・急速に伸長するインクジェット印刷需要への対応をさらに加速
・水性顔料インクジェットインク用色材の生産工場を米国で増設
・米国での顔料分散液の生産能力を倍増
富士フイルムは3月28日 、染料および顔料を用いた水性インクジェットインク製品を製造する米国子会社のFUJIFILM Imaging Colorants Inc.(米国デラウェア州ニューキャッスル、以下、米国FFIC)に約30億円の投資を行い、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の生産工場を増設すると発表した。2022年3月に着工し、2023年夏に稼働開始予定。
米国FFICでは、昨年3月に着工し、約20億円を投資した顔料分散液の製造設備が今春から稼働する予定だが、今後の需要拡大をにらみ、今回新たな投資を決定した。今回の投資により、米国での顔料分散液の生産能力を倍増させ、グローバルで急速に伸長するインクジェット印刷需要に対応する。
インクジェットは、短納期で、多品種・少量生産、一枚毎に異なる印刷ができるバリアブル印刷が可能なため、商業・出版印刷分野に加え、産業分野にも用途が拡大している。なかでも昨今、環境負荷が低く、食品用途での安全性に長ける水性顔料インクジェットインクを活用したいというニーズが世界中で高まっている。
高品質な水性顔料インクジェットインクの製造には、インク中の顔料を安定的に分散する技術が不可欠。一般的に、インク中の顔料粒子サイズは100nm前後であり、時間が経過すると複数の顔料粒子が凝集し沈殿する。これは印刷時にインクジェットヘッドのノズル詰まりに繋がるため、インク中の顔料粒子は均一かつ安定的に分散している必要がある。また、高速で高品質な印刷が求められるインクジェット印刷では、色材に加えてインクに様々な溶剤や機能性材料が用いられるため、色材が他の材料の影響を受けずに安定性が維持されることが重要となっている。
富士フイルムの顔料分散液は、顔料粒子に吸着する分散剤同士を化学結合させ架橋構造を形成する独自の「RxD(アールエックスディー)(Reactive Dispersant)」技術を用いることで、分散剤が顔料から脱離しにくく、安定性の高い顔料分散を実現している。これにより、溶剤や機能性材料などが加わってもその影響を受けずに顔料分散の安定性が維持されるため、インク製造時に組み合わせる材料の選択肢の幅が大きく広がり、様々な分野のインク製造を可能とする。富士フイルムは、このRxD技術を用いた顔料分散液を自社インクの製造に用いるだけでなく、世界中のインクメーカーにも供給しており、これまでに多くの水性顔料インクジェットインクに採用されている。
富士フイルムは、インクジェットのグローバルでの市場ニーズに合わせ、米国FFICの供給能力を増強することで、インクジェット事業の成長を一段と加速させていく。
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