東京計器が5月14日に発表した2021年3月期(2020年度)連結業績によると、売上高は前期比5,359百万円(11.3%)減収の42,081百万円となった。営業利益は前期比625百万円(33.3%)減益の1,250百万円、経常利益は前期比553百万円(27.5%)減益の1,458百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比480百万円(33.7%)減益の945百万円となった。流体機器事業が増収だったものの、それ以外の事業が減収だった。
2020年度における国内経済については、第3四半期から中国を中心とした輸出に回復がみられるものの、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大及び国内における緊急事態宣言による行動制限の影響により、生産、輸出いずれも弱含みで推移した。このような経営環境の下、東京計器グループは、2020年5月に発表した中期経営方針及び中期事業計画の成長戦略である<事業領域の拡大」、<グローバル化の推進」、<既存事業の継続的強化」に取り組んできた。
<事業領域の拡大」については、防衛・通信機器事業で東京計器の得意とするマイクロ波技術を応用し、半導体製造装置分野へエッチング装置向けや、成膜装置向けのソリッドステートマイクロ波電源をリリースし、2022年からの本格的な量産による売上増が期待出来ることとなった。<グローバル化の推進」については、船舶港湾機器事業で中国の内航船・漁船市場向けにジャイロコンパス及び中型オートパイロットをリリースし、拡販を推進した。<既存事業の継続的強化」については、流体機器事業で国内官需市場での売上増・シェアアップのための戦略商品となる新型高精度超音波流量計をリリースした。
■セグメント別業績
<船舶港湾機器事業>
同事業では、船舶関連機器の保守サービスが第3四半期から好転し堅調に推移したものの、コロナ禍の影響等を受け、商船市場及びアジアを主とした海外市場での新造船向けの需要が低調に推移した。
新商品については、中国内航船・漁船市場向けにジャイロコンパスTKG-1100及び中型オートパイロットPR-3000シリーズを、学校・官公庁船市場向けに電子チャートテーブルを市場投入した。
この結果、同事業の売上高は前期比573百万円(6.3%)減収の8,522百万円、営業利益は販管費の減少などから前期比14百万円(5.9%)増益の246百万円となった。
<油空圧機器事業>
同事業では、海外市場は中国向け販売が堅調であったことから前期を上回ったものの、それ以外の市場はコロナ禍の影響により需要が低迷した。
新商品については、油圧製品として斜板式可変容量ピストンポンプPH260、カートリッジサーボ弁ユニットU-CVSVS-125を、電子機器製品としてI/O拡張モジュールEXM2000、グラバーボードDCP-320を市場投入した。
この結果、同事業の売上高は前期比1,700百万円(14.1%)減収の10,351百万円、営業損失は424百万円(前期は223百万円の営業損失)となった
<流体機器事業>
同事業では、コロナ禍の影響を受け一部の案件が次期に繰り延べになったものの、すべての市場が堅調に推移した。
新商品については、主に官需市場向けの戦略商品として高精度で且つメンテナンスが容易な高精度超音波流量計UFR-300を市場投入した。
この結果、同事業の売上高は前期比258百万円(6.9%)増収の4,003万円、営業利益は前期比103百万円(18.9%)増益の647百万円となった。
<防衛・通信機器事業>
同事業では、民需市場の農機用自動操舵補助装置及び半導体製造装置向け機器の需要が堅調に推移したものの、放送局向け機器の需要が低調に推移したことに加え、官需市場ではレーダー警戒装置の納入数が減少し、前期にあった海上交通機器のVTSシステムの納入が当期はなかったことから売上は前期実績を下回りました。
新商品については、半導体製造装置用マイクロ波電源(エッチング装置向け機能拡張品及び成膜装置向け)及び2.45GHz汎用50Wマイクロ波発振器を市場投入した。
この結果、同事業の売上高は前期比2,982百万円(15.5%)減収の16,281百万円、営業利益は前期比395百万円(42.4%)減益の537百万円となった。
<その他の事業>
同事業では、鉄道機器事業は前期並みに推移したが、検査機器事業がコロナ禍の影響で海外での営業活動、装備工事に制限があり売上が減少した。
新商品については、鉄道保線市場向けに従来機になかったタッチパネルを搭載したポータブル超音波探傷器SM-5Rを市場投入した。
この結果、同事業全体として売上高は前期比360百万円(11.0%)減収の2,924百万円、営業利益は前期比134百万円(28.9%)減益の330百万円となった。
■今後の見通し
国内経済については、引き続き新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないまま、再び様々な場面で企業活動の制限を余儀なくされ、景気回復の足踏みが続くと見込まれる。このような経営環境の中、次期の見通しについては、売上高は防衛・通信機器事業が大型案件の端境期で当期まで一時的な売上減少が継続するものの、それ以外の事業は増収となることから、前期実績を819百万円(1.9%)上回る42,900百万円を予想している。また、グローバル展開の加速、事業領域の拡大等の成長に向けた研究開発費等の販管費が増加するものの、売上高の増加と原価率が好転することから、営業利益は100百万円(8.0%)増益の1,350百万円、経常利益は12百万円(0.8%)増益の1,470百万円、親会社株主に帰属する当期純利益も185百万円(19.6%)増益の1,130百万円を予想している。
なお、2022年3月期の業績予想に対する新型コロナウイルス感染症の影響については、次の通り想定している。
前期業績に大きく影響を受けた油空圧機器事業は、前期の第3四半期から海外市場を中心として回復基調が継続しており、また主要顧客の生産動向や各種工業会予測からも市場回復の傾向がみられることから、2022年3月期の売上はコロナ禍前の水準まで回復する見込みである。
船舶港湾機器事業は、前期に海外造船所への納入や訪船作業に影響が出たものの前期の第3四半期以降は影響は少なく、今後も売上が堅調に推移する見込みである。
その他の事業のうち、鉄道機器事業はコロナ禍の影響で鉄道事業者の事業収益が大幅に低下した影響を考慮している。また、流体機器事業及び防衛・通信機器事業に関しては、前期と同様に主要な売上が第3四半期以降に偏重していることに加え、前期に繰り延べになった案件の売上が見込まれている。
以上のことから新型コロナウイルス感染症は前期ほどの影響はないものと予想している。
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