㈱牧野フライス製作所が4月30日に発表した2021年3月期(2020年度)連結業績によると、売上高は1,167億37百万円(前期比26.8%減)、営業損失36億12百万円(前期は+35億14百万円)、経常損失13億74百万円(同+41億30百万円)、純損失27億3百万円(同+8億30百万円)となった。
2020年度の受注は1,174億10百万円(同17.1%減)で前年度を下回った。中国を除くすべての地域で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて減少した。第4四半期の連結受注については350億59百万円(同34.7%増)となり、18年度の第2四半期以降、初めて前年同四半期を上回った。中国の増加がけん引した。
■セグメント別の受注状況(現地通貨ベース)
(牧野フライス製作所報告セグメントはグループの販売体制をもとに構成されている。
<セグメントI >(牧野フライス製作所「個別」および国内連結子会社)
牧野フライス製作所の国内受注は前年度を大きく下回った。顧客が設備投資を見合わせる状況が継続した。こうした中でも、コロナ禍でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの成果として、好調な半導体 の金型向けや、自動車に使われる高張力鋼板のプレス金型向け等に、AIやデジタルツインなどの最新技術を利用した 自動化システムの受注を獲得した。量産部品加工のみならず、金型加工においても自動化が進んでいる。 半導体製造装置や油空圧機器向けについては、前年度を若干上回る結果となった。
<セグメントII> ( MAKINO ASIA PTE LTD )
アジアは前年度を上回った。中国向け受注が電気電子部品の金型向けの受注を中心に、コロナウイルスによる影 響を大きく受けた前年度から回復したことによる。インドやアセアンにおいては、第1四半期以降ゆるやかに増加したが、上期が大きく落ち込んだため前年度を下回った。
<セグメントIII> ( MAKINO INC.)
前年度を大きく下回った。主要な向け先の一つである航空機向けの減少が主な要因。第4四半期は、SUVやピックアップトラック等の自動車や、半導体製造装置、人工骨やインプラントの医療、レジャ ー用船舶の部品加工向けなど、幅広い受注があり、航空機向けを除けば、コロナウイルスによる影響が出る前の水準に戻った。
<セグメントIV> ( MAKINO Europe GmbH )
前年度を大きく下回った。多くの産業で低迷が続いた。厳しい中でもスイスの時計メーカ向けに新規受注を獲得するなど、一部の環境に左右されにくい産業での設備投資は 底堅く継続している。
■今後の見通し
次期(2021年度)の受注は2020年度を上回り、コロナウイルスによる影響が出る前の水準に戻る見通し。中国は好調を続け、他の地域は経済活動の立ち直りとともに受注が増加するとみている。
2022年3月期の連結業績予想は、売上高1,450億円(前期比24.2%増)、営業利益20億円、経常利益26億円、親会社株主に帰属する当期純利益15億円。
報告セグメント別の受注見通し(現地通貨ベース)は以下のとおり。
<セグメントI> (牧野フライス製作所「個別」および国内連結子会社)
2020年度を大きく上回る見通し。 受注は幅広い産業で上向き基調にある。半導体製造装置や自動車向けを中心に受注が増加するとみている。21年4月に開催された、金型加工技術の展示会INTERMOLD2021に出展し、最新技術を利用したさまざまなDX(デジタ ルトランスフォーメーション)の提案をした。 デジタルツインを用いることで、パソコン上で加工シミュレーションを確認し、材料を用意するだけで加工ができる自動化システムの提案をした。また、過去の加工実績をAIが機械学習し、自動で加工プログラムを作成する提案をした。プログラム作成にか かる時間が短縮され、機械の稼働率が高まることで、多品種少量生産の金型加工においても自動化システムを導入する ことができるようになった。短納期や熟練工の減少に対応するべく、このようなDXを用いた自動化を採用される顧客が増えつつある。ここに向けた取り組みを強化する。さらに、政府の補助金等の施策が、顧客の設備投資の後押しになると期待している。
<セグメントII> ( MAKINO ASIA PTE LTD)
2020年度を上回る見通し。中国は、電子部品関連の金型向け受注が好調を維持するとみている。これに加え、スマートフォンの金型や自動車 の大物金型向け、油空圧機器や商用車の部品加工向けなど、幅広い産業からの引き合いが増えている。インド、アセアンにおいては、自動車販売の回復に伴って受注が増加するとみている。さらに、インドにおいては スマートフォンの内製化のための引き合いがある。
<セグメントIII> ( MAKINO INC.)
2020年度を上回る見通し。自動車や医療、半導体製造装置の部品加工向けを中心に受注が増加するとみている。経済回復の期待から、トラッ クなどの物流関連や、建機や油圧機器関連の引き合いが出ている。民間航空機向け受注については、厳しい状況が続くとみている。
<セグメントIV> ( MAKINO Europe GmbH )
2020年度を上回る見通し。イタリアでは経済施策により、自動車を中心にさまざまな産業で引き合いが増えている。これを足掛かりに受注増に努める。
牧野フライス製作所の主要な向け先の一つである航空機関連の受注回復には時間がかかると見ている。牧野フライス製作所は、半導体製造装置をはじめとした成長市場に向けた新製品、サービスを展開し、コロナ禍の中で進めてきた開 発の成果を上げるよう取り組む。航空機部品加工向けに開発した高能率加工ができるマシニングセンタT1に、新たに旋削加工機能を搭載したものを半導体製造装置の大物部品加工の工程集約を実現する最適な製品として提案する。半導体の製造工程で多く使われるセラミック製の部品や消耗品の加工向けに、これまで人手による調整、確認が必要だったプロセスを自動化した、マシニングセンタBG500を展開する。EV関連向けには、軽量化のためのハイテン材のプレス金型や、内装やライトなどのプラスチックの大物金型向けに、大型の5軸制御マシニングセンタD2、およびV100Sを開発し、製品ラインアップを拡充した。このほか、医療や航空宇宙産業などの成長市場に、牧野フライス製作所の技術を生かした提案をする。さらに、昨年末に発売したレーザー加工機の拡販に努める。
牧野フライス製作所は、コロナ禍への対応と、今後の景気拡大に備えるために、DXの取り組みを進めてきた。営業活動においては、オンラインセミナーやYouTubeの動画等のデジタルコンテンツを用いた効率的な営業手法を確立した。サービス面においては、IoTセンタを設け、リモートでお客様のサポートが行える体制を築いてきた。顧客が抱える問題を解決する提案型ビジネスへの転換を進めている。生産現場においては、AGVによる自動搬送など、最新の自動化を取り入れることで、効率化のみならず、顧客に提案できる自動化製品、サービスの実証をしている。開発部門においては、デザインスタンダードを定めてノウハウを共有することや、モジュール型の製品開発を行うことで開発スピードの向上を図っている。グループを挙げてこれらの取り組みを推進し、業績予想の達成につなげる。
コメントを投稿するにはログインしてください。