三菱重工グループ、広島市のバイオマス発電所向けに、商用としては初の小型CO2回収装置を受注

・MHIENG独自の回収技術を用いた設計標準化で、産業分野でも脱炭素化を促進
・今回の受注を契機に、幅広いCO2回収削減ニーズに応え、カーボンニュートラル社会の実現に貢献
・ CO2回収装置の社会実装に備えて、自動運転・運転支援サービスの提供も実施予定

 三菱重工グループの三菱重工エンジニアリング(MHIENG、本社:横浜市西区)は12月1日、プラント建設・保守などを手掛ける太平電業(本社:東京都千代田区)から、同社が有するバイオマス発電所向けの小型CO2回収装置を受注したと発表した。回収能力は0.3トン/日。今回の受注を契機に、電力・産業分野をはじめとする、世界中のあらゆる分野における脱炭素化を促進するとともにカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。

 太平電業は循環型社会の実現に向け、バイオマス発電により発生したCO2を分離、回収した後に一旦貯蔵し、そのCO2を農作物の育成などに利用することで、カーボンニュートラルからカーボンネガティブソリューションの獲得を目指している。今回のCO2回収装置導入はこの取り組みの一環として、同社が広島市の複合機能都市「ひろしま西風新都」に有する出力7,000kW級のバイオマス発電所で計画されている。

 同装置は、バイオマス燃焼排ガス源からCO2を回収する検証用の試験機がベースとなっており、早期の商用化を可能としている。英国大手電力会社Drax社のバイオマス発電所におけるCO2回収実証プロジェクト(注1)で用いられている試験機に自動運転機能などを追加し、商業機としてリファインしたもの。

 設置に必要な敷地面積は全長5m×全幅2mと小型で、工場からトラックで輸送でき、設置も容易です。また、汎用性の高い設計標準化により導入・運転・維持コストの低減および納期短縮、さらには量産化を可能とするモジュラー型を採用している。これにより、産業分野など比較的小規模な施設におけるCO2排出量削減のニーズに広く対応できる。今後、小型装置のラインアップを拡充し、国内外問わず多様な排出源からのCO2回収を可能にするとともに、将来的にMHIENG独自の遠隔監視システムによる運転支援サービスも提供し、設置計画からアフターサービスまで一貫した顧客サポート体制を確立する。

 また、同装置に採用されているCO2回収技術は、MHIENGが関西電力(KEPCO)と共同開発した高性能なアミン吸収液「KS-1™」を用いる「KM CDR Process™」(注2)というプロセスで、エネルギー消費量が大幅に少ないのが特長。MHIENGは2021年11月現在、このプロセスを用いた計13基の商用プラントを世界各地に納入した実績を有していることに加え、さらに2基の建設を進めているところであり、商用プラントにおけるCO2回収量ベースで世界トップシェアを誇っている。

 三菱重工グループでは、エナジートランジションの事業強化に戦略的に取り組んでおり、CO2エコシステムの構築はその中の柱の一つ。CO2を回収して転換利用や貯留を行うCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は、カーボンニュートラル社会を実現するための有効な手段として注目されている。

 MHIENGは、高性能なCO2回収技術を国内外に広く普及させることを通じて、地球規模での温室効果ガス排出削減に貢献するとともに、地球環境保護に寄与する独自技術のさらなる開発に向けた取り組みを継続していく。

・1 .MHIENGとDraxが実施した、バイオマス発電所を対象としたCO2回収実証プロジェクトについて、詳しくは以下のプレスリリース参照。

・2 .MHIENG(当時、三菱重工)は、1990年から関西電力と共同でKM CDR Process™の開発に取り組んでいる。KS-1™は現在、KM CDR Process™を使用するすべての商業プラントで使用されており、競争力があり信頼性の高いCO2吸収液として選ばれている。また、MHIENGと関西電力が共同でKM CDR Process™の改良を続け、新たに開発した「Advanced KM CDR Process™」に用いられる「KS-21™」は、KS-1™以上に揮発性が低く、劣化に対する安定性が高いといった特長を有しており、運用コストの削減など経済性の向上が期待できる。

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