IHI、タワークレーン運転支援システムの共同研究開発契約を三井住友建設と締結

・施工情報・自動経路生成・自動誘導の共同研究開発に着手

   ㈱IHIとグループ会社であるIHI運搬機械(東京都中央区、以下、IUK)は7月1日、三井住友建設(以下、SMCC)と、高層ビル建築現場において使用されるジブクライミングクレーン(タワークレーン、以下、JCC)の運転支援システムの共同研究開発契約を締結し、開発に着手したと発表した。

 高層ビル建築現場では、近年、労働力人口の減少によりJCCの熟練運転手不足が深刻化するとともに、運転手の技量不足・技量のムラによる建築現場の作業効率の低下が発生し、熟練運転手の確保が課題となっている。IHIとJCCのリーディングカンパニーであるIUKはこのような課題を解決するため、2017年度より同じ三井グループであるSMCCとワーキンググループを組成して、JCCの高度化による建築現場の課題解決に向けた意見交換を行ってきた。

 SMCCとの協働により、ゼネコンが有する施工計画情報(宛先位置/方位・規制範囲)※1 と、IHIが有する自動化技術およびIUKが有するクレーン制御技術を組み合わせ、クレーンメーカだけでは実現が困難であった、追従・¬振れ止め・位置合わせ・障害物回避・サイクルタイム向上等を考慮した最適な経路の自動生成と制御による運転支援が期待できることから、このたび、実装に向けた共同研究開発を開始した。

 同システムでは、まずSMCCが開発する「施工情報システム」からBIM※2データを基にした施工計画情報がJCCに送信される。次に、現場搬入資材の現在位置と向きが今回開発されるGPSを用いたシステムによりセンシングされ、JCCへデータが送信される。これらにより、クレーンシステムは、予めBIMで設定された規制範囲などの情報を考慮した経路を自動生成し、最適経路を提示する。最後に、運転手が運転開始を指示することで、JCCは運転手が手を動かすことなく目標位置まで経路に沿って制御運転される。同システムの活用により、経験の浅い運転手によるJCC操作が熟練運転手と同等レベルに引き上げられることで、高層ビル建築現場の生産性の向上が期待される。

   IHIとIUKは2022年3月末を期限とする共同研究開発契約をSMCCと締結し、今年度中に基本的な支援機能のシステム化を完了させる予定としている。2022年4月以降は、継続して本システムの性能改善を行うと同時にインターフェースの改善を進め、段階的に幅広い顧客への実装販売を目指す。

 IHIとIUKは、同システム開発に含まれるクレーンの自動誘導機能および遠隔運転機能等の各種クレーンへの実装化により、自動化・省人化に向けた製品・サービスとネットワークを拡大しながら、顧客の課題を解決する総合的な荷役ソリューション提供に取り組んでいく。

※1 施工計画情報(宛先位置/方位・規制範囲) クレーンで運ぶ建築部材の取り付け位置や取り付け方向に関する情報や,クレーン運転中のつり荷が通過禁止となっている領域に関する情報といった,自動誘導を計画するために必要な建築現場の情報のこと。 

※2 BIM(Building Information Modeling/ビルディング インフォメーション モデリング) 建物を実際に建設する前に、コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を構築して,設計を行うシステム。BIMデータには建物形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量や特性などが含まれている。

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