川崎重工、21年4~6月受注は22.6%増の3,042億円、売上は18.3%増の3,556億円

・通期予想は前回予想比300億円増の1兆5,300億円に上方修正

 川崎重工業が8月5日に発表した2022年3月期第1四半期(2021年4~6月)連結業績によると、受注高は前年同期比559億円増加(前年同期比22.6%増)の3,042億円、売上高は前年同期比550億円増収(同18.3%増)の3,556億円となった。営業損益は前年同期比358億円改善して151億円の利益、経常損益は前年同期比320億円改善して131億円の利益、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期比216億円改善して98億円の利益となった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて減退してきた世界経済は、先進国を中心としたワクチン接種の進展や経済対策などにより、短距離航空路線の需要回復や、欧米や中国におけるレジャーをはじめとした個人消費の回復など、持ち直しの動きが鮮明になりつつある。日本国内の個人消費は、緊急事態宣言の再発令に伴い回復ペースに足踏みが見られるものの、景況感は製造業を中心に改善しており、設備投資については新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復する見込みである。一方で、新型コロナウイルス変異株へのワクチン効果に対する懸念や原材料価格の高騰、米中問題の長期化など、依然として先行き不透明な状況が継続している。

 このような経営環境の中で、第1四半期における川崎重工グループの連結受注高は、車両事業、航空宇宙システム事業の減少はあったものの、モーターサイクル&エンジン事業、精密機械・ロボット事業の増加などにより増加となった。

 連結売上高については、航空宇宙システム事業などが減収となる一方で、モーターサイクル&エンジン事業、精密機械・ロボット事業などが増収となったことにより、全体では前年同期比で増収となった。

 利益面に関しては、営業損益は、モーターサイクル&エンジン事業、航空宇宙システム事業での改善などにより、前年同期比で大幅な改善となった。経常損益は、為替差損益などの悪化はあったものの、営業損益の改善により大幅な改善となった。親会社株主に帰属する四半期純損益は、税金費用の増加はあったものの、経常損益の改善により大幅な改善となった。

 川崎重工2022年3月期第1四半期データ

■部門別状況

<航空宇宙システム事業>

 航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては厳しい防衛予算の中で概ね安定した需要が存在している。民間航空機については、新型コロナウイルス感染拡大により世界の旅客需要が低迷しており、機体・エンジンともに需要が低下している。足元では北米等の一部地域において短距離航空路線の需要回復が見られるものの、新型コロナウイルス変異株へのワクチン効果に対する懸念など、依然として先行き不透明な状況が継続している。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、ヘリコプター本機及び分担製造品の増加はあったものの、民間航空エンジン分担製造品における収益認識会計基準等の適用による影響などにより、前年同期に比べ79億円減少の374億円となった。

 連結売上高は、民間航空機向け分担製造品の増加はあったものの、収益認識会計基準等の適用による民間航空エンジン分担製造品の減少などにより、前年同期に比べ45億円減収の700億円となった。営業損益は、民間航空機向け分担製造品の増収や民間航空エンジン分担製造品における収益性の改善などにより、前年同期に比べ123億円改善して51億円の営業損失となった。

<車両事業>

 車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により国内では鉄道関連投資計画の見直し、海外では工程の遅れや入札の延期・中止等が現実となりつつあるが、中長期的には、人口集中による大都市の混雑緩和や環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、新幹線車両の受注があった前年同期に比べ、94億円減少の93億円となった。

 連結売上高は、米国向け車両の増加はあったものの、その他海外向け及び国内向け車両が減少したことなどにより、前年同期に比べ35億円減収の287億円となった。営業損益は、減収はあったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響などによる海外案件の採算悪化があった前年同期に比べ6億円改善して8億円の営業損失となった。

<エネルギーソリューション&マリン事業>

 エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大の影響による停滞から正常化に向かう中、回復基調を維持している。国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。また、LPG運搬船に関する商談も徐々に増えている。更には、世界的にカーボンニュートラルの実現を目指す動きが強まっており、川崎重工が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。一方、急速な経済正常化の動きに連れて、原材料価格や輸送運賃が高騰するなど、収益の圧迫が懸念される。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けごみ処理施設改良工事などの大口案件の受注により、前年同期に比べ46億円増加の609億円となった。

 連結売上高は、エネルギー事業の売上増加はあったものの、船舶海洋事業の売上減少などにより、前年同期に比べ19億円減収の703億円となった。営業損益は、売上構成変動などにより、前年同期に比べ15億円悪化して3億円の営業損失となった。

<精密機械・ロボット事業>

 精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国建設機械市場は、今年度も高い水準の需要が続き、また、中国以外の地域における建設機械市場についても、好調が継続している。しかし中国国内における油圧ショベルの販売状況等から在庫調整に向かい始めた建機メーカーも見られるなど、中国市場の状況については引き続き注視が必要。ロボット分野では、半導体向けロボットについては、半導体製造装置メーカーの設備投資の増加により好調に推移しており、また汎用ロボットも、新型コロナウイルス感染拡大からの回復の早い地域を中心に好調に推移している。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、建設機械市場向け油圧機器や半導体向けをはじめとする各種ロボットの増加により、前年同期に比べ144億円増加の651億円となった。

 連結売上高は、建設機械市場向け油圧機器や半導体向けをはじめとする各種ロボットの増加により、前年同期に比べ122億円増収の576億円となった。営業利益は、増収により、前年同期に比べ37億円増益の51億円となった。

<モーターサイクル&エンジン事業>

 モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響が継続している。主要市場である米国では、前年度に引き続き、四輪車等オフロードモデルの需要が旺盛であり、欧州市場も堅調に推移している。一方で、東南アジア市場は依然として先行きが不透明な状況が継続している。また、半導体や原材料の不足、物流の混乱等により、製品供給にも影響が及んでいる。

 このような経営環境の中で、連結売上高は、北米向け二輪車、四輪車等オフロードモデルの増加や欧州向け及び東南アジア向け二輪車の増加により、前年同期に比べ545億円増収の1,135億円となった。営業損益は、増収に加え、前年同期に比べ為替レートが円安で推移したことや販促費の削減などにより、前年同期に比べ207億円改善して148億円の営業利益となった。

<その他事業>

 連結売上高は、前年同期に比べ17億円減収の152億円となった。営業損益は、前年同期に比べ7億円改善して6億円の営業利益となった。

 川崎重工グループはグループビジョン2030において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、変化に合わせて、より成長できる事業体制への変革を目指しており、手術支援ロボットの開発や自動PCR検査事業、更には、配送ロボットや無人輸送ヘリコプターの開発、水素関連プロジェクトの推進など、新事業への取り組みを着実に進めている。

■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明

 2022年3月期の連結業績予想については、連結売上高、連結営業利益、連結経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はともに前回(5月11日)公表値から増加し、連結売上高は1兆5,300億円(前期比2.8%増)、連結営業利益400億円(-)、連結経常利益280億円(-)、親会社株主に帰属する当期純利益190億円(-)となる見通しである。

 また、ROICは3.3%、ROEは4.2%となる見通しである。連結受注高については、モーターサイクル&エンジン事業で増加が見込まれること等から、前回公表値から300億円増加の1兆5,100億円となる見通しである。

 なお、業績予想における為替レートは、1ドル=109円、1ユーロ=128円を前提としている。

 川崎重工業の2022年3月期第1四半期決算短信

 決算説明資料