横浜ゴム、Trelleborg社の農業機械・産業車両用タイヤなどを生産販売するWheel Systems事業を買収

 横浜ゴムは3月25日、スウェーデンに本社を置く農業機械用や産業車両用タイヤなどの生産販売事業を展開するTrelleborg Wheel Systems Holding AB(以下、TWS、トレルボルグ・ホイール・システム・ホールディング)の全株式を取得することを、同社の株式を保有するスウェーデンのTrelleborg ABと合意し、株式売買契約を締結したと発表した。買収におけるTWSの企業価値は、20億40百万ユーロ(約2,652億円、換算レート:1ユーロ130円、業績連動型アーンアウト方式を採用※1)。EBITDAマルチプルは約9倍と推定※2している。今後EUをはじめ必要な各国の競争法に基づく手続きを経たうえで2022年下期の買収完了を予定している。なお、横浜ゴムの連結業績への影響については現在精査中。

※1:対象事業の2022年における決算数値に応じて上記に加えた追加代金が最大60百万ユーロ発生する可能性がある。
※2:TWSの2022年のEBITDAは 2億30百万ユーロ(横浜ゴム推定)を前提とする。

 横浜ゴムは2021年度から2023年度までの中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)に取り組んでる。「YX2023」の「Y」はヨコハマ、「X」はトランスフォーメーションを意味し、既存事業における強みの「深化」と100年に一度の大変革期のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進することで次世代の成長に向けた「変革」を図る。これにより2023年度に過去最高の業績の達成を目指している。

■「YX2023」における横浜ゴムのタイヤ事業戦略
 現在のタイヤ市場は乗用車用タイヤなどの「タイヤ消費財」とトラック・バス用、農業機械用タイヤなどの「タイヤ生産財」に大別され、市場規模はほぼ同等と見込んでいる。しかし、今後「CASE」「MaaS」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」が浸透するにつれ、個人消費の車が減少し、人や物の移動を支えるインフラ車両が増えることでタイヤ消費財が「生産財化」していくと予想している。このようなタイヤ市場の変化に対して「深化」と「探索」の2つのアプローチによる戦略を推進し、タイヤ消費財事業では「高付加価値品比率最大化」を掲げ、グローバルフラッグシップタイヤブランド「ADVAN(アドバン)」、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」、「ウィンタータイヤ」の販売を「深化」させます。タイヤ生産財事業では「コスト」「サービス」「DX」「商品ラインアップの拡充」をテーマに掲げて市場変化を「探索」していく。

■買収の目的:タイヤ事業の現状と課題
 TWSの買収は「YX2023」においてタイヤ生産財事業の“さらなる成長ドライバー”と位置付けているOHT(オフハイウェイタイヤ)事業の拡大のために実施するもの。現在の世界市場規模はタイヤ消費財とタイヤ生産財が1:1となっているが、横浜ゴムのタイヤ事業における売上構成比はタイヤ消費財が2、タイヤ生産財が1とタイヤ消費財に偏った構成になっている。そのため、タイヤ事業の売上構成比を市場に合わせて事業の安定性と収益拡大を図るため、タイヤ生産財の中でも安定的に高い収益を確保できるOHT事業の成長が重要な課題となっていた。今回の買収により、タイヤ事業の構成適正化だけでなく、タイヤ生産財事業のテーマである「商品ラインアップ」「コスト」「サービス」「DX」を強化できると考えている。タイヤ消費財は今後も「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の拡販を図り、収益改善に努めていく。

■TWSの強み
 TWSの売上比率はTrelleborg AB全体の30%以上を占めており、2021年度の売上高は100億76百万スウェーデンクローナ(約1,290億円)。10年間で売上高は2.6倍、EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)は3倍以上、EBIT率は10%以上を継続しており、安定した高い収益性を維持している。

 TWSの生産品種は農業機械用が約60%、産業車両用が約20%、残りを建設車両用と二輪車用が占めており、農業機械用、産業車両用タイヤは世界トップクラスの商品力、ブランド力や技術力、サービス力を誇る。また、それぞれの品種において小型から大型サイズまであらゆる車両に対応する商品ラインアップを保持している。

 生産拠点は欧州(イタリア、チェコ:3拠点、ラトビア、セルビア、スロベニア)、北米(米国:2拠点)、南米(ブラジル)、アジア(中国:2拠点、スリランカ:2拠点)の9カ国に14拠点を保有し、販売では同社の売上の約70%を欧州が占める。ESG活動も積極的に推進しており、再生可能原料への転換では天然由来原料の使用率を5年後に10%向上させるなど高い目標を掲げている。

■買収の戦略と「YX2023」との整合性
 横浜ゴムは今回の買収によって「商品ブランド体系の完成」「サービス体制の強化」「DXの活用」「販売における地域補完」「新車装着タイヤ納入」を強化できると考えている。

 「商品ブランド体系の完成」ではベーシックからスタンダード、プレミアムまですべてのカテゴリーにおいて農業機械用、建設車両用タイヤのブランドラインアップが完成する。「サービス体制の強化」ではTWSが産業車両用タイヤ向けに世界21カ国、82拠点で展開する独自のタイヤメンテナンスサービスを農業機械用タイヤ向けにも広げていく。「DXの活用」では、横浜ゴム同様に空気圧やタイヤ内温度の遠隔監視システムを開発しており、両社の協業により利便性と効率性を高めたサービスの提供を推進する。

 「販売における地域補完」では横浜ゴムが強みを持つ日本、北米、アジアに、TWSが得意とする欧州を加えることで主要市場をカバーするグローバルネットワークが構築でき、さらなる成長が期待できる。「新車装着タイヤ納入」ではTWSが新車装着タイヤを納入している約60社の内、約30社が横浜ゴムの新たな納入先に加わりる。

 今回の買収により、タイヤ商品やサービスの研究開発、生産、販売、品質、ESGなど全ての領域において両社の強みを融合し、OHT事業のさらなる成長を図る。

<Trelleborg Wheel Systems Holding ABの概要>

本社所在地:スウェーデン・トレルボルグ
主要事業:農業機械用、産業車両用タイヤなどの生産販売
売上高:100億76百万スウェーデンクローナ(約1,290億円/2021年度)
生産拠点:14拠点(イタリア、チェコ:3拠点、ラトビア、セルビア、スロベニア、スリランカ:2拠点、中国:2拠点、米国:2拠点、ブラジル)
販売拠点:40
主要ブランド:TRELLEBORG、Mitas
従業員数:6,750名(2021年12月末時点)

<Trelleborg ABの概要>
設立年:1905年
本社所在地:スウェーデン・トレルボルグ
資本金:26億20百万スウェーデンクローナ(約336億円)
主要事業:ポリマー技術を活用した産業用ゴム商品の生産販売
売上高:338億64百万スウェーデンクローナ(約4,338億円/2021年度)
従業員数:21,230名(2021年12月末時点)

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 ニュースリリース(トレルボルグ・ホイール・システム)