コマツ、21年度売上は28%増の2兆8,023億円、22年度予想は7.1%増の3兆円

 コマツが4月28日に発表した2022年3月期(2021年度)連結業績によると、売上高は2兆8,023億円(前期比28.0%増加)となった。建設機械・車両部門では、前期における新型コロナウイルス感染症の影響が縮小し、一般建機・鉱山機械ともに中国以外の地域において需要が好調に推移した。海上輸送の逼迫や半導体不足の影響があるものの、クロスソーシングの活用などにより新車需要の拡大を着実に取り込み、部品・サービス売上げも増加したことから、売上高は前期を大幅に上回った。産業機械他部門では、鍛圧機械、板金機械、工作機械については各国で経済活動の規制が緩和され、海外での据付け工事の完了などにより売上げが増加した。また、世界的に半導体需要が増加し、エキシマレーザー関連事業の売上げが好調に推移したことから、売上高は前期を上回った。

 利益については、建設機械・車両部門において、資材価格や物流コスト上昇の影響はあるものの、各地域での販売量増加や販売価格の改善、円安の影響により、営業利益は3,170億円(前期比89.5%増加)となった。売上高営業利益率は前期を3.7ポイント上回る11.3%、税引前当期純利益は3,245億円(前期比99.4%増加)、当社株主に帰属する当期純利益は2,249億円(前期比111.7%増加)となった。

 コマツは、2022年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value – FORWARDTogether for Sustainable Growth」において、①イノベーションによる価値創造、②事業改革による成長戦略、③成長のための構造改革 を成長戦略3本柱として掲げ、収益向上とESG(環境・社会・ガバナンス)の課題解決の好循環による持続的成長を目指して活動した。成長戦略に基づく重点活動を着実に推進し、経営目標である成長性・収益性・効率性・健全性の向上に努め、ESGの経営指標である環境負荷低減などに取り組んだ。

 コマツ2022年3月期データ

■部門別の概況

[建設機械・車両]

 建設機械・車両部門の売上高は2兆5,643億円(前期比29.8%増加)、セグメント利益は2,757億円(前期比91.8%増加)となった。

 中期経営計画の成長戦略「イノベーションによる価値創造」においては、鉱山向け無人ダンプトラック運行システム(AHS)の強化に取り組み、3月末時点の総稼働台数は累計510台となった。また、鉱山向け大型ブルドーザー「D375Ai-8 遠隔操作仕様車」の導入に向け、ブラジルの顧客の現場においてトライアルを進めた。電動化の取り組みでは、着脱式可搬バッテリーを活用した電動マイクロショベル「PC01E-1」をレンタル機として国内市場に導入した。また、建設現場向けソリューション「スマートコンストラクション」を着実に推進し、国内においては、累計で19,000を超える現場に導入した。

 「事業改革による成長戦略」では、都市土木作業に特化して仕様を最適化した油圧ショベルCEシリーズ「PC200-10M0」を活用した2ラインモデル戦略を進め、東南アジア地域内でのシェアを拡大したほか、昨年12月よりインドの現地工場において同機種の生産を開始し、インド市場への導入を進めた。また、最新技術を織り込み15年ぶりにフルモデルチェンジした大型ブルドーザー「D475A-8R」を国内及び戦略市場において発売開始した。

 「成長のための構造改革」では、薄板部品の技術開発やグローバルな生産調達の強化・促進のため、コマツキャブテック㈱の吸収合併を決定した。また、コマツオーストラリア㈱において最新の管理システムを織り込んだパーツセンターを新設し、物流オペレーションの最適化を図るとともに、太陽光パネルの設置・部品包装量の削減などによる環境負荷の低減を進めた。

■地域別の概況

<日本>

 日本では、公共工事及び民間工事向けともに需要が堅調に推移したことから売上高は前期を上回った。

<米州>

 北米では、一般建機の需要は、住宅建設、インフラ、レンタル向けが好調に推移し、エネルギー関連向けも回復基調となった。加えて、鉱山機械の販売が増加したことから、売上高は前期を大幅に上回った。

 中南米では、一般建機・鉱山機械ともに需要が好調に推移した。主にチリの銅鉱山向け鉱山機械の販売が増加したことや、中南米各国において経済活動の再開に伴い一般建機需要が好調に推移したことにより、売上高は前期を大幅に上回った。

<欧州・CIS>

 欧州では、景気下支え策の影響などにより主要市場であるドイツ、英国、フランスに加えイタリアにおいてもインフラ向けの需要が堅調に推移したことにより、売上高は前期を大幅に上回った。

