酒井重工業、2020年度売上は4.9%減の216億円、21年度予想は8.7%増の235億円

 酒井重工業が5月13日に発表した2021年3月期(2020年度)連結業績によると、売上高は、国内販売が堅調に推移したものの感染拡大により海外販売が減速し、前年同期比4.9%減の216億2千万円となった。利益面では、売上高の減少と移動制限に伴う経費減少により、営業利益は前年同期比26.9%減の7億円、経常利益は同20.6%減の6億5千万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、北米事業子会社において繰延税金資産3億8千万円の取り崩し処理を行った結果、前年同期比99.1%減の4百万円となった。

 2020年度における酒井重工業グループを取り囲む事業環境は、新型コロナウイルス感染拡大と地球温暖化問題を契機として、世界社会の変容が進む大転換期の中で推移した。地球規模の行動制限に対するデジタル技術の社会浸透、世界主要国が足並みを揃えた脱炭素政策決定とグリーン成長時代への大転換、世界の地政学情勢の更なる流動化とサプライチェーンの混乱など、世界社会の行動様式や産業規律の大変容が進んだ。

 このような情勢の下で酒井重工業グループでは、事業活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)と本業の社会資本整備を通じたSDGs課題への取り組みを積極化すると共に、引き続き「変化を大前提とした事業経営」と「海外事業と次世代事業による中長期成長戦略」を進めてきた。

■連結経営成績に関する定性的情報
 国内向け売上高は、堅調な公共工事執行を背景として販売が底堅く推移した結果、前年同期比1.6%減の130億4千万円となった。
 海外向け売上高は、感染症拡大に伴うまだら模様の市場情勢が続き、前年同期比9.6%減の85億8千万円となった。
 北米向け売上高は、堅調な建設投資にもかかわらず急減速していた建機需要が漸く底入れし、前年同期比10.3%減の32億4千万円まで回復してきた。アジア向け売上高は、タイ、ベトナム、韓国、中国で需要回復が進むと共に、大幅減少していたインドネシアでも需要底入れの兆しが見られ、前年同期比3.1%増の48億5千万円となった。中近東・ロシアCIS向け売上高は、営業活動が停滞し、前年同期比94.5%減の3千万円となった。その他市場向け売上高は、中南米及び大洋州向けが底入れ基調に推移したものの、アフリカ向けが停滞し、前年同期比22.0%減の4億4千万円となった。

 酒井重工業2021年3月期データ

■所在地別セグメントの業績
<日本>
 国内向け販売が堅調に推移したものの、海外工場向け部品輸出が減少した結果、総売上高は前年同期比2.1%減の185億円、営業利益は同10.3%減の7億3千万円となった。
<海外>
 米国では、需要減少に対して営業活動強化と経費合理化を積極的に進めました結果、総売上高は前年同期比10.2%減の32億7千万円ながら、営業利益は若干ながら黒字転換した。
 インドネシアでは、第三国向け輸出が2割増加する一方、感染拡大の影響で国内販売が6割減少した結果、総売上高は前年同期比16.0%減の29億9千万円、営業利益は同67.2%減の1千万円となった。
 中国では、米中事業デカップリング方針の下、営業活動強化により国内販売を3割増加させたものの、北米及びグループ工場向け部品輸出の減少をカバー出来ず、総売上高は前年同期比32.4%減の7億3千万円、営業利益は8千万円の損失となった。


■今後の見通し
 今後国内では、総額15兆円の防災・減災、国土強靭化の為の5カ年加速化対策を背景として、堅調な事業環境が続くものと期待される。海外では、停滞していた経済活動が再開に向かうと共に、中国、米国、EUを筆頭に、世界各国でインフラ投資やグリーン成長戦略による大型経済対策が始まりることから、世界経済は底堅い回復軌道に回帰するものと期待される。
 技術面では、社会資本整備のデジタル化やスマート化、脱炭素に向けた電動化や省エネルギー化など、新技術を用した次世代事業ニーズが益々高まる見通し。
 株式市場では、東証の上場市場区分見直しやコーポレート・ガバナンスコード改訂などにより、これまで以上にESG(環境、社会、企業統治)や株主価値を重視した経営が求められる方向にある。
 このような世界情勢の大転換期の中で酒井重工業グループでは、DXによるビジネスモデル革新、本業を通じたSDGsや脱炭素など社会的課題解決への取り組み、資本政策を重視した経営への転換など、新たな取り組みに挑戦していく。
 また引き続き「変化を大前提とした事業経営」と「海外事業と次世代事業による中長期成長戦略」を基軸とし、需要変化対応力の強化、米中分断に伴う米国事業と中国事業の収益構造改革、アジア市場深耕と北米市場展開、新技術活用による次世代事業の開発、活力ある企業文化づくりなど、新たな事業環境における成長基盤を固めていく。


 2022年3月期(2021年度)の連結業績は、売上高235億円(前期比8.7%増)、営業利益9億円(同28.3%増)、経常利益8億円(同21.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5億2,000万円を予想している。


 酒井重工業の2021年3月期決算短信
 決算説明資料