日立製作所、米国メリーランド州ワシントン郡に鉄道車両工場の建設を決定

・83 億円を投資し、2023 年度冬に開業を予定する大規模工場を米国に建設

 日立製作所(以下、日立)の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レール社は3月21日、7千万ドル(約 83億円)*1 を投資して最新の鉄道車両製造工場を、ワシントン首都圏北部にあるメリーランド州ワシントン郡に建設すると発表した。新工場では、米国Washington Metropolitan Area Transit Authority(以下、ワシントン首都圏交 通局)向け8000系車両を製造する。

 日立は、米国における鉄道事業を拡大させており、新工場はワシントン首都圏向けの最新車両を製造する ほか、北米の鉄道市場の要望に幅広く対応することができる。この投資は、新工場を米国の鉄道事業の中 心と位置づけ、戦略的に決定した。また、新工場は熟練工を育成し、地元の幅広いサプライチェーンを創出 し、地元に大きな経済効果をもたす。

 工場建設予定地であるメリーランド州ワシントン郡は、ワシントン首都圏に隣接し、車両が納入されるワシント ン首都圏交通局のグリーンベルト車両基地へ車で90分で移動搬送することができる。また、メリーランド州を含 むヘイガーズタウン大都市圏は「ハブシティ」として知られ、米国北東部の物流の中心地です。今回、開発中 のメリーランド州ワシントン郡のホープウェルバレー工業団地近くの土地を取得し、整地作業を開始する。建設 工事は、2022年秋から本格的に開始され、2023年度の冬の開業をめざしている。

■新工場の特徴
 工場建屋の広さはアメリカンフットボール場約5個分の30万7,000平方フィート(約28,500㎡)で、大規模な製 造ライン、倉庫、事務所が設置される。工場敷地は41エーカー(約16万6,000㎡)。また、敷地内の800ヤ ード(約730m)の試験線で、走行試験を行う。また、1ヶ月に最大20両の地下鉄車両を製造することができ るほか、トラムや地下鉄、高速列車まで、あらゆる種類の車両を製造することができる。
新工場には、フロリダ州マイアミ、日本、イタリア、英国の車両工場で培った製造技術を取り入れる。また、 日立グループのデジタル技術を活用し、製造、試験、部品管理の最適化を実現さる。これらの取り組みと、従 業員への質の高いトレーニングにより、最高水準の信頼性と性能を誇る地下鉄車両を製造する。

■経済効果
 新工場は、460人の従業員を含む、1,300人が従事する計画。これら1,300人の直接・間接及び関連す る雇用によって、年間3億5,000万ドル(約415億円)の所得がもたらされ、ワシントンDC、メリーランド州、バージニ ア州に大きな経済効果を生み出すことが期待される。また、工場建設の60%に当たる4,000万ドル(約46億 円)以上がこれらの地域に発注され、4分の1以上(約27%)が中小企業に発注される予定。

■ワシントン首都圏交通局向け地下鉄車両について
 2021年3月に発表した、ワシントン首都圏交通局向け地下鉄車両8000系車両の最大22億ドル(約2,608 億円)分の注文が、新工場の最初の作業となる*2 。基本契約256両(オプション含め最大800両)の地下鉄 車両は信頼性を高め、最新の技術により乗客の利便性を向上させる。主な特徴としては以下のようなものが ある。

・ デジタルスクリーン、より便利な乗客案内、車内Wi-Fi
・個々の異常に対処できるスマートドア
・ 高精細な防犯カメラ
・ 優れた空調システム
・ 厳しいサイバーセキュリティ要件への適応
・より広い座席と通路
・フロアヒーター
・優れた回生ブレーキ

 新型車両は2両1組で、1組当たり130席の電動車であり、1980年代前半から運行している2000系と3000 系電車に代わって導入される。ワシントン首都圏交通局にとって、新しい車両は乗客へのサービスを向上し、保 守が容易になりコスト削減に貢献さる。

 日立は気候変動対策に取り組んでおり、新しい8000系車両の導入により、多くの人が自動車から電動の地下鉄車両に乗り換えることで、交通渋滞、大気汚染や二酸化炭素排出を低減し、ワシントン首都圏の環境目 標達成に寄与する。新型車両は従来車両より静かでエネルギー効率に優れている。

 日立の7千万ドル(約83億円)の投資は、北米市場の旅客と貨物輸送の改善への継続的なコミットメントを象徴している。ペンシルバニア州ピッツバーグに北米本部を置き、1,400人以上の従業員が、ホノルル最初の鉄道 建設、サンフランシスコの大規模な信号システム、マイアミ向け鉄道車両の製造、北米全土の貨物鉄道会社の サポートなど、輸送セクターのプロジェクトに従事している。

 日立はITとデジタル技術で世界をリードしており、交通システムを最適化、デジタル化することにより、乗客や 鉄道事業者により容易で効率的な移動を提供する。

■メリーランド州知事、 Larry Hogan(ラリー・ホーガン)のコメント

 日立のようなグローバル企業がヘイガーズタウンを米国ビジネス拡大の拠点として選択したことはワシントン首都 圏とメリーランド州にとって素晴らしいニュースです。

 日立は北米市場に対応する能力を持った新工場で、何百もの製造部門の雇用を私たちの州にもたらします。 私たちはこの革新的なプロジェクトで日立と協力できることを嬉しく思うとともに、メリーランド州における日立の継 続的な成功を楽しみにしています。

■アメリカ合衆国連邦下院議員 David Trone(デビッド・トローン)のコメント

 ヘイガーズタウンの新工場は、地域に高収入の雇用をもたらし、ワシントン首都圏のメトロシステムの輸送能力 を強化します。公共交通により、人々が時間通りに出勤したり、子供を迎えに行ったり、または単に A 地点から B 地点に移動できることは大変重要なことです。日立が私たちの地域に来たことを歓迎し、この工場がワシントン 郡にもたらす経済効果を楽しみにしています。

■ワシントン首都圏交通局 General Manager, Paul Wiedefeld(ポール・ウィードフェルド)のコメント

 この投資により私たちの古い車両が交換されるだけでなく、雇用の創出、工場周辺地域のサプライヤーや中小 企業への発注を通じて、地域全体が恩恵を受けることを歓迎します。

■日立製作所 執行役常務 鉄道ビジネスユニット CEO, Andrew Barr(アンドリュー・バー)のコメント

 メリーランド州ワシントン郡に最新の鉄道車両工場の建設を決定し、大変うれしく思います。この新工場は、 460人の米国の従業員が北米地域向けの最新車両を製造することができます。

 新しい車両工場により、乗客、鉄道事業者、都市に対して、シームレスで持続可能な移動手段の提供を実 現します。

*1 1 ドル=118.59 円で計算
*2 2021 年 3 月 17 日付ニュースリリース「日立が米国ワシントン首都圏交通局と地下鉄車両最大 800 両の設計・製造に関する契 約を約 2,398 億円で締結」 https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2021/03/0317d.pdf

■日立製作所について(原文ママ)

 日立は、データとテクノロジーで社会インフラを革新する社会イノベーション事業を通じて、人々が幸せで豊 かに暮らすことができる持続可能な社会の実現に貢献します。「環境(地球環境の保全)」 「レジリエンス(企 業の事業継続性や社会インフラの強靭さ)」 「安心・安全(一人ひとりの健康で快適な生活)」に注力していま す。IT・エネルギー・インダストリー・モビリティ・ライフ・オートモティブシステムの 6 分野で、OT、IT およびプロダクト を活用する Lumada ソリューションを提供し、お客さまや社会の課題を解決します。2020 年度(2021 年 3 月 期)の連結売上収益は 8 兆 7,291 億円、2021 年 3 月末時点で連結子会社は 871 社、全世界で約 35 万人の従業員を擁しています。

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