 CISでは、インフラ及びエネルギー関連向けの一般建機の需要が好調だったことに加え、金鉱山向けなどの鉱山機械及び部品販売が好調に推移したことにより、売上高は前期を大幅に上回った。

<中国>

 中国では、前期に発生した新型コロナウイルス感染症の影響による春節後の販売シーズンの後ろ倒しの影響がなくなったことや、インフラ投資や不動産投資の停滞などにより需要が低迷した。また、中国メーカーの販売比率上昇の影響もあり、売上高は前期を大幅に下回った。

<アジア・オセアニア>

 アジアでは、インドネシアにおける石炭向け鉱山機械の需要が好調であったことに加え、インドネシア、フィリピン、タイなどにおける一般建機の需要が好調であったことから、売上高は前期を大幅に上回った。

 オセアニアでは、鉄鉱石や石炭向け鉱山機械及び一般建機の需要が堅調に推移し、売上高は前期を上回った。

<中近東・アフリカ>

 中近東では、サウジアラビアやUAEなどの産油国での一般建機の需要が引き続き好調に推移し、トルコでの需要も堅調であったことから、売上高は前期を大幅に上回った。

 アフリカでは、南部アフリカ地域・その他地域ともに鉱山機械及び一般建機の需要が引き続き好調であったことから、売上高は前期を大幅に上回った。

[リテールファイナンス]

 リテールファイナンス部門では、一般建機・鉱山機械の販売増加に伴い、新規取組高が増加したことから、売上高は718億円(前期比8.2%増加)となった。セグメント利益は、リースアップ車の評価額が改善したことに加え、前期における新型コロナウイルス感染拡大時に実施した支払猶予の影響がなくなったことなどから、171億円(前期比62.7%増加)となった。

[産業機械他]

 産業機械他部門では、鍛圧機械、板金機械、工作機械については、新型コロナウイルス感染症の影響縮小に伴い、各国で経済活動の規制が緩和され、海外の顧客の現場における据付け工事の完了などにより売上げが増加した。また、世界的に半導体需要が増加し、エキシマレーザー関連事業の売上げが好調に推移したことから、売上高は1,883億円(前期比10.0%増加)、セグメント利益は225億円(前期比38.3%増加)となった。

 コマツNTC㈱では、2月に、EV用部品などのフレキシブルな生産ニーズにも対応する高精度・高性能な5軸マシニングセンター「ComPlex5400」の販売を開始した。

■2023年3月期の見通し

 コマツは、新たな3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value - Together, to “The Next” forsustainable growth」を本年4月よりスタートした。未来の現場に向けた次のステージに踏み出し、サステナブルな未来を次の世代へつないでいくため、新たな価値創造を目指す。

 成長戦略の3本柱として、①イノベーションによる成長の加速、②稼ぐ力の最大化、③レジリエントな企業体質の構築を掲げ、「収益向上とESG課題解決の好循環」による持続的成長を目指すサステナビリティ経営を引き続き重視し、需要変動に左右されにくい事業構造の構築を進める。

 2023年3月期の連結業績の見通しは、以下の通り増収増益を見込んでいる。

 売上高3兆円(前期比7.1%増)、営業利益3,460億円(同9.1%増)、税引前当期純利益3,335億円(同2.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,260億円(同0.5%増)。

 建設機械・車両部門では、CIS、中国において需要は減少するものの、北米、アジアを中心に好調に推移することや、円安の影響もあり増収となる見通し。また、利益については、資材価格や物流コスト上昇を販売量増加や販売価格の改善、円安の影響で吸収し、増益となる見通し。

 なお、ロシアにおいては、ウクライナ情勢に起因したサプライチェーンの混乱などの影響について、先行きが見通せないことから、2022年3月末時点で現地の在庫もしくは現地へ出荷済みとなっているもののみ販売するという前提としている。

 リテールファイナンス部門では、リース終了後の中古車売上げの減少や前年度にあったリースアップ車の評価額改善の影響がなくなることなどから減収減益となる見通し。

 産業機械他部門では、半導体市場向けのエキシマレーザー関連などの売上げが増加する一方、自動車業界向けの中・大型の鍛圧機械などが減少し、減収減益となる見通し。

 業績見通しにおける為替レートは、1米ドル=118.0円、1ユーロ=129.0円、1豪ドル=88.0円を前提としている。

 コマツの2022年3月期決算ニュースリリース

 22年3月期決算説明資料

 中期経営計画ニュースリリース