五洋建設は11月10日、橋梁等の鋼構造物を製作する自社の室蘭製作所(北海道室蘭市)の新工場建設にあたり、事務所のみならず、工場全体をネット・ゼロ・エネルギー化(ZEB化)するとともに、再生可能エネルギーとして水素エネルギーの利用・実証を行うと発表した。
五洋建設は、2019年に久光製薬ミュージアムでZEB認証の取得、2020年に協和エクシオ南関東支店でNearly ZEB認証の取得等、実物件でZEBの計画・施工・検証に関わってきた。また技術研究所展示実験棟で5つの要素(水、空気、熱、電気、制御)から省エネ技術の実証を行い、創エネを含まず72%の省エネ率を達成している。
新工場の事務所の省エネ化は、寒冷地であることを考慮して、樹脂サッシの採用による断熱性の向上、採光フィルムによる昼光の拡散による照明負荷の低減や寒冷地用の高効率空調機器等の導入に加え、それらの人感センサー制御等によって省エネ化を促進します。事務所の省エネ化によるエネルギー削減率は62%。創エネルギーとして、工場の屋根に太陽光発電(出力670kW)と水素燃料電池(出力30kW)を設置し、事務所はもとより工場の電灯と必要な動力までの全ての電力をグリーン電力で賄うことで、工場全体をZEB化する。
水素エネルギーの利用・実証には、①副生水素と②太陽光発電の余剰電力により製造したグリーン水素を用いる。副生水素は、タンク(貯蔵量900Nm3×2基)に貯蔵し、燃料電池による発電により事務所の一部で常時利用する。またグリーン水素は、太陽光発電の余剰電力を活用して水電解装置(製造量3Nm3/h)で製造し、水素吸蔵合金(貯蔵量300Nm3)に貯蔵して、随時またはBCP対策時に燃料電池による発電を行う。
五洋建設は、カーボンニュートラル実現のため、洋上風力発電の建設や建物のZEB化などグリーン分野に挑戦している。今回の取組みを通じて、建物や工場のZEB化、水素エネルギーの利用等に関する知見を蓄積していく。また室蘭製作所では、これまで橋梁等の鋼構造物の製作を行ってきたが、今後は旺盛な需要が見込まれる洋上風力建設関連の仮設鋼構造物等の製作を担うグリーン工場として、更なる発展を目指す。
室蘭市は、五洋建設も参画する「室蘭市脱炭素創造協議会」や「室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)」の活動を通じて、水素利用の普及や洋上風力発電の関連産業誘致・室蘭港の拠点港化等、カーボンニュートラルの取組みを積極的に推進されている。五洋建設も1970年北海道への本格進出の拠点となった室蘭において、カーボンニュートラルの取組みを推進していく。