コマツ、2020年度売上は10.4%減の2兆1,895億円、21年度は12.8%増の2兆4,690億円

 コマツが4月30日に発表した2021年3月期(以下、2020年度)連結業績によると、売上高は2兆1,895億円(前期比10.4%減少)となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響により不透明かつ不確実な状況下、建設機械・車両部門では、第3四半期以降、一般建機を中心に需要の着実な回復が見られたものの、通期では第2四半期までの需要減少の影響が大きく、売上高は前期を下回った。産業機械他部門では、自動車業界向けの鍛圧機械、板金機械及び工作機械の設備投資が低調に推移したことなどにより、売上高は前期を下回った。

 利益については、固定費の削減に取り組んだものの、建設機械・車両部門の販売量減少及び構成差、円高の影響などにより、営業利益は1,673億円(前期比33.3%減少)となった。売上高営業利益率は前期を2.7ポイント下回る7.6%、税引前当期純利益は1,627億円(前期比27.0%減少)、当社株主に帰属する当期純利益は1,062億円(前期比30.9%減少)となった。

 コマツは、2021年の創立100周年とその先の成長を目指し、2019年4月より2022年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value – FORWARD Together for Sustainable Growth」において、①イノベーションによる価値創造、②事業改革による成長戦略、③成長のための構造改革 を成長戦略3本柱として掲げている。新型コロナウイルスの世界的大流行による経済活動の停滞などがあるものの、将来に向けて収益向上とESG(環境・社会・ガバナンス)の課題解決の好循環による持続的成長を目指して活動を継続していく。

 コマツ2021年3月期データ

■部門別の概況

[建設機械・車両]

 建設機械・車両部門の売上高は1兆9,759億円(前期比10.6%減少)、セグメント利益は1,437億円(前期比36.7%減少)となった。

 中期経営計画における成長戦略3本柱の重点活動を推進し、「イノベーションによる価値創造」の重点活動の一つである「建設・鉱山機械・ユーティリティ(小型機械)の自動化・自律化、電動化、遠隔操作化」については、引き続き、鉱山向け無人ダンプトラック運行システム(AHS)の強化に取り組み、3月末時点の総稼働台数は累計352台となった。また、商用の第5世代移動通信方式(商用5G)による鉱山向け大型ICTブルドーザー「D375Ai-8」の遠隔操作の実証実験を進めるとともに、鉱山の顧客の安全性向上及びオペレーションの最適化を目指したプラットフォーム構築に取り組んだ。一般建機の電動化においては、リチウムイオンバッテリーシステムを活用した中小型クラスの油圧ショベルの電動化の実証実験に向け活動を開始した。

 建設現場向けソリューション「デジタルトランスフォーメーション・スマートコンストラクション」については、顧客の施工の最適化に貢献するソリューションとして訴求し、建設現場のデジタルトランスフォーメーション実現を加速させるため、国内においては、既存の従来型建機にICT機能を提供するレトロフィットキットの装着を推進した。

 「事業改革による成長戦略」の重点活動については、循環型ビジネスの強化に取り組み、コンポーネントを再生、再利用するリマン事業においては、南部アフリカ地域に新工場を設立した。あわせて、林業事業においても、シルビカルチャー(造林・育林)を促進する林業機械の導入を進めた。

 「成長のための構造改革」については、その一環として、コマツマイニング㈱において坑内掘り石炭向け鉱山機械の生産再編を引き続き進め、米国・豪州のコンベア事業の売却及び英国のルーフサポート生産機能の移管など、不採算事業の見直しと生産能力の適正化に取り組んだ。

■地域別の概況

<日本>

 日本では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が小さかった公共工事などを中心に需要が堅調に推移したものの、第2四半期までの民間工事の停滞や営業・サービス活動制限などにより、売上高は前期を下回った。

<米州>

 北米では、住宅建設向け及びレンタル向けの需要は回復基調にあるものの、第2四半期までの新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済停滞や、エネルギー関連向けの一般建機や鉱山機械の需要が低調に推移したことにより、売上高は前期を下回った。

 中南米では、ブラジルにおける一般建機需要が堅調に推移したことに加え、チリの銅鉱山向けの売上げが増加したものの、第2四半期までの新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、売上高は前期を下回った。

<欧州・CIS>

 欧州では、主要市場であるドイツ、英国、フランスやイタリアにおいて需要は新型コロナウイルス感染拡大の影響から回復基調にあるものの、第2四半期までの需要が低調であったことから、売上高は前期を下回った。

 CISでは、インフラ及びエネルギー関連向けの一般建機の需要が回復基調にあることに加え、金鉱山向け需要が堅調であったものの、石炭向け鉱山機械需要が低調に推移したことやロシアルーブル安の影響もあり、売上高は前期を下回った。

<中国>

 中国では、国産メーカーの販売比率が上昇している一方で、新型コロナウイルス感染収束後のインフラ投資などの景気下支え策により需要が引き続き堅調に推移した。また、2021年2月の春節(旧正月)後の販売シーズンに加え、2020年2月の春節後の販売シーズンが新型コロナウイルス感染拡大の影響により後ろ倒しになったことから当期の需要が増加し、売上高は前期を上回った。

<アジア・オセアニア>

 アジアでは、インドネシア、タイ、マレーシアにおいて一般建機を中心に需要の着実な回復が見られたことや、石炭価格の回復に伴い、第4四半期からインドネシアにおける石炭向け鉱山機械の需要に回復の兆しが見られたものの、第2四半期までの新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、売上高は前期を大幅に下回った。

 オセアニアでは、鉄鉱石向け鉱山機械需要及び一般建機需要が堅調に推移し、売上高は前期を上回った。

<中近東・アフリカ>

 中近東では、原油安の影響及び新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、引き続きサウジアラビアで需要が低調に推移しているものの、トルコなどでの需要が堅調なことから、売上高は前期を上回った。

 アフリカでは、南部アフリカ地域において、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより一般建機の需要が引き続き低調に推移したことに加え、鉱山機械の販売も減少したことにより、その他地域での需要の回復は見られたものの、売上高は前期を下回った。

[リテールファイナンス]

 リテールファイナンス部門では、第4四半期において北米などでの新規取組高の増加や為替の影響により資産が増えたものの、第3四半期までの新規取組高減少の影響により、売上高は663億円(前期比6.4%減少)となった。セグメント利益は、支払猶予の影響及びリースアップ車の評価を見直したことなどにより、105億円(前期比16.6%減少)となった。

[産業機械他]

 産業機械他部門では、鍛圧機械、板金機械及び工作機械については新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより自動車業界の設備投資が低調に推移したことや、海外の顧客の現場における据付け作業の遅延により、売上高は1,712億円(前期比3.6%減少)となった。セグメント利益は、半導体市場向けエキシマレーザー関連事業の売上げが堅調であったことから、163億円(前期比19.3%増加)となった。

■次期の見通し

 建設機械・車両部門では、2020年度に引き続き需要が着実に回復し、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻ることから、増収増益となる見通し。地域別では、アジア、北米、中南米を中心に需要伸長を想定している。中国では春節後の販売シーズンを2020年度に2度迎えた影響から需要が減少するものの、世界の需要全体では2020年度を上回る見通し。鉄鉱石、銅、金鉱山向けの鉱山機械需要が堅調に推移することに加え、石炭鉱山向けの需要が回復基調に入ることが見込まれる。利益については、販売数量増加や構成差、販売価格の改善により増加する見通し。

 リテールファイナンス部門では、新規取組高の増加などにより、増収増益となる見通し。産業機械他部門では、自動車業界向けの工作機械及び半導体市場向けエキシマレーザー関連事業の販売が増加することが見込まれ、増収増益となる見通し。

 2022年3月期(2021年度)連結業績予想は、売上高2兆4,690億円(前年度比12.8%増)、営業利益2,250億円(同34.5%増)、税引前当期純利益2,170億円(同33.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,460億円(同37.4%増)。

 業績見通しにおける為替レートは、1米ドル=105.0円、1ユーロ=124.0円、1人民元=16.0円を前提としている。

 2021年3月期決算説明資料