(1月~12月):市場マインドは改善したものの、調達環境の悪化による生産の遅れ等の影響もあり、建設用クレーンの需要は前期を下回る中、売上確保に注力した結果、売上高は625億9百万円(前期比101.1%)となった。また、営 業利益は固定費の圧縮により94億8千9百万円の損失(前期は125億5千7百万円の営業損失)となった。
3)米州(1月~12月):建設用クレーンの需要が、年度後半から順調に回復し前期を上回る中、売上高は474億9千3百万円(前期比126.4%)、営業利益は16億6千4百万円(前期は2億3千8百万円の営業損失)となった。
4)その他(1月~12月):建設用クレーンの需要が拡大した豪州・アジアを中心に売上が増加し、売上高は215億5千5百万円(前期比157.2%)、営業利益は7億5千2百万円(前期比352.5%)となった。
■主要品目別の状況
1)建設用クレーン:日本向け売上は、需要の増加に加え、収益認識に関する会計基準を適用した結果、427億2千5百万円(前期比 107.8%)となった。海外向け売上は、中南米を除く全ての地域で増加し、877億3千6百万円(前期比125.7%)となった。この結果、建設用クレーンの売上高は1,304億6千1百万円(前期比119.2%)となった。
2)車両搭載型クレーン:日本向け売上は、トラック登録台数の減少が車両搭載型クレーンの販売にも影響し、168億1千5百万円(前期比93.8%)となった。海外向け売上は、14億3千6百万円(前期比103.1%)となった。この結果、車両搭載型クレーンの売上高は182億5千1百万円(前期比94.5%)となった。
3)高所作業車:高所作業車は、トラックをはじめとした調達環境の悪化による出荷遅れと機種構成の変化により、売上高は161億7千1百万円(前期比86.5%)となった。
4)その他:部品、修理、中古車等のその他の売上高は、407億7千7百万円(前期比105.7%)となった。
■次期の見通し
今後の経済見通しについては、新型コロナウイルスの感染拡大の防止策や、各種政策の効果により、持ち直しの動きが続くことが期待される。その一方、ロシアによるウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策、原材料価格の 上昇や調達環境の制約、各国の金融政策等、不透明な状況が深まっている。
タダノグループを取り巻く市場環境については、日本では、インフラ投資や国土強靭化に伴う災害対策などの大型工事を中心に建設用クレーンの高稼働が見込まれている。海外においても、原油をはじめとした資源価格上昇に伴うプロジェクト再開に加え、経済回復に向けた公共投資、クリーンエネルギー関連工事等により、需要回復の動 きが継続する見込み。
一方、不安定な調達環境がものづくりに与える影響や、更なる原材料価格の上昇等が懸念されるが、生産リードタイムの短縮や製品価格の見直し等で利益確保に努める。
また、将来の持続的成長に向け、電動化などの環境対応をはじめとした新製品開発やDX推進などの投資も併せて 進めていく計画としている。
タダノは、2022年6月24日に開催予定の第74回定時株主総会で「定款一部変更の件」が決議されることを条件として、 次期より決算期(事業年度の末日)を3月31日から12月31日に変更し、グループの決算期を12月31日に統一する予定。決算期変更の経過期間となる翌連結会計年度は2022年4月1日から2022年12月31日の9ヶ月間の変則的な決算となるので、2022年12月期の連結業績予想は9ヶ月間の予想数値。
2022年12月期の売上高2,050億円、営業利益45億円、経常利益38億円、親会社株主に帰属する当期純利益19億円。
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