●年頭所感 一般財団法人 機械振興協会 会長 釡 和明

 皆様 新年明けましておめでとうございます。

 この2年余り世界を覆っている新型コロナウイルス(COVID-19)は、世界的には未だに収束の見込みが立たないまま新しい年を迎えることとなりました。加えて、コロナ禍での生産能力の低下、グローバルサプライチェーンの悪化や需要拡大に伴う半導体不足は、わが国の牽引産業である自動車産業にも大きな影響を与えており、さらには原油価格や穀物価格の高騰により、製造業のみならず全ての産業への影響が懸念されております。このように2022年も不安の中での船出となりましたが、こうした危機的状況であるからこそ、イノベーションに挑戦する必要があります。まさにコロナ禍は人類の試練であると同時に人類が進化するための機会を提供しているのです。

 さらに人類の危機としてクローズアップされているのが、気候変動問題です。昨年11月にイギリスで開かれた国連・気候変動対策会議「COP26」は世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求するとした成果文書を採択して閉幕しました。

 ところで、19世紀中葉から始まった産業革命は、まさしく「機械産業の誕生」を意味しました。その機械産業の発展が、一方で気候変動の要因になってきたとしたら、機械産業は新たな機械産業に生まれ変わる必要があります。

 さて、昨年10月に閣議決定されたわが国の第6次エネルギー基本計画では、一昨年10月に表明された「2050年カーボンニュートラル」や昨年4月に表明された新たな温室効果ガス排出削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すこと、そして、 気候変動対策を進めながら、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服に向け、安全性の確保を大前提に安定供給の確保やエネルギーコストの低減に向けた取組を進めることなどが明示されましたが、既に欧州を中心に普及拡大が急速に進んでいる洋上風力などの再生可能エネルギーはその1つの方策と言えるでしょう。

 しかし、今、機械産業に問われているのは、クリーンエネルギーを作り出すための機器だけでなく、モノづくりプロセス全体の脱炭素化なのです。機械産業のライフサイクル全体での脱炭素化が課題となっているのです。この課題への挑戦は、もしかしたら登山の初心者がいきなりアイガー北壁に挑戦するような困難な挑戦になるかもしれません。それでも、私たちはその巨大な壁を登るための道具を1つ1つ準備し、訓練を重ね、最適な登頂ルートを見つけ出すための情報や知識を身に着け、経験を蓄積していかなければならないのです。

 昨年5月に開催されたダボス会議のテーマは「グレート・リセット」というものでした。人類社会、そして、その中で活動している機械産業は「グレート・リセット」の直中にあると言えるでしょう。新年を迎えて個々人の気分はリセットされましたが、同時にこの2022年という新しい年は、「グレート・リセット」の幕開けでもあるのです。機械振興協会は機械産業の「グレート・リセット」の実現に向けて経済研究所と技術研究所の知恵を活かしながら果敢に挑戦して参ります。

 2022年は寅年のなかでも60年に一度の「壬寅(みずのえとら)」という特別な年です。まさに「グレート・リセット」に相応しい年ではないでしょうか。皆様にとっても有意義な一年になりますことを心より願っております。

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