IHI、米国ニュースケール社へ出資、小型モジュール原子炉(SMR)事業に参画

 ㈱IHIは5月27日、小型モジュール原子炉(SMR(※))の開発を行っている米国NuScale Power, LLC(ニュースケール社)へ、日揮ホールディングスとともに、SMR事業に参画することを決定したと発表した。

 IHIは、1950年代より継続して、原子力主要機器メーカーとしての役割を担ってきたが、国内で新設の計画が見通せない中、原子力技術の維持が課題となっている。世界的には、気候変動が大きな社会課題となっており、脱CO₂社会の実現に向けた対策が強化されている。そのため、電源構成に占める再生可能エネルギー比率が増加し、電力の安定供給を支える調整電源の重要性が高まっている。複数の小型原子炉で構成するニュースケール社のSMRは、炉の一部だけを運転することで負荷追従運転が可能であることから、再生可能エネルギーの調整電源としての役割が期待されている。

 IHIは、カーボンソリューションを成長事業と位置づけており、SMRが脱CO₂社会実現の有力なソリューションの一つになり得るとして、ニュースケール社への出資を決定した。同社が開発中のSMRは、原子炉の冷却性能など高い安全性を備えており、SMRとして初めて米国原子力規制委員会(NRC)の型式認定を完了した。すでに商業化に向けた検討が進められており、世界市場において一定のシェアを占めると想定されている。これによりIHIは、これまでの豊富な実績を活かし、主要機器の供給やエンジニアリングを通して、事業の中核を担う計画。 

 長年にわたり、IHIは、原子力発電所向け主要機器の設計・製作・保守点検、原子燃料サイクル施設の建設、ならびに原子力施設の除染・廃炉に携わり、国内外において高品質のものづくりとエンジニアリングにより価値を提供してきた。これらの技術と経験をもとに、原子力のさらなる安全性向上に貢献し続けるとともに技術の維持・向上を図り、引き続き原子力メーカーとしての責務を果たしていく。

(※)SMR:原子炉1基ごとの出力を小さくすることで原子炉の冷却を容易にし、安全性を高めた原子炉。あらかじめ工場でユニット(モジュール)を製造・組み立て、トラックなどで運搬し建設地で据え付けることで、工期短縮や建設コスト・リスク削減が可能。

<ニュースケール社SMRの特徴>

 ニュースケール社が開発中のSMRは、直径約4.5m、高さ約23m、1基あたり7.7万kWeの出力の小型モジュール型原子炉。立地条件やエネルギー需要に応じて最大12基の原子炉でプラントを構成する。2020年8月には、米国原子力規制委員会(NRC)より、SMRとして初めて型式認定に対する最終審査を完了、高い安全性と技術が認定され、プラントの実現性が大きく増した。米国・ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)は、エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所内でニュースケール社のSMR商業プラントを建設する予定。

<ニュースケール社の会社概要>

会社名:NuScale Power、 LLC

設立年:2007年

本社所在地:米国オレゴン州ポートランド

従業員数:約430名

累計調達額:1,100百万米ドル (※米国エネルギー省からの資金サポートを含む)

主要株主:Fluor Enterprises,.Inc.

 ニュースリリース