ヤマシンフィルタが5月14日に発表した2021年3月期(2020年度)連結業績によると、売上高は145億87百万円(前年同期比15.1%増)となり、営業損失は1億45百万円(前年同期は7億77百万円の営業利益)、経常損失は1億35百万円(前年同期は6億3百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億50百万円(前年同期比23.4%増)となった。
売上高については、建機用フィルタ事業において、2.9%の減収となった一方で、エアフィルタ事業において2019年8月23日付で完全子会社化したアクシーの売上高を2020年度より12か月分取り込んだことにより89.3%の増収となったことに加え、ヘルスケア事業の開始に伴い全体で15.1%の増収となった。
営業利益については、建機用フィルタ事業においてコロナ禍により一時的に発生した航空運賃等の影響や、エアフィルタ事業における本社移転費用等の発生、並びにヘルスケア事業における量産供給体制整備の遅れによる原価上昇等の影響により全体で145百万円の営業損失となった。経常利益については、営業利益の減少等の発生により135百万円の経常損失となった。親会社株主に帰属する当期純利益については、訴訟和解金の受取りや株式会社アクシー旧本社工場の売却益の計上等により23.4%の増益となった。
■連結経営成績の概況
2020年度における世界経済は、新型コロナウィルスの感染拡大により停滞していた各国の経済活動が再開に向けた動きを見せ、ワクチン接種開始による新型コロナウィルス感染症終息への期待の高まりのなか、変異種による感染再拡大の懸念やワクチン供給の遅れによる経済への悪影響など、依然として先行きの見通せない不透明な状況が続いている。
主力事業である建機用フィルタ事業における建設機械市場においては、新型コロナウィルスの影響により停滞していた主要得意先各社の生産活動は各国で再開され、日本、米国、欧州、アジア市場における第4四半期(1~3月)の需要は増加し、新型コロナウィルス感染拡大前の水準に戻りつつある。
また、中国市場においては、中国系建機メーカーの市場占有率拡大が顕著であり、経済活動の本格的な再開に伴い、産業補助金拡大による政府主導の投資促進策や消費刺激策の効果等もあり、油圧ショベルの新車販売台数は対前年比で過去最大の販売台数を記録するなど、需要は大幅に増加した。同市場では、今後も、公共事業投資に伴う建機需要の下支えや、2022年度以降に予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が想定され、引き続き需要の増加が見込まれる。
このような環境の中、2020年度において、建機用フィルタ事業においては、油圧ショベルの作動油回路用リターンフィルタ製品を中心に、新素材やIoT技術を活かした製品ラインナップの充実を図り、純正部品の採用率向上に努めた。とりわけ、各建機メーカーが油圧ショベルをはじめとした建機の電動化、自動化を積極的に推し進めるなか、独自に開発した合成高分子系ナノファイバー「YAMASHIN Nano Filter ™ 」を使用したロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を進めており、一部新機種への製品供給が開始されている。
また、主要市場である北米市場においては、主要製品であるリターンフィルタ製品に加え、燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規採用についても大きな進展を見せている。更には、世界最大の建機市場である中国市場においては、中国系建機メーカーへのリターンフィルタ製品を主軸とした製品の新規採用に向けた取り組みを強化しており、その採用実績は増加している。
このように、ヤマシンフィルタの日米欧を中心とした既存主要得意先への製品の採用拡大に向けた取り組み及び中国系建機メーカーへのシェア拡大については着実な進捗を見せており、建機用フィルタビジネスに安定化と更なる成長が見込まれるとともに、高付加価値製品の普及により産業廃棄物の低減を実現し、地球環境の保全に貢献できると考えている。
■今後の見通し
2022年3月期の同社を取り巻く、建機用フィルタ事業においては、新型コロナウィルス感染拡大により停滞していた各国の経済活動が再開に向けた動きを見せ、日本、北米、欧州、アジアといった各市場における建設機械市場の需要見通しは新型コロナウィルス感染拡大前の水準に戻ることが想定され、大幅な増加が見込まれる。
とりわけ、世界最大の市場である中国においては、今後、政府主導による公共事業投資に伴う建機需要の下支えや、2022年度中に予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が想定されることから引き続き需要の増加が見込まれる。
また、2020年度において、コロナ禍により継続的に発生した航空運賃等の一時的な費用については、引き続き一定程度の発生が見込まれるものの、サプライチェーンの見直しや安定した生産供給体制の構築を実現することで、費用の抑制が可能となることから増収増益となる見通し。
エアフィルタ事業においては、ナノファイバー製エアフィルタをはじめとした高付加価値製品ラインナップの展開により、オフィスビルや工場、鉄道車両、家電等への採用に向けた取り組みが進展していることに加え、生産拠点の変更による製造原価低減や原価管理体制の強化を図る事により、収益性の改善が見込まれることから増収増益となる見通し。
ヘルスケア事業においては、国内一般消費者向けマスク市場において、ドラッグストア市場を中心に一般消費者向け高機能マスク「Zexeed」をフラッグシップモデルとしラインナップの拡大を図っていく。
更には、需要の拡大が見込まれる医療用の高機能マスク市場においては、2021年3月に日本における厚生労働省が定める国家検定規格であるDS2認証を取得し、医療・産業用防塵マスク「Zexeed6240」を2021年4月より自社ECサイトにて販売を開始した。
引き続き、ヤマシンフィルタグループは、北米や欧州各国の認証取得(米国および欧州の各規格に向けた取組みを強化し、医療用の防塵マスク市場への進出を視野に入れ、シェア拡大を図っていく。
また、同事業の課題である量産供給体制の整備については、マスク量産設備の自動化に向けた取組みを強化しており、2022年3月期第2四半期以降大幅な製造原価低減による収益性の改善が見込まれることから、増収増益となる見通し。
2022年3月期連結業績予想は、売上高166億円(前期比13.8%増)、営業利益15億円、経常利益14億70百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9億60百万円。
決算説明資料(速報版)
